% 積分

\documentclass{jsarticle}
\pagestyle{myheadings}
\markright{tmt's math page}
\def\baselinestretch{1.33}

\begin{document}

\noindent\textbf{積分}

積分という字面は積金 (つみきん) と似ているところがある。積金がわずかずつのお金を積むことであるように、積分はわずかずつの区分を積むことである。微分同様に上手い名称であろう。よく「微分と積分は逆演算の関係にある」などと言われるけれど、それは副次的なもので、実際は微分とは無関係な積み重ねが本質である。

積分の定義をここでの話題に沿う形で示せば
\begin{quote}
$F(x) = \displaystyle \lim_{\Delta\to0}\sum_{i=1}^{n} f(x_i)\cdot\Delta$ \quad(※)
\end{quote}
である。この式は、数学が苦手な人なら逃げ出したくなるような式だ。しかし冷静に見てみよう。

まず$f(x_i)$というのは、たとえば$f(x) = x^2$のような関数---これはときに$y = x^2$と書かれる---に$x = x_i$を代入したものである。$x_i$というのは分かりづらいが、ここでは$x$の値が$x_1$, $x_2$, $x_3$, $\dots$, $x_n$のすべての値をとることを想定している。図形的に考えれば$f(x_1)$の値は、$x$軸の目盛$x_1$に立つ線の長さということになる。また、$\Delta$は区間$[x_0,~x_n]$を等分した小さな幅を想定している。ということは、(※)において
\begin{quote}
$f(x_i)\cdot\Delta$
\end{quote}
が意味するところは、縦$f(x_i)$、横$\Delta$である長方形の面積を計算していることになる。

次に、$\displaystyle \sum_{i=1}^{n}$は「和」の記号で、とどのつまりは、先ほどの細長い長方形の面積をすべて足しあわせることを意味する。この段階で求まる値は、階段状のギザギザをもつ図形の面積であり、かなり粗い値でしかない。大雑把である。そして、そのおおまかな面積に関して$\lim_{\Delta\to0}$とすること---すなわち長方形の横幅の値を$0$の値に極々近付けること---は、粗いギザギザを細かいギザギザへ変える効果がある。そうすることで図形の面積は、はじめの関数がなぞっている線を輪郭とする図形に近くなる。

微分同様、積分もどんぶり勘定的な計算をしながら精密な値に近付いている。結果的に積分は、より精確な面積を計算する手法なのである。とはいうものの、積分を発展させていくと、必ずしも面積だけを求めるものではないところに行き着くし、同じものを対象にしても、違う種類の積分を行うと違う値になったりもする。ここまでくると、積分の字面は「名は体を表す」ことになっていないのだ。

\end{document}