% モンティ・ホール問題モドキ

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\begin{document}

\noindent\textbf{モンティ・ホール問題モドキ}

モンティ・ホール問題\footnote{このサイトでは「Numerical Magic/3枚の扉」として掲載している。}は
\begin{center}
『そのままなら$1/3$の確率で当たり、乗り換えれば$2/3$の確率で当たる』
\end{center}
であるが、もし司会者が\textgt{当たり/ハズレを知らないまま}一つの扉を開けたらどうだろう(『モンティ・ホール問題モドキ』と呼ぶことにする)。その場合は、運悪く?当たりの扉を開ける可能性もあるが、そうなったらゲームは終了である。でも、運よく?ハズレの扉を開けたら、状況はまったく同じだ。つまり、参加者はAを選択し、司会者はCを開けている。で、司会者は『Bの扉に乗り換えることができます。どうしますか?』と参加者に尋ねるのである。ところが、この場合は
\begin{center}
『そのままでも、乗り換えても$1/2$の確率で当たる』
\end{center}
ことになる。

扉の状態がまったく同じで、違いは司会者がハズレ扉を知って開けたか・知らずに開けたかであるのに、なんで確率が変わるのかと思うだろう。そうなら確率を勘違いしている。確率の話って、一回限りの試行の話じゃないのだ。試行を何千何万と繰り返したとき、起こる割合を表すものである。つまりモンティ・ホール問題は、
\begin{enumerate}
\item 参加者が扉を一つ選ぶ。
\item 司会者が残りの扉の(あらかじめ知っている)ハズレ扉を一つ開ける。
\item 参加者は開ける扉を(たとえば常に乗り換えて開けると)決め、扉を開ける。
\end{enumerate}
ということを延々繰り返すのである。もし$3$万回繰り返せば、おそらく$2$万回程度が当たりで$1$万回程度がハズレになるだろう。これを「乗り換えたときの当たる確率は$2/3$」というのである\footnote{乗り換えなければ、おそらく$1$万回程度が当たりで$2$万回程度がハズレになるだろう。これを「乗り換えないときの当たる確率は$1/3$」というのである。けっして、「\.乗\-\.り\-\.換\-\.え\-\.る\-\.こ\-\.と\-\.で当たる確率が、乗り換えないときの$2$倍になる」わけではない。}。

一方、モンティ・ホール問題モドキは、
\begin{enumerate}
\item 参加者が扉を一つ選ぶ。
\item 司会者が残りの扉を(当たり/ハズレを知らずに)一つ開ける。
\item 当たりを開けてしまったら無効とし、ハズレを開けたら参加者に選択を尋ねる。
\item 参加者は開ける扉を(たとえば常に乗り換えて開けると)決め、扉を開ける。
\end{enumerate}
ということを延々繰り返すのである。もし$3$万回繰り返せば、おそらく当たりを開けて無効になる場合が$1$万回ほど生じ\footnote{無効になる場合は、参加者がハズレを選び($2/3$)司会者が当たりを開けた($1/2$)ときに限る。その確率は$2/3\times1/2 = 1/3$。}、$1$万回程度が当たりで$1$万回程度がハズレになるだろう\footnote{無効にならない場合は、参加者が当たりを選び($1/3$)司会者がハズレを開けた($1$)ときか、参加者がハズレを選び($2/3$)司会者がハズレを開けた($1/2$)ときに限る。その確率は$1/3\times1+2/3\times1/2 = 2/3$。}。

両者の違いはなんだろう。それは、司会者が当たり/ハズレを知っていたか・知っていなかったかである。こう書くと、司会者の心境が確率に影響したように感じるが、もちろんそんなんことはない。本当の違いは、\textgt{参加者がハズレを選んだときの半分ほどが除外される}ことである。\.本\-\.来\-\.のモンティ・ホール問題なら、ハズレを選んだときこそ確実に当たるのにね。無効になる確率は$1/3$で、その半分($1/2$)ほどが除外されるので、確実に当たる見込みがあった$1/6$が失われる。本来なら、乗り換えて当たる確率は$2/3$だったので、モンティ・ホール問題モドキでは乗り換えて当たる確率は$2/3-1/6 = 1/2$となる。

ところで、モンティ・ホール問題モドキはいくらでも変則バージョンを作ることができる。一つだけ示しておこう。参加者が扉を一つ選んで、司会者がハズレ扉を開けるところまでは同じとする。このとき司会者が『当たりはあなたが選んだ扉か、残りの扉のどちらかにあります。いま、サイコロを振ってもう一度当たりの扉を決め直します。(決め直した後で)さて、扉を乗り換えることができます。どうしますか?』と問われたらどうだろう?

本来のモンティ・ホール問題と同じ状況に見えるね。でも、この場合はどっちの扉を選んでも当たる確率は$1/2$である。当たる扉を\textgt{決め直した}からだ。違いがわからないとしたら、生活を見つめ直した方がよいかもしれない。世の中には、同じように見えて、一方は得をして他方は損をするような設定がされているものは多々あるものである。騙されたり損をしないためにも、正しい考え方を身につけよう。

\end{document}