% 恒等式

\documentclass{jsarticle}
\pagestyle{myheadings}
\markright{tmt's math page}
\def\baselinestretch{1.33}

\begin{document}

\noindent\textbf{恒等式}

「$=$」で結ばれた式を「等式」と呼ぶが、特に
\begin{quote}
$(a+b)^2 = a^2+2ab+b^2$ \quad(※)
\end{quote}
のような式を「恒等式」と呼んで区別している。この等式は$a$や$b$の値が何であっても必ず成立する等式である。当り前じゃないか、(※)の左辺を展開したものが右辺なんだから、と言わないでほしい。数学ではたった一つの例外があるために、公式や定理とならないことがたくさんあるのだ。どんな場合にでも成立が保証される恒等式は大変ありがたいものである。

恒等式はむしろ「公式」と呼ばれることが多い。等式の成立が保証されているから、よく使う式は公式として利用されている。$3^2+4^2 = 5^2$や$(3/5)^2+(4/5)^2 = 1$の等式はどんなことがあっても正しく成立しているが、さすがにこれは恒等式とは呼ばない。この式は特別な数値で成り立っているだけなのだから。

ところが直角三角形の辺の長さ$a$, $b$, $c$に対する
\begin{quote}
$a^2+b^2 = c^2$
\end{quote}
や、三角比に関する
\begin{quote}
$\sin^2\theta +\cos^2\theta = 1$
\end{quote}
の等式は恒等式である。これらはどんな$a$, $b$, $c$や$\theta$についても成立する。そのためこれらの式は数学において重要な公式として扱われている。

\end{document}