% モンティ・ホール問題
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\markright{tmt's math page}
\def\baselinestretch{1.33}
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\begin{document}
\noindent\textbf{モンティ・ホール問題}
モンティ・ホール問題\footnote{このサイトでは「Numerical Magic/3枚の扉」として掲載している。}はときどき話題に上り、あーだこーだと議論が沸くところをみると、相応に``よい問題''なのだろう。酒の席にはうってつけではないかな? しかし、ぶっちゃけこれは
\begin{quote}
\fbox{問} A, B, Cの三つの扉の一つにだけ当たりがある。あなたの選択肢は二つだ。
\begin{enumerate}
\item[a)] どれか一つの扉を選ぶ。
\item[b)] どれか二つの扉を選ぶ。
\end{enumerate}
さあ、どっちにする?
\end{quote}
と同等の問題だ。迷うことなんてないよね。当然b)だ。だって、当たる``可能性''は$2$倍だもの。
モンティ・ホール問題の前提として、問いの最初から最後まで一貫して変わらないものがある。それは
\begin{enumerate}
\item A, B, Cのどの扉も、\.選\-\.ん\-\.だ\-\.と\-\.きの当たる確率は$1/3$。
\item 選ばれなかった$2$枚の扉のうち、$1$枚は確実にハズレ。
\end{enumerate}
である。だから司会者は、自信をもってハズレの扉を開くことができるのがミソだ。
さて、いま参加者が一つの扉を選択した、としよう。A, B, Cのどれでもこの先の議論に差し支えないので、参加者はAを選択したとする(本当はB, C両方を選びたいんだ!)。すると、この時点では以下の状況が生じている。
\begin{center}
\begin{tikzpicture}
\draw (0, 0) -- node[below]{A} (1, 0) -- (1, 2) -- (0, 2) -- cycle;
\draw (0.15, 1) circle(0.1);
\draw (4, 0) -- node[below]{B} (5, 0) -- (5, 2) -- (4, 2) -- cycle;
\draw (4.15, 1) circle(0.1);
\draw (8, 0) -- node[below]{C} (9, 0) -- (9, 2) -- (8, 2) -- cycle;
\draw (8.15, 1) circle(0.1);
\draw[dashed] (2.5, -2) -- (2.5, 2.3);
\draw (0, -1.5) node {\small こっち側を選べば当たる確率は$1/3$};
\draw (6, -1.25) node {\small こっち側を両方選べば当る確率は$2/3$};
\draw (6, -1.75) node {\small (司会者はどちらかのハズレ扉を必ず開ける)};
\end{tikzpicture}
\end{center}
そして司会者は、B, Cのどちらかのハズレ扉を開けて(もしCを開けたら)『Bの扉に乗り換えることができます。どうしますか?』と参加者に尋ねるのである。これって、まさに渡りに船! 本当はそっち側(B, C両方)を選びたかったんだから。そして何より肝心なことは、確率の状況がゲームを始めた当初と変わってないってことだ\footnote{確率の状況とは、A側を選べば当たる確率は$\textrm{P(A)} = 1/3$、B、C側を\.選\-\.べ\-\.ば当たる確率は$\textrm{P(B)}+\textrm{P(C) = 2/3}$ということ。選んでいなければ$\textrm{P(B)} = \textrm{P(C)} = 1/3$という保証はない。}。すなわち、\textgt{Bに乗り換えることはそっち側(B, C両方)を選んだことと同等である}。
かくして『(そっち側に)乗り換える方が当たる可能性が$2$倍になる』のである\footnote{司会者が扉Cを開けたことで、$\textrm{P(B)}+\textrm{P(C) = 2/3}$に$\textrm{P(C) = 0}$の保証がつき$\textrm{P(B) = 2/3}$が確定する。}。
このようなリクツに納得できない人は多い。状況的には開いてない扉は$2$枚なのだから、そのままでも乗り換えても当たる確率は五分五分に見えるのだ。それ、間違ってるよ。間違う理由は多分、モンティ・ホール問題を一回限りの試行と考えるからだ(実際、参加者にとってはその回限りの挑戦だ)。だから本当は、モンティ・ホール問題に確率の話を持ち出すべきではないのかもしれない。
だって確率の計算ってのは、あくまでも試行を無限に繰り返すことが前提の理論計算だからである。硬貨を投げて表が出る確率と裏が出る確率はそれぞれ$1/2$などというときは、一回限りの試行から得られる結論ではない。表と裏が半分づつ出るなんてあり得ないでしょ。$1/2$の意味は、試行を何千・何万回、もしくは無限に繰り返したとき、表や裏が出る割合が$1/2$ずつということである。
だから、その回限りの挑戦をする参加者にとっては、扉を変えようが変えまいが運任せにするしかない。乗り換えて$2$倍当たることが正当化されるためには、毎回参加して常に扉を乗り換えることを続けることである。そうすれば、$100$回参加したときには、$60$〜$70$回は商品を受け取って帰れるだろう。
\end{document}