% 有理数

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\begin{document}

\noindent\textbf{有理数}

私たちはものを数えるために自然数を使っているが、ときどき端数を数える必要に迫られる。$10$個のりんごを$3$人で分けようと思えば、一人に$3$個ずつのりんごが与えられる。$1$個余ったものはだれか一人が余分にもらうか、あくまでもりんごを細かく三つに分けて各人がその一つをもらうかするだろう。りんごの形は$2$等分や$4$等分するにはいいかもしれないが、$50$等分となるととてもできそうにない。りんごは分けたところで半分にしたり四半分にしたりする程度だ。このようなものを扱っている限りは、自然数のほかに「半分」や「四半分」という数詞を用意しておけばよろしい。

しかし端数をもっと正確に扱いたいときはそれではだめだ。そこで自然数の比で表した有理数が必要となる。日本語で有理数というと何か特別な数という印象だが、英語では何のことはない「比数」である。

たとえばコップに半分ほど水が入っているとしよう。普通ならこれは半分といえばすむことだが、もう少し詳しく見つめると半分より少し多く水が入っているようだ。$10$等分したうちの$6$ぐらいまで水があるように見える。だったらこれは$6/10$だ。いや待て。それでは少しばかり多く見積もりすぎたかもしれない。$20$等分したうちの$11$ぐらいだろうか。ならば$11/20$だろうか$\dots$。このように続けていけばかなり正確に水のある部分と全体との比を表すことができる。$11/20$であれば水のある部分と全体との比は$11:20$である。

要するに有理数とは「自然数の比で表した数」である。$1:4$なら$1/4$という有理数を表すし、$4:1$なら$4$のことである。$4$だってりっぱな有理数だ。私たちは端数のある数をより正確に表すために小数を使うが、$0.142857\dots$と表すより$1/7$と書くほうが好ましい。この数値をあとで使い回すときに便利だからだ。

だがよく考えてみよう。数学のにおいのしない普段の暮らしでは$11:20$などという数値はいらない。やっぱりこれは「半分」という数詞で十分だ。有理数が使われる場面は数学に関わっていることが多い。正確な計量をするときやギャンブルの賭け率に有理数が使われるが、その背後にはきちんとした数学の考えがあるものだ。

いまでは有理数は$m/n$で表すことのできるすべての数と定義されている。$m$, $n$に使われる数は整数である。整数とは、自然数と自然数の負の値と$0$である。もちろん$n$には$0$をあてはめるわけにはいかない。いずれにしても有理数はかなり細かい数値を扱える便利な数であるが、基本的には自然数の性質を十分に含んでいる。それどころか有理数は自然界に当り前のように顔をだす数でもあるのだ。

\end{document}