% 数のかず
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\def\baselinestretch{1.33}
\begin{document}
\noindent\textbf{数のかず}
「数(すう)のかず」というなんとも不思議な表現をしてしまった。要するに「数はどれぐらいのかず(量)をもっているか」ということである。
たとえば
\begin{quote}
$1$, $2$, $3$, $4$, $5$, $\dots$
\end{quote}
と続く自然数はいくつあるのだろうか。そんなことは聞くまでもない。数えることなどできないから、無限にあるに決まっている。
それでは
\begin{quote}
$2$, $4$, $6$, $8$, $10$, $\dots$
\end{quote}
と続く偶数はいくつあるのだろうか。これまた無限に決まっている。
さて、ここからが問題である。ならば自然数と偶数はどちらがたくさんあるだろうか。こう質問されたら基本的には次のような回答が考えられる。
\begin{enumerate}
\item[A:] そもそも自然数も偶数も無限にあるのだから数えることは不可能だ。つまり、どちらがたくさんあるかという質問は意味をなさない。
\item[B:] 偶数は自然数に完璧に含まれてしまう。しかも偶数は自然数を一つおきに取り出したものだから、自然数は偶数のちょうど$2$倍だけ多くある。
\end{enumerate}
こうなるとどちらも正しいように思えてくる。だが、この考えは「無限」を相手にする限り適切な考えではない。このような感覚は「有限」を扱うときに有効なだけなのだ。
「無限」を扱うにあたって、どちらがたくさんあるかという質問は無意味なように感じる。しかし無限の数でも「数える」ことができてしまうのだ。この「数え方」によれば、驚くべきことに自然数と偶数は同じだけのかず(量)をもつという。それは「無限」のものを``数えた''のではなく、「無限」ものを``くらべた''結果である。そしてこのくらべかたの基本概念として「濃度」という考えがある。
\end{document}