% 輪環の順
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\markright{tmt's math page}
\def\baselinestretch{1.33}
\usepackage{tikz, amsmath}
\begin{document}
\noindent\textbf{輪環の順}
$(a+b+c)^{2}$を展開してみよう。たいていの教科書や参考書では
\[
(a+b+c)^2 = a^2+b^2+c^2+2ab+2bc+2ca\quad(☆)
\]
と書かれているものだ。だから公式として覚えるときも右辺は『エー2ジョウ たす \dots \dots たす 2\.シ\-\.ー\-\.エ\-\.ー』と唱える。なんで最後の項はアルファベット順じゃないんだ?
この順番による書き方は「輪環(りんかん)の順」と呼ばれ、数式の書き方の一般的な{\textgt 習慣}として定着している。輪環とは$a \to b \to c \to a \to \dots$のように回すことである。おっと、これは\
\begin{tikzpicture}[scale=0.5pt]
\draw ({cos(90)}, {sin(90)}) node {$a$};
\draw[shift={({cos(105)}, {sin(105)})}, ->] (0, 0) arc[radius=1, start angle=110, end angle=190];
\draw ({cos(150)}, {sin(-30)}) node {$b$};
\draw[shift={({cos(225)}, {sin(225)})}, ->] (0, 0) arc[radius=1, start angle=230, end angle=310];
\draw ({cos(30)}, {sin(-30)}) node {$c$};
\draw[shift={({cos(-15)}, {sin(-15)})}, ->] (0, 0) arc[radius=1, start angle=-10, end angle=70];
\end{tikzpicture}
と描いた方が`輪環'を意識できてよいか。
だから習慣なんてどうでもよいと思うなら
\[
(a+b+c)^2 = a^2+b^2+c^2+2ab+2ac+2bc\quad(※)
\]
のように「辞書順」で書いても何ら不都合はない。でも辞書順なら
\[
(a+b+c)^2 = a^2+2ab+2ac+b^2+2bc+c^2
\]
ではないか?とか、いや、数字はアルファベットより後の順だから※でよいのでは?とか、意見が百出しても不思議ではない。
にもかかわらず輪環の順が習慣として定着しているのは、多くの人がそれを`美しい'と感じているからだ。まあ、美しさの基準なんて人それぞれなので、辞書式の方が美しいと思うならそれでよいのである。数式は
\begin{center}
\textbf{項が正しくそろっていれば、項の順番はどうでもよい}
\end{center}
のだから。
でも、最初に誰かが美しいと感じる数式を書物に載せて、書物を読む人がそれを受け入れれば、その書き方が自然に見えてくるものだ。その結果☆の書き方がはびこるのである。
ところで、☆は本当に輪環の順に沿っているのか? $a \to b \to c \to a \to \dots$を馬鹿正直に受け取れば
\[
(a+b+c)^2 = a^2+b^2+c^2+2ab+2ca+2bc
\]
じゃないだろうか? なんで☆は`しりとり'みたいな繋げかたにするのかな? その方が唱えるときに覚えやすいのかもしれないね。
\end{document}