% 定義・定理

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\def\baselinestretch{1.33}

\begin{document}

\noindent\textbf{定義・定理}

\textgt{定義}と\textgt{定理}は異なる。定義は、議論を始めるにあたり最初に定める決まりごとである。たとえば
\begin{center}
$2$辺の長さが等しい三角形を二等辺三角形と呼ぶ\quad\dots(A)
\end{center}
と決めたなら、それが定義となる。定義はどんな決め方をしても構わないが、あとで議論が破綻するようなものでは困る。

一方で定理は、定義や正しいことが確認された他の定理から導かれることがらである。たとえば
\begin{center}
二等辺三角形の底角の大きさは等しい\quad\dots(B)
\end{center}
ということがらは、二等辺三角形の定義と三角形に関する他の定理から導けるので定理だ。

実は、定義と定理はコインの表と裏の関係に似ていることが多い。どういうことかと言えば、コインにA面とB面があって、A面を表と決めればB面は裏になる。逆にB面を表と決めればA面が裏になる。つまり表(または裏)は裏(または表)でもあるのだ。

このことは先の二等辺三角形の定義と定理の例にも当てはまる。つまり
\begin{quote}
定義:$2$角の大きさが等しい三角形を二等辺三角形と呼ぶ\\[0pt]
定理:二等辺三角形の頂角をはさむ$2$辺の長さは等しい
\end{quote}
ということでもあるのだ。もっともこの場合は`二等\.角三角形'と呼ぶべきかもしれないけど。

そうすると『なんだかなあ』と思うものだ。たとえば
\begin{quote}
定義:頭に皿がある人型の生き物をカッパと呼ぶ\\[0pt]
定理:カッパの背中には甲羅がある
\end{quote}
ということが導かれたとする。で、この表裏を逆にした
\begin{quote}
定義:背中に甲羅がある人型の生き物をカッパと呼ぶ\\[0pt]
定理:カッパの頭には皿がある
\end{quote}
も正しく導かれるだろう。でも、カッパってたぶん架空の生き物だよね。架空の話の中で議論がぐるぐる回ったからといって、カッパの存在が証明されたわけではない。

すると、二等辺三角形の中で議論がぐるぐる回って、二等辺三角形の性質が本当に証明されたのだろうかとの疑問が浮かぶ。本当にそうだろうか?

実は「本当にそうだ」とも言えるし「本当はそうではない」とも言えるのである。本当にそうだと言える根拠は、二等辺三角形の性質の証明に用いた他の定理が`ぐるぐるの外'のものだからだ。つまり、異なる視点から見ているので内部だけで自己完結しているわけではない。カッパの話---架空の世界の中だけの議論---とは違う。しかし、本当はそうではないと言える根拠もある。`ぐるぐるの外'の定理とはいえ、その定理を含めれば結局は`ぐるぐるぐるの中'のものではないか、ということだ。

じゃあ、本当のところはどうなんだろう? それは
\begin{center}
\textgt{ぐるぐるの中で矛盾がなければよい}
\end{center}
のである。なぜなら、ぐるぐるの外は別世界だから。いまいる世界が平和ならそれでよいのだ。その上、いまいる世界が真に正しいかそうでないかを、いまいる世界の中だけで判断することはできないという事実がある(\textgt{不完全性定理})。それを判定するには`一段上'から見る必要があるのだ。

\end{document}