荻野真作品の利用について
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小類人(ちゃいるど)
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- 小類人(ちゃいるど)
- 第一巻『MIMIC』
- 初版:1997/07/23発行
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- 小類人(ちゃいるど)
- 第二巻『METAMORPHOSIS』
- 初版:1997/11/24発行
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- 小類人(ちゃいるど)
- 第三巻『SUBSPECIES』
- 初版:1998/04/22発行
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- 小類人(ちゃいるど)
- 第四巻『HYBRID』
- 初版:1998/09/23発行
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- 小類人(ちゃいるど)
- 第五巻『JUNK』
- 初版:1999/01/24発行
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- 小類人(ちゃいるど)
- 第六巻『IMMUNITY』
- 初版:1999/08/24発行
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- 小類人(ちゃいるど)
- 第七巻『GENESIS』
- 初版:2000/01/24発行
この「小類人(ちゃいるど)」という作品の後書きでも書きましたが、「私はSFが書きたかった」のです。
私の世代はSF好きで、小学校時代はハインライン、バローズなどの海外のジュニア向けSF。中学校からは「ねらわれた学園」や「時をかける少女」などのNHK少年ドラマシリーズ。高校時代は平井和正や小松左京などの国内SF作家達の大ブーム。大学では「宇宙戦艦ヤマト」や「ガンダム」などSFアニメの大ヒットと、時代と共に咲くSF花盛りの世代でした。
ところが、漫画の世界ではこの流れはほとんど来ませんでした。諸星大二郎・星野之宣御大の他は、萩尾望都・竹宮恵子など少女漫画家のごく一部が書いていましたが、漫画雑誌のほとんどはスポコンものや不良もの、ベタな恋愛ものばかりで、SFはほとんど見向きもされませんでした。私自身も新人時代はSF的な作品を出版社に持ち込んでいましたが、ほぼすべてがボツとなり、苦肉の策でかいた「SF的要素を抜いたファンタジーもどきの伝奇漫画」でようやく日の目を見ました。
後年、この頃の担当の1人にお会いしてそのことを話すと、以外な事実を知りました。
「実は出版社の人間は理数系がニガ手な私立文系大学出身者ばかりだから、自分が知らない・興味もないSFなど担当したくもない。」のだそうです。その上恐るべきことに、「超有名中高一貫進学校のほとんどは、昔から受験に特化した授業カリキュラムになっていて、自分の希望大学の受験に出ない科目は、一切勉強しない」のだそうです。「でもそうすると単位不足で高校を卒業できないのでは?」と聞くと、「大丈夫、学校側が履修したことにして、勝手に単位をくれるから。オレも国立K都大だけど、理科は一個しか習わなかった」・・・のだそうです。なんと「高校の履修もれ問題」は、超有名私立校のインチキから始まったことで、その担当もA布かK成出身らしく、おまけに私より二つも年上。一体どのくらい昔からそのやり方だったのかは、その担当サンすらわからないそうです。
どうりで大手出版社がSFに手を出さないのも、大手新聞社のノーベル科学賞予想が丸外れなのも、科学研究に予算を出し渋る政治家や官僚が多いのも、すべてはココから始まっているのかと・・・。(もしこれが事実なら、大半のマスコミ社員・官僚・政治家は、学歴詐称でみんなクビのはずなんだけどね)。
近年京都大学の山中教授が万能細胞の研究で脚光をあびたが、彼の研究の主眼は、「それまでの万能細胞研究が、胚細胞(たまご)中心だったのを、幹細胞(血液・皮膚)でも可能にしたこと」。万能細胞研究で最も有名な成果は「クローン羊のドリー」だが、胚細胞を使っていたため寿命が短くほとんど実用に向かなかった。
だが山中さんのやり方では増殖幹細胞を使うため、寿命も長く、遺伝子提供者以上に長生きできるクローンを作り出せる(この研究にも国は金を出し渋り、現在はアメリカに抜かれ、山中さんもドイツから研究費を出してもらうそうです)。
でもハタと思い出したのはこのアイデア、私が十年以上前にこの「小類人(ちゃいるど)」でやった骨髄幹細胞を使うクローン造りの、まるパクリなんだけどね。
おまけに漫画の中で出てくる「レーベンスボルグ」の遺伝研究所。戦後ここの資料をごっそり抜いて、イギリスに造られた研究所で出来たのがあの「クローン羊ドリー」であり、狂牛病のもとになった「プリオンタンパク質」も、ここで造られたものです。
「小類人(ちゃいるど)」は、発表当時も今もまるで騒がれることなくヒッソリと終わってしまった漫画だけど、そこで使われたネタに関しては「さすが荻野はSF大好き理系人間よ!」と自画自賛させてください。
・・・ちなみに我が家の理系の血は無事息子にも引き継がれ、現在「某大学の海洋生物科」で、日々魚の採集と飼育にいそしんでおります。(荻野真・2010/11/05)