% ニムの必勝

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\begin{document}

\noindent\textbf{ニムの必勝}

石取りゲームのような二人遊びをニムと呼ぶようである。一定のルールを設けて、交互に石を取り合えばいずれ石はなくなる。このとき、最後の石を取った方が勝ちになるか負けになるかはルールによるが、いずれにせよ引き分けというものはない。たとえば最後の石を取ると負けになるルールなら、自分が最後に石を一つ残せば勝てるわけだ。

すると、その前に相手がどのように取っても石が一つ残ることはなく、かつ、次に自分が石を一つ残せるような局面(A)が存在するはずである。ならば、相手がどのように石を取っても、自分の番で局面Aにできれば勝ちである。では、局面Aを作るにはどうすればよいか。それは、相手がどのように取っても局面Aになることはなく、かつ、次に自分が局面Aを作れるような局面(B)を作ればよい。このように逆順に考えることができるなら、それが必勝法となる。

しかし、最初の局面まで遡ったとき、それが自分の手番でなければ勝てない。つまり、最初の局面で勝ちを確信できるなら、そのニムは先手必勝だ。逆に、最初の局面が必勝局面でなければ、相手から始めてもらえば後手必勝である。要するにニムには必勝手順がある。

あまり複雑なゲームでは、必勝法があったとしても見つけられないかもしれないので、比較的簡単なニムを想像してもらいたい。そこで、あなが必勝法の検討をするとしよう。おそらくあなたは、「さて、最後の局面がこうならよいので、その前はああなって$\dots$。要するに、こんな形かあんな形に持っていけば必勝だな」などと考えることだろう。

ブー。それは必勝法ではありません。あなたが、あんな形やこんな形にすることを考えても無駄なのだ。なぜって、あなたが、あんな形かこんな形にすることができても、手番が相手に回ってしまうじゃないか。だからって、相手があんな形かこんな形にしてくれることを期待できる?

あなたが検討することは、必勝法でなく必敗法である。この局面になったら絶対負ける、という局面がどういうものか知らなくてはならない。そうすれば、あなたは自身の手でその局面を作ることができる。それは、とりもなおさず相手に必敗局面の手番を渡すことだからだ。負けるが勝ち?---いやいや、負けることを考えるが勝ちだ。

\end{document}