% 素数

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\begin{document}

\noindent\textbf{素数}

自然数には$6\ (= 2\times3)$や$50\ (= 2\times5\times5)$のように、より小さい数の積に分解できる数もあれば、$7 (= 1\times7)$や$43\ (= 1\times43)$のように、どうがんばってもより小さい数の積にできない数もある。あとの例では$1$という小さい数を使って分解しているように見えるかもしれない。しかし$1$は掛け算においては、存在しようがしまいが関係のない数である。そのような数$1$を使わないかぎりより小さい数に分解できないならば、実質的に$7$や$43$は分解できないことと同じだ。

そこで私たちは自然数を$2$種類の数に分けて考えることにする。すなわち、より小さい数の積に分解できる数とできない数である。より小さい数に分解できる数を「合成数」、決して分解できない数を「素数」と呼ぶことにしよう。さて、小さい順に素数をしばらく書き並べてみよう。

\begin{quote}
$1$, $2$, $3$, $5$, $7$, $11$, $13$, $17$, $19$, $23$, $29$, $31$, $\dots$ \quad(※)
\end{quote}

素数について学んだことがある人であれば$1$が含まれていることに疑問をいだくだろう。たしかに今日では$1$は素数``でない''と定義している。その理由は、素数は素数であるだけでは大きな意味を持たないからだ。合成数を素数の積にしてはじめて素数の意義が見えてくる。とくに合成数を素数の積に分解したとき、「積の順番を無視すれば分解の仕方はただひと通りである」ことは重要なことだからだ。$1$を素数にすればこのことは成り立たない。たとえば
\begin{quote}
$8 = 2\times2\times2 = 1\times2\times2\times2 = 1\times1\times2\times2\times2 = \dots$
\end{quote}
というように、無数の分解が存在してしまう。この混乱をなくすためにも$1$にはお引き取り願うのが賢明というものだ。

素数は小さい順に(※)であるが$1$は素数の仲間に入れない。これが素数の定義と約束だ。この定義と約束ではどうもしっくりこないというのであれば、素数を次のように定義してもかまわない。「素数はただ二つの約数をもつ数」であると。ただ二つの約数をもつということは、要するに$1$と自分自身の数だけが約数になっているということである。これはより小さい数の積に分解できないことを意味し、同時に$1$を排除できる定義だ。なぜなら$1$はたった一つの約数しかもたないからだ。

\end{document}