% み・は・じ

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\begin{document}

\noindent\textbf{み・は・じ}

小学生の頃、道のり・速さ・時間の計算を習ったとき『み・は・じ』を耳にした人は多いだろう。これはもちろん『み(道のり)・は(速さ)・じ(時間)』を表しているのだが、いろいろな亜種として『き(距離)・は(速さ)・じ(時間)』や『み(道のり)・そ(速度)・じ(時間)』なんかで覚えた人もいるはずだ。私は『距離 := 直線の長さ』『速度:= ベクトル』との思いが強いので、『き』や『そ』を使うのはどうかと思うだが、それは一歩譲っておこう。

で、『み・は・じ』はこれだけじゃ意味がなくて、こんな図
\begin{center}
\begin{tikzpicture}
\draw (0, 0) circle(1);
\draw (-1, 0) -- (1, 0);
\draw (0, 0) -- (0, -1);
\end{tikzpicture}
\end{center}
の中に『み・は・じ』を書き込んで$\dots$、おっと
\begin{center}
\begin{tikzpicture}
\draw (0, 0) circle(1);
\draw (-1, 0) -- (1, 0);
\draw (0, 0) -- (0, 1);
\end{tikzpicture}
\end{center}
だったかな$\dots$、どっちだっけ? なんてことになってないだろうね。

もちろん上の図が正しい。$(道のり)=(速さ)\times(時間)$だけ考えるなら、上の図でも下の図でも(速さ)と(時間)を分割して書けばよいのだが、実際は$\displaystyle(速さ)=\frac{(道のり)}{(時間)}$、$\displaystyle(時間)=\frac{(道のり)}{(速さ)}$の上下関係が重要なので、当然、上の図に当てはめるものである。

だけど、この図は必要か? 中学生ともなれば文字式が自由に使えるので、$s = vt$を覚えさえすれば$v$と$t$は式変形ですぐに求められる\footnote{\textit{v}elocity(速度)、\textit{t}ime(時間)は分かるのだが、なぜ\textit{w}ay(道のり)、\textit{d}istance(距離)とかではなく$s$なんだろう? \textit{s}pan(さしわたし)かな?}。でも、小学生では文字式が自由に扱えないので、$3$種類の式を覚えたつもりで$\times$と$\div$を間違えることを防ぐ目的で図を補助に使うのだろうか。だったら本末転倒じゃないの?

この図を使いこなすのって、かなり高い能力を必要とするぞ。でも高い能力があれば、おそらく図は必要ない。また、$3$種類の式で$\times$と$\div$がごっちゃになるようなら、図は使いこなせないだろうに。じゃあ、どうする?

たしかに小学生は文字式を自在に扱えないけれど、たとえば$10 = 2\times5$の式を見て、$2 = 10\div5$と$5 = 10\div2$は分かるはずだ。それなら$(道のり)=(速さ)\times(時間)$の補助には図ではなく、たとえば公式を
\[
\stackrel{10}{(道のり)} = \stackrel{2}{(速さ)}\times\stackrel{5}{(時間)}
\]
という覚え方一つにすれば、『$\stackrel{2}{(速さ)}$を求めるには』$\dots$『$\stackrel{10}{(道のり)}\div\stackrel{5}{(時間)}$だ!』となるのではないだろうか。

世の中、無駄や遠回りがなんと多いことか。

\end{document}