% 四次元
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\def\baselinestretch{1.33}
\begin{document}
\noindent\textbf{四次元}
四次元。SF的な響きのことばである。一般に、我々が生活する空間は三次元と言われている。縦方向・横方向・高さ方向に三つの次元があるというわけだ。ここに、もうひとつ次元を加えれば四次元だが、それはどの方向に加えるんだろう?
もし、そういう方向があれば、その方向に沿って移動することで、普通に空間を移動するより短い距離で目的地に着くことが期待できる。または、四つめの次元は時間であると考える向きもある。すると、時間に沿って移動することで過去や未来へ行けることが期待できる。いずれも、非現実的な話に聞こえる。
四次元でさえこうだから、五次元、六次元、$\dots$となると想像できないだろう。ところが、どっこい。我々は、四次元など屁としか思えない高次元の生活をしているのだ。どういうことだろうか。
実は、次元に方向を与える考えは、次元の一面にすぎない。数学で言う次元とは、要素なのだ。あなたは生活の中でどれほどの要素を持っているだろうか。生年月日、出身地、氏名、社会的な身分、趣味、服装、持ち物、$\dots$などなど。あなたには数えきれないほどの要素がある。すなわち、それがあなたの次元である。思いつくままに$50$の要素を挙げることができたなら、あなたは$50$次元の生活を送っている。
なんじゃ、その理屈は!って思うだろうが、そういうことなのだ。空間が三次元というのは、特定の点を示すために、縦方向を示す値、横方向を示す値、高さ方向を示す値の三つが必要だからだ。このとき$A(3,~4,~5)$と書けば、点Aは縦位置$3$, 横位置$4$, 高さ位置$5$にあることが分かる。あなたに$50$次元が与えられるのは、あなたを特定するのに$50$の要素を必要とするからだ。このとき$あなた(1年2月3日,\ 山川県,\ 海空花子,\ 小学生,\ 盆栽,\ \dots)$と書けば、あなたは$1$年$2$月$3$日生まれの山川県出身の海空花子という名の小学生で盆栽が趣味$\dots$ということが分かる。
こう言うと、「そんなことはないだろう。人物の特定なら生年月日、出身地、氏名程度の要素で十分じゃない?」と返されるかもしれない。たしかに、その程度の要素でも人物は特定できるだろう。でも、それだけだ。同日生まれ、同出身地、同姓同名の人物がいたら、いまいる場所、していることなどは特定できない。特定するには、人物の他の要素が必要だ。だから、あなたの次元は$50$にもなるのである。
ちょっと待って。だったら、そこに他の要素を加えれば完璧じゃないの? たとえば、ある時間とそのときいる場所も分かれば、もう人物は一人だろう。たしかにそうかもしれない。でも、偶然にも同日生まれ、同出身地、同姓同名の人物が、まったく同じ格好であなたにぴったりくっついていたらどう? そんなことは常識的にありえないだろうけど、こういう状況では$3$, $4$個程度の要素で特定できないのだよ。一方で、空間のある位置を特定するなら
\begin{quote}
A$(3,~4,~5)$ \quad$\Longleftrightarrow$\quad 縦位置$3$, 横位置$4$, 高さ位置$5$
\end{quote}
ということで十分である。三つの次元があれば双方向で特定できる。
話は四次元からぶっ飛んでしまったが、数次元では必ずしもあなたを特定できない。$50$とは言わないが、ある程度の数の要素を並べるからあなたが特定でき、あなたからいくつかの要素が取り出せるのである。
\end{document}