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中国旅行記

少し前のことですが、9月24日から27日まで、中国の北京、天津に行ってまいりました。

融入文創 伝統連接未来 研討会集英社時代からの釣り友達で、現在フリー編集者のMさんの依頼で、天津動漫基地(中国語ではアニメを動漫と言います)の若き重役の李昊(Lee Hao)さんが開催する文化フォーラムにゲストで出てもらえないか、とのお話。李さんとはそれ以前にも東京のウチの事務所近くで二度ほど酒を飲んだ旧知の仲で、心良くOKしました。しかし実は私の真の目的は「あの天津大爆発の穴を、この目で見てみたい!」でした。

ところが、予定日の一週間前にひいた風邪が全然治らず、前日の23日ウチ一家の主治医のY病院のK先生に診てもらったところ、「中国旅行なんてノンキなこと言ってる場合か!これは去年の暮れ一ヶ月も入院した時の症状と同じだ!!」と叱られ、慌ててその時入院したJ医院の主治医I先生にも診て頂いたところ、「酒とご馳走と過度な運動を控えて、毎日適度な散歩をするなら70%の命の保証はします。」と言われ、「じゃガンバリます。」と、翌日は案内役の映画会社社員で日本在住の梁(Liang)君と共に、北京に旅立ちました。

ほぼ三年ぶりの北京空港は、以前よりさらに広くなった感じで、空港内を移動する電車がまるで山手線のようで、やっと会えたMさんの隣には、旧知のNET漫画編集者の邢(Xing)君が迎えに来てくれてました。邢(Xing)君は私が知ってる中国人の中でもそーとーな変人です。5年以上前からの友人で、美少女漫画家の夏達(Xia Da)さんの作品(ウルトラジャンプの長歌行)の日本語版翻訳家の張(zhang)君も中国人とは思えない変人ですが、彼はそれ以上に変わり者で、2人を見ていると国籍や民族性という言葉がまるで死語のように感じます。そしてMさん、梁(Liang)君、邢(Xing)君と私の4人で、北京から天津に車で移動。三時間ほどで天津のホテルに着きました。

その途中例の「大穴」を写真に撮ろうと身構えていましたが、周りの風景はやたら小綺麗なマンション群と建設中の町並みばかり。そこで地元の邢(Xing)君に聞いてみると、「数年前から天津市周辺全域が開発中で、荻野サンが期待してた大穴は、天津でも旧市街だから今回のお仕事ではかすりもしませんよ。」と、笑いながら言われちょっとガッカリでした。そしてそのせいか、泊まったホテルも出来たてホヤホヤで、やたら小綺麗なわりに団体客を除き、お客は私達以外ほとんど見かけません。おまけに土地が余ってるのかホテルも二階建てで、やたら横に広い。おかげでフロントから客室まで数百m歩かねばならず、「こりゃちょっとしたお散歩コースだな」と病み上がりの私が疲れた顔をしていると、さすがは中国通のMさんが、「いい抜け道を見つけた!」と案内してくれたショートカットが従業員専用通路。「いいのかなぁ?」と恐る恐るMさんに付いて行ってみると、なんと移動距離が半分以下に短縮!天津滞在中の二泊はここを利用したおかげで楽が出来ました。

当日の夜は李さんが見つけたという日本料理店で、李さんのスタッフの皆さんと共に会食。私は医者の指示で酒も料理も控えめにしましたが、Mさんも李さん達もアルコール度60以上の白酒(パイチュウ)を飲むは飲むわ…、体調を理由に付き合えなくてホントにラッキーでした。しかし控えめなのは飲めるはずの邢(Xing)君も…。なんか変だと問い詰めると、実はこの店の女将は彼が高校生時代に付き合っていた彼女で、以前にも別の店で同じような出会いが二回ほどあったとか。李昊(Lee Hao)さんはそれを知ってて、イタズラ心でこの店に決めたんじゃないかと…。しかし李さんは広い中国でそれは不可能だと完全否定。Mさんと一緒に「運命の赤い糸だ!」「執念の生き霊だ!」「愛の屍霊だ!」「いっそ冥婚でもして浄仏させてやれ!」と、それを話題にさらに白酒が進む2人。

実は中国では毛主席の指示で長らく呪(まじな)い・宗教を禁止していたが、鄧小平主席の「改革・開放路線」以来宗教や祭祀が復活し、特に葬式は昔のようなハデな祭りが多くなっているとか。翌日の李さんが司会を務める文化フォーラムのお題も「融入文創 伝統連接未来 研討会(中国の古い文化をソフトウェアで現代の青少年にも解りやすく理解させ、愛国心と結びつけよう)」という政府の企画なのだそうです。だからみんなで邢(Xing)君と女将を、ムリヤリ古式中国的に幸せにしてやろうというのですが、当の邢(Xing)君は「彼女はただのストーカーです!」とリアルな答え。おまけに「現代中国の若者に流行りそうなのは中国的な道教・仏教じゃなく古代ラマ教か、ヒンズー教なんですけどね。」と言い、彼も日本語の次はヒンズー語を勉強中だとか。そしてその夜はホテルで邢(Xing)君からヒンズー教のレクチャーを受け、ライジング地獄編でも早速使わせて頂きました(カーリーの話です)。

融入文創 伝統連接未来 研討会翌日の文化フォーラムは李さんが司会で、ゲストは中国・台湾のアニメ作家達と私に、通訳の邢(Xing)君の5人が壇上で、李さんの質問に答える形式。するとここでも邢(Xing)君が大活躍。私なんかよりよほど熱弁をふるい、話も私より長く、ゲストの中では彼が一番目立ってました。「なるほど、昨夜の女将も高校時代、この熱弁で口説きやがったな」と、何となく納得しました。おかげでゲストの仕事は無事終了。李さんから過分のお礼も頂いて、その後は天津市好傳動画有限会社の視察とスタッフの皆さんへのサイン会。そしてホテルでゆっくりした翌日、李さんとお別れの天津料理の昼食を食べ(四川ほど辛くないが、臭豆腐はご遠慮しました)、来た時の4人で北京帰りました。

有妖気北京では「有妖気」というネット漫画配信会社に寄り、そこの編集部の人々から中国の編集者や作家達の生の声を聞かせてもらいました。実は今回の旅行の最大の目的の一つがここで、政府系の大きな組織では会えなかった現場の人々に直接会い、素直な目線での中国の出版事情を聞きたいと、私から希望して会わせて頂いた企画でした。有妖気には基本的に有名なプロ作家は居らず、作家のほぼすべてが地方在住のアマチュアで、その人達を作家として世に出すのが目的の会社で、一通り会社内を見学した後は編集サンと作家さん数人でアルコールOKの会食へ。ここでは私からの質問より彼女達の作品を見て欲しいとのことで、力量のある2人の女性作家の作品を見た後で、なぜか3人目は作品もネームも見せてくれない。そして「荻野先生、私を覚えてませんか?」と聞かれ、突然あっと気付いたのが以前、美少女漫画家の夏達(Xia Da)さんと会った時、隣にいた大人しい女の子!それがなんと今は金髪でお化粧もバッチリのまるで別人!!しかも杭州市(こうしゅうし)で会った彼女が、今はNET漫画家として北京在住。するとMさんが「中国の漫画事情はイロイロ複雑で、今の彼女は昔とは別人の漫画家として売り出し中なんだ。この変身もそのためで、今書いてる漫画も昔以上に評判がいいんだぜ!」とのこと。

詳しい話はここでは書けませんが、なんか「あまちゃん」の「能年とのん」みたいなことが漫画界でもあるのが中国だそうで、日本の芸能界やアニメ界もそうだけど業界全体でもうちょっと何とかしないと、今に若く有能な才能が出てこなくなっちゃいますぜ!。

「休みが取れたらまた日本に来なよ。美味しいモノ食べさせてやるからさ!」「ガンバります!」と握手して別れ、この日の用事も無事終了。翌日は梁(Liang)君、邢(Xing)君とも空港で再会を約束し、Mさんと日本に帰りました。

久しぶりの中国でしたが、私にとっての中国は八年前に行った頃と変わり無く、私自身の発見と反省の旅で、日本のTVやNET、雑誌で言われてるような悪い印象は今まで一度もありません。たぶん中国に悪印象を抱く人々は悪い中国人に当たった人で、日本の14倍も人が多いんだから、単純計算で悪い中国人が14倍居れば、親切で優しく頭のいい中国人も14倍います。幸い私が会った中国人が良い人々ばかりなのかもしれませんが、人を国や人種としてより見るより、単純にその人本人をよく観察すれば解ることで、同時に自分自身が彼等にどう見られているかを考えれば、物事はもっとうまく面白く動くものだと私は思っています。(荻野真・2016/11/21)

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