% 双曲線関数

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\def\baselinestretch{1.33}

\begin{document}

\noindent\textbf{双曲線関数}

双曲線関数と呼ばれる関数がいくつかある。それらの代表は
\begin{quote}
$\displaystyle \frac{e^x+e^{-x}}{2}$,\qquad $\displaystyle \frac{e^x-e^{-x}}{2}$
\end{quote}
であるが、この二つの関数はそれぞれ
\begin{quote}
$\cosh x$,\qquad $\sinh x$
\end{quote}
と書かれることが多く「ハイパーボリックコサイン・エックス、ハイパーボリックサイン・エックス」と読む。どうして$e^x$に関するものにコサインやサインの名称が付いてるんだ? グラフを描いたって$y = (e^x+e^{-x})/2$と$y = \cos x$に似通ったところがあるとは思えない。

この不思議な関係は、実は級数展開と深い関係がある。指数関数を無限級数に展開すると
\begin{quote}
$e^x = \displaystyle 1+x+\frac{x^2}{2!}+\frac{x^3}{3!}+\frac{x^4}{4!}+\frac{x^5}{5!}+\cdots$ \quad(※)
\end{quote}
であり、また、三角関数を無限級数に展開すると
\begin{quote}
$\begin{array}{rcl}
\cos x & = & \displaystyle 1-\frac{x^2}{2!}+\frac{x^4}{4!}-\frac{x^6}{6!}+\frac{x^8}{8!}-\cdots \\[8pt]
\sin x & = & \displaystyle x-\frac{x^3}{3!}+\frac{x^5}{5!}-\frac{x^7}{7!}+\frac{x^9}{9!}-\cdots
\end{array}$
\end{quote}
である。なんとも均整のとれた式ではないか。

$e^{-x}$は(※)における$x$に$-x$を代入した式のことだから、偶数番目の項---すなわち指数が$1$,~$3$, $5$, $7$,~$\dots$である項---の符号が$+$から$-$に変わる。そこで、$e^x+e^{-x}$の計算をすれば偶数番目の項が打ち消し合って奇数番目の項---すなわち指数が$0$,~$2$, $4$, $6$,~$\dots$である項---だけが残る。$e^x-e^{-x}$の計算ならその逆だ。

かくして残った項をよくよく眺めれば、それが$\cos x$の級数展開や$\sin x$の級数展開と似ていることに気づく。具体的には
\begin{quote}
$\begin{array}{rcl}
\displaystyle \frac{e^x+e^{-x}}{2} & = & \displaystyle 1+\frac{x^2}{2!}+\frac{x^4}{4!}+\frac{x^6}{6!}+\cdots \\[8pt]
\displaystyle \frac{e^x-e^{-x}}{2} & = & \displaystyle x+\frac{x^3}{3!}+\frac{x^5}{5!}+\frac{x^7}{7!}+\cdots
\end{array}$
\end{quote}
という式ができあがる。そのような訳で、$e^x$の関数でありながら三角関数の名称を頂戴した次第なのである。

名前の由来には、大抵それなりの理由があるものだ。

\end{document}