「孔雀王-戦国転生-」第三巻発売に寄せて
ここ三ヶ月間ほどは、まるで休み無しの、地獄のようなスケジュールでした。戦国転生とライジングの同時単行本発売の準備やら、私自身の体調不良やら、それぞれのお話の資料調べやら、地方での出張仕事やらで、すべて片づいたのがつい先日。おかげでその後三日間ほどはひたすら眠り続け、ようやく頭も体調も回復してきましたので、このご挨拶を書いています。
さて、戦国転生もこの三巻からが、信長の本格的戦人生の始まりです。愛妻濃姫の従兄弟「明智光秀」や、妹お市の夫「浅井長政」が登場し、特にこの明智光秀が、孔雀と信長の関係にも微妙なズレが生じさせます。そしてこのズレがやがては信長と仏教勢力との争いや、足利将軍や他の戦国大名達との戦に発展し、信長をムリヤリ時代の寵児に押し上げてゆきます。…だがそれは信長や光秀の意思では無く、その背後で時代を操る京の裏の支配者「悪徳太子」のしわざであり、それこそが孔雀をこの時代に転生させた本当の敵であった!!。
…というのが今後のこの作品の展開となる予定ですが、なにせ出たとこ勝負のホラ吹き漫画家「荻野真」の作品ですから、読者の皆様もご安心なさらぬように。今の所私が保障できるのはただ一言「絶対損はさせませんから!」ご期待下さい。
ところで、この戦国転生を引き受けるまでは、私の日本の歴史観は、司馬遼太郎の小説や、NHK大河ドラマのストーリィ展開のまんまだと思い込んでいましたが、自分であれこれ資料を漁るうち、「どうもちょっと違うなぁ?」観が強くなる一方です。そもそも歴史とは、当時の公文書に書かれた断片的な文言に、後世になってもっともらしい筋書きをつけた、政府公認の御用学者達の仕事で、それが書かれた必然性も、法令を押しつけられた側の不満も、彼等は何一つ解明しようとはしません。
いい例が今回の安保法制で、国民の八割が「やる意味がわからん」と言ってるのに、強行採決で無視する政府に、「この話題はもう古いから」と、報道すらしないマスコミの無責任さに加え、怪しげなアベノミクス第二ステージや国民総活躍大臣の出現なども、まともに説明しようとすらしない政府のいい加減さには、呆れ果てます。その上もし彼等が後の世、この日本の歴史を造った英雄としてと大河ドラマの主役にでもなった日にゃ、目も当てられません…。あーやだやだ。
しかし最近ではこの「ご都合主義的歴史観」に対抗する新たな学問が、世界的に流行って来てるみたいで、その名は「歴史社会学」。歴史を為政者の側からでは無く、民衆の側から解明しようとする学問で、日本でも面白そうな若手研究者の方々が、何人も出てきているみたいです(NHK大河ドラマの支離滅裂さも、この両者のせめぎ合いの結果なのだそうです)。
最後に、敬愛する池波正太郎先生の一言「おれは歴史小説は書かん。書くなら時代劇だ。歴史は死んだ人間しか出てこんが、時代劇は生きた人間のドラマだ。どっちが読者にとって面白くて共感できるかは、自明の理だ!。」…正に仰るとおりであります。(荻野真・2015/10/27)
孔雀王戦国転生第四巻が、二月十日にやっとこ発売になりました。途中私の一ヶ月の入院や、チーフのN君の転倒による複雑骨折。 K君の病気入院に、ウチの娘の南阿蘇からの避難と、卒論のための一時的な転学等々…、散々な2016年でした。おかげで連載も一時中断し、 小学館とリイド社には大変ご迷惑をおかけし、私の作品をご愛読下さっている読者の方々には、それ以上にご心配をおかけし、 本当に申し訳ありませんでした…。と、思っていたところにリイド社「戦国武将列伝」のまさかまさかの休刊!。 そして孔雀王戦国転生と担当Nさんもご一緒に「月刊コミック乱」への移籍…。その上での第四巻発売で、今までには無い感無量の一冊となりました。
そもそも孔雀王戦国転生は始まりから妙な歴史漫画でした。最初の担当Sさん(今では出世してリイド社の電子配信雑誌「トーチ」編集長) と美大を二つも出ている漫画オタクのS君と私が「未だかつて誰も見たことも無い戦国物をやろうゼ!」と、美少女風信長やゴリラ秀吉に バンパイア家康等々…、ソートー変な設定で始めた作品です。それ故、この巻でも謎の悪徳太子や、妖怪信玄やら、百足勘助やら、 荻野漫画にご期待の方々(じゃ無い方もおられるでしょうが)のため、担当Nさんとあれこれ無茶なキャラを登場させるべくガンバッテおります。
この第四巻の発売日当日には、コミック乱の宣伝も兼ねて、にわのまこと先生とのトークライブがあり、終了後も熱心なファンの方から 「この先ホントにラストは考えてあるんですか?」との問いに、「大丈夫です。信長の最後はアレしか無いですからネ。」と、お答えすると、 「あの京都で起こる有名なアレですか?!」と、すぐに解ったご様子。この作品を読んで下さっている他の皆さんも、 「アレか!」「アレね!」「やっぱアレだよな!」と、さすが私のファンの方々だけあって、言わずもがなの反応。皆さんも納得されたご様子で、 頼もしいファンの方々です。でももし「意味わかんねーよー???」という読者の方々が居たら、お手数ですがどうか中学の時の歴史の教科書を再度お読み下さい。 それもイヤだという方は、スマホで「信長最後」でご検索して下さい。この作品はリイド社担当さん達との最初の決め事 「たとえ無茶苦茶な展開でも、せめて年表の事件と年号だけは守ろう」と決めて始めた作品。必ずアレにオチながらもっと驚く展開が用意してあります。 第五巻以降の戦国転生もお楽しみにお待ち下さい。
なおこの時のライブはネット番組「fresh live.tv」で繰り返し見られます。私も家に帰って見て、自分のボケぶりとにわの先生のお答えの妙に思わず笑ってしまいました。 ご迷惑でなければまたご一緒したいです、にわの先生!
…というワケで、孔雀王ライジング同様、この作品も「アレ!」に向かってブレ無いよう、疾走してまいります。請うご期待!!(荻野真・2017/2/16)