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15の春

  • 15の春、第1巻表紙です。
    15の春
    第一巻
    初版:2011/05/02発行

「15の春」電子化のコメント

15の春がeBookJapanから電子出版されました。この作品は二年半ほど前、集英社スーパージャンプ(SJ)誌から発売されたものでしたが、発売直前の東日本大震災による出版業界の大混乱や、その後の雑誌発売不振によるSJ誌の廃刊などで、コミックスのレーベルそのものが無くなってしまい、「在庫売り切り、増刷無し」にされてしまった作品です(それとも何か他に原因が…)。

ま、こういう事態は、昔から出版業界ではよくあることで、これにより消えてしまった作品は無数にあり、私自身も欲しかった本が手に入らなかった経験は何度もあります。しかしここ数年、スマホの普及でネット販売が発展し、今や「見つからない本はほとんど無い」状態で、それはそれで有り難いのですが、ネット上での著作権・出版権・販売権をめぐり、出版社と作家、書店と出版社の関係は日ごとに険悪となりつつあります。

この15の春もそうした事情から、紙媒体からネット販売に変えさせて頂いたのですが、私個人としては「やっぱ本は手に持って読まなきゃ読んだ気がしない」古い体質の人間で、この身内の中でのゴタゴタした争いは、どうにも不愉快でなりません。それぞれの立場で言いたいことはあるでしょうが、最終的に結論を出すのは、私たち業界の人間ではなく、身銭を切って本を買って下さる読者の方々です。その方々の信頼と期待を裏切る行為は、ただの自滅の道です。本なんて読まれなければ「ただの紙くず」です。

現在私は、複数の出版社や代理店の方々のご好意で、漫画を書かせて頂いてますが、それぞれの方々とは私自身が直接話し合い、調整とご協力を得、全員が納得する落とし所を捜すように心がけています。しかし集英社一社との関係しか無かった頃には、それが出来ませんでした。互いが自分の都合だけを主張し、ろくに話し合いもせず、長い間の信頼関係も、あっと言う間に崩壊しました。

この15の春のテーマは、「子供が大人に成長する転機」の話しです。そして物語の中で主人公達は、「身勝手な子供の理屈では社会に出て行けない」ことを知る物語です。最初は家を出て、遠方の大学に進学する息子を思い浮かべ書いた作品でしたが、今にして思えばこれは「自分自身が本当の大人になる」ために書いたものだと気付かされました。

「自分が大人だと思ってる」世の大人の方々、是非ともご一読を。(荻野真・2013/12/05)

「15の春」単行本発売時のコメント

2011年3月11日に突如東日本を襲った東北関東大震災により、亡くなられた方やそのご親族、親しい方を失われた方々には、心からのお悔やみを申しあげます。そして心身に大きな痛みを負い、家財やお仕事を無くされた方々に、お見舞いと、出来る限りのご助力をさせて頂きます。

この作品の冒頭の「空海」のエピソードは、はからずしも同じ痛みの内容になってしまいました。国策のため、身の危険と引き替えに生きる糧を得ねばならない当時の人々と、現在の地方に生きる人々の置かれた立場は、千年以上たってもあまり変わってはおりません。そしてこの国策が国民全体の幸福につながるのなら、まだ救いはありますが、一部の限られた人々の利益や、先に何も生み出さないその場限りの享楽に浪費されていくだけでは、まるで救いは無く、将来の希望もありません。

この15シリーズを書くきっかけは息子の受験問題でした。当時高2の彼の成績は惨憺たるもので、入学時は「中の上」だったのがこの時点で「下の下」、学年全体で下から4番という有様でした。「このままじゃ大学進学など到底ムリ。今後どうするか?」と彼に問うと、「大学に行ってもやりたいことは無い。でも今やりたい事はある。」と言う。それは何かと問うと、「熱帯魚屋。だからお店開く時はお金を貸してくれるか?」

大学中退の身で言える立場ではありませんが、せめて大学生活だけはさせてやりたい私が、「だったら海洋生物という学問がある。それなら熱帯魚屋をやるにも役立つんじゃないか。」と言うと、「それは知らなかった。じゃとりあえずそこを受験してみるか。」ということになり、それからは海洋生物一つに的を絞り受験勉強を始めました。

すると関連する成績から徐々に上がり始め、なんと受験時には学年での全科目の成績も「上の下」となり、本番でも第一志望の「T海大海洋生物」に見事合格出来ました。そして現在彼の下宿先は、コバンザメ・ハナダイ・トカゲなど多様生物の巣窟と化しております。

子供達の可能性は無限にあります。でもそこで最も必要なのは、「将来なにをすれば自分のやる気と才能が生かせるのか。」を教えてくれる「明確な大人達の言葉」です。「東大を目指せ」だの「上場会社に入れ」だの「どこの世界は親のコネが効くか」だの、それはただの場当たり的な対処法であって、「人生の目的」ではありません。

そして世間に無数に垂れ流される「夢は叶う」だの、「希望を信じて」だの、「熱い心」だの、明確な具体例など何一つ無い広告屋のタワゴトでもありません。

子供達にも震災で傷つかれた方々にも、今最も必要なものは「将来自分がすべきことの、明確な提示」です。

この物語の空海やダーウイン・エカテリーナ達は、痛みの伴う体験と、そこで示される周りの大人達の言葉によって大人へと成長します。そして大人になった彼等は、具体的な行動によって社会を変え、多くの人々に未来への可能性を与えます。

現在、国家にも親にも、ましてマスメディアにもその具体的な指針を与えてくれる者は誰一人いません。でも、世の中にはあなたに具体的な目的を与えてくれる「隠れた賢者」は必ずいます。その存在を信じ、自らの足でその人を捜し、彼等の言葉を聞いてください。すべてはここからが始まりです(荻野真・2011/05/02)

「15の春」連載時のコメント

昨年ヤンジャン誌幹部と大ゲンカをし、「暴力とエロしかやる気の無い青年漫画誌なんか、二度と書くもんかい!」と、意気込んではみたものの、「オレは昔大好きだったジュブナイル小説風の作品(岩波・講談社・ポプラ社・ちくまなどの図書館の少年全集は、ほとんど読破した私です)を書くんだ!」と、何十年かぶりのちゃんとしたネームを書いて、新人のように様々な出版社に持ち込みもしました。が、その反応はすべて掲載以前にボツ…。読み切りすらいらないとの返事でした。

先生みたいな実績のある作家は、それ相応の作品を書かれた方がいいですよ。例えば孔雀王のスピンオフみたいな青年ものを。」皆、判で押したような反応にヤケ酒を飲んでネットサーフしていた時に偶然見つけたのが、アメリカのオタク歌手「スコット・マーフィー」の「尾崎豊・15の夜」のカバーバージョンでした。

正直これには何十年かぶりに全身に電撃が走りました。尾崎豊は私が苦手なタイプの曲でしたが、スコットの曲は詩も曲も同じなのにアレンジがまるで違い、正にポップでロックな「アメリカの15の夜」でした。これを機会に彼のカバーを聞き漁りましたが、そのどれもが原曲以上に私をナチュラルハイにさせてくれました。

「そうか。漫画もこれと同じだ!」と気付いたことを元担当のTさんに話したところ、「もらう、もらう。オレがそれもらった!」と、わずか一ヶ月後にはスーパージャンプ誌での連載が決まりました。それがこの「15の春」シリーズです。

そして「空海」「信長」と書き進むうち、もう一本同時期に始めた「つり丸」誌の「サルビアの海」が奇妙に交錯しはじめ、「ダーウィン」からは完全にスコット・マーフィー的アレンジの魅力が理解できるようになりました。

しかし、だからと言って、今まで私が書いた「孔雀王的世界」が嫌になったとか、飽きたということではありません。ただそれらを今後も続けるためにも、今現在超えなければならない私自身の作家的壁や、方向性を完全に見失い、パートXだの長期連載だのスピンオフだのに頼りきりの漫画業界全体の壁を超えるためにも、このシリーズをもうしばらく続けさせて頂きたく思います。

どうか孔雀ファンの皆様は、もうしばらくお待ち下さい。新しい孔雀王的世界は、この「15の春」のむこうにあります。次回作は「ロシア女帝エカテリーナ」、その次は「成吉思汗」を書く予定であります。お楽しみに。(荻野真・2010/8/15)

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