% ゼロサム

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\begin{document}

\noindent\textbf{ゼロサム}

ゼロサムはことばどおり`零計'のことであり、合計が$0$になるものをいう。世の中のほとんどはゼロサムであるから、あるものの全体を通して見ればそこでは収支トントンになっているものである。

競馬の話はわかりやすいはずだ。たとえばあるレースで$1$万人が一人$1$万円ずつ、それぞれが目をつけた馬に掛金を投じるとする。競馬の用語で言えば、全員が単勝馬券を一点$1$万円で買ったということだ。合計で$1$億円が集まる。競馬の主催者はおおむね$25$\%ほどの手数料を差っ引いて、残りを馬券購入者のうち当たり馬券を買った人全員に配当する。この場合なら$7{,}500$万円が払い戻される。もし一着になった馬に賭けた人が$1{,}000$人だったら、一人あたり$(7{,}500万円)/(1{,}000人) = 7万5{,}000円$が支払われる。当然、はずれた人たちは一銭も戻ってこない。

この状況を一覧表で見ると以下のとおりだ。
\begin{center}
\begin{tabular}{ccccc}
時系列 & 主催者 & \multicolumn{2}{c}{馬券購入者} & 合計 \\ \hline
レース前 & $0$円 & \multicolumn{2}{c}{$1$億円 \scriptsize{$(1万円)\times(1万人)$}} & $1$億円 \\
レース中 & $1$億円 & \multicolumn{2}{c}{$0$円 \scriptsize{$(0円)\times(1万人)$}} & $1$億円 \\
レース後 & $2{,}500$万円 & $7{,}500$万円 \scriptsize{$(7{,}5000円)\times(1{,}000人)$} & $0$円 \scriptsize{$(0円)\times(9{,}000人)$} & $1$億円
\end{tabular}
\end{center}

主催者・馬券購入者・合計について、レース前とレース後の収支を考える---つまり$(レース後)-(レース前)$の計算をする---と以下のようになる。
\begin{center}
\begin{tabular}{ccccc}
& 主催者 & 馬券購入者(当たり) & 馬券購入者(ハズレ) & 合計 \\ \hline
レース前 & $0$円 & $1{,}000$万円 \scriptsize{$(1万円)\times(1{,}000人)$} & $9{,}000$万円 \scriptsize{$(1万円)\times(9{,}000人)$} & $1$億円 \\
レース後 & $2{,}500$万円 & $7{,}500$万円 \scriptsize{$(7{,}5000円)\times(1{,}000人)$} & $0$円 \scriptsize{$(0円)\times(9{,}000人)$} & $1$億円 \\ \hline
収支 & $2{,}500$万円 & $6{,}500$万円 & $-9{,}000$万円 & $0$円 \\
\end{tabular}
\end{center}

合計が$0$になるのでゼロサムと言われるのだろうが、どの段階でも合計$1$億円をそれぞれに割り振っているので$0$になるのは当たり前のことである。冒頭に、世の中のほとんどがゼロサムであると述べたのは、あるものを閉じた世界で見ればそうなるに決まっている。その世界のどこかにプラスがあれば、その世界のどこかに必ずマイナスがあるということである。

でも`地球温暖化'はゼロサムになってないと言うかもしれないね。確かに気温のプラス部分だけが増えているように見える。だけど熱は太陽からもたらされるものだ。太陽を含めて閉じた世界と見れば収支は合うのではないだろうか。もしそうでなければ、地球上---もしかすると地球内部かもしれないが---にはプラスの温度を相殺するマイナス部分があるかもしれない。

地球のある地点が平均より$10$\textdegree C高ければ、どこか別の地点は平均より$10$\textdegree C低いはずだ。もしくは、平均より$1$\textdegree C低い地点が$10$か所あるのだろう。でも本当のところはよくわからないな、私には。しかし一定の閉じた世界を考えるなら、そこは必ずゼロサム状態になっていることは間違いない。

\end{document}