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宮城「石ノ森章太郎ふるさと記念館」漫画賞審査

石ノ森章太郎ふるさと記念館かなりご報告が遅くなってしまいましたが、今年2月12日「石森章太郎ふるさと記念館 漫画賞」の審査委員をお引き受けし、昨年9月以来久しぶりに宮城県登米市に行ってまいりました。この賞は故石森章太郎先生の故郷登米市で、「創作漫画作品、漫画イラスト、石森漫画のキャラクター似顔絵の三部門」を、地域在住の幼稚園児から高校生まで広く作品を応募してもらった漫画賞で、そのあまりに広すぎる募集条件のため、選考基準が無いも同然で、気軽に引き受けたはいいが、結局選考委員は私一人だけで、現場に着いたとたん、「こりゃしまった!」思ってしまうほどの難しい審査でした。

応募作品しかしまぁ、いつも連載は出たとこ勝負のライブ漫画家の私としては、一通り見て回った後はいつもの「ノリ!」が出てきて、楽しんで審査させて頂きました(一緒に居た女房と記念館の女性スタッフの方に、大いに助けられたのも事実ですが)。

しかしその時賞をあげた方々の作品と名前が、なぜか石森章太郎ふるさと記念館のHPに公表が無く、プライバシーの問題から私個人のHPで勝手に内容を公表するワケにもいかず、ズルズル今日まで記事を書けないでいました。そんなおり、最優秀賞に選ばれた菅原真帆さんという中学生の方から受賞のお礼のファンレターが、なぜかリイド社に届き、編集長のNさんがそれを私の所まで届けに来てくれた結果、「よーし、じゃ菅原さんの作品だけは載せちゃえ!」とここに公開しちゃいます。いいですよネ?菅原さん!

菅原真帆さん作品菅原さんは作品自体のレベルの高さもさることながら、そのお手紙の内容に正直驚かされました。まさにわたしがこの漫画賞をお引き受けした理由が、しっかりと読み取られていたからです。そうです!作品にはその一作ごとに良い所と欠点があり、それをすべて引っ括めた上での「個人の作品」なのです。ではその良い所と欠点はどうすればわかるのか?…。残念ながらこれだけは自分では絶対にわかりません(自分の作品だと、どうしても客観的評価が出来ないからです)。

学校の成績ならテストで良い点を取ればわかりますが、それはただ「効率よく良い点を出すやり方」を覚えただけで、その人個人の才能とはまるで関係の無い、修練と努力の職人芸の世界です。でも漫画や小説、音楽の世界は才能が絶対条件の芸術の世界です。そして芸術とは、「解る人には解る」としか言いようの無い、極めて判断の難しい代物です。そしてだからこそ他人に「いいね!」と褒められないと絶対に「ウマくなれない」代物なのです。

石森章太郎先生の場合は、それが手塚治虫先生でした。そして私の場合は本宮ひろ志先生でした。菅原さんの場合のその人が「荻野真先生です!」と言われたらそれは私にとってその時と同じくらいに嬉しいことです。

お手紙を読んだ限り、たぶん菅原さんはもうとっくに解っていると思いますが、他の応募者の方々へのアドバイスだと思ってこの話を聞いて下さい。

漫画家にとって最も大切な才能は、「他の人の作品の良い所と欠点が解ること」です。そして同じように他の人の目線から、「自分の作品の良い所と欠点を想像力で見抜く才能」です。この点でも菅原さんにはもう一ランク上の賞をあげたいですね!!(荻野真・2016/5/5)

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