% 函数

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\begin{document}

\noindent\textbf{函数}

函数は現代では``関数''と書く。関数と聞けば『ああ、$x$と$y$を使うアレね』とか『グラフとか難しいんだよね』みたいな感じを持っている人は多いだろう。ま、たしかに$x$, $y$は関数に欠かせない文字だし、グラフとも関連が深い。でも、難しいわけではない。

関数を難しく感じるのは、関数についての学習内容というより、最初に覚えた関数の意味がそうさせているのかもしれない。おそらく中学校で関数は
\begin{center}
\textbf{「$x$の値を決めると、$y$の値が一つ決まる関係」をいい、このとき「$y$は$x$の関数である」という}(※)
\end{center}
みたいに導入されたと思う。その通り、完璧な説明だ。

もちろん数学なのでこのように覚えてもらうのだが、言い方がちょっと堅苦しいね。きっと感覚的によくわからないのではないかな? ``関数''は英語で``function''と呼ばれる。日本語にすれば``機能''である。つまり関数と言えば、そこには何かの機能を持ったモノが存在すると言っているのだ。

具体的に言おう。たとえば手品師のシルクハットが関数である。シルクハットにボールを入れるとハトになって飛び出る。シルクハットはボールをハトにする機能を持っているわけだ。これが関数の感覚だ。要するに、関数は魔法の``函(はこ)''ということである。

もっとも、この感覚は数学的に正しくない。なぜなら、ボールを入れると旗が飛び出ることもあるからだ。え? ボールを旗にする機能があるじゃないかって? そうなのだが、※の前半を思い出そう。``$y$の値が一つ決まる関係''が正式な``機能''なのである。シルクハットは、ボールをハトと旗の二つにする機能を持っている。※と違うよね。だから普通の意味での函ではない。函でないとしたらなんだろう?

数学では、関係式$y = x^2+3$は関数と言える。$x = 1$に決めると$y$の値が$y = 4$の一つだけ決まるからだ。$x = -1$に決めても$y$の値が$y = 4$だからおかしくない?と思ったら、それはあなたがおかしい。これは※の前半の説明通りの機能を見せている。でも、関係式$y = x^2\pm3$は関数とは言えない。なぜなら、$x = 1$に決めると$y$の値が$y = 4$,~$-2$の二つになってしまうからだ。

つまり、正しい``関''係を表す``数''式が関数なのだ。数学はとくに導入が大事である。なんとなく、$x$に代入して$y$を求めるのが関数と思って勉強を続けていると、思わぬ落とし穴に落ちることもあるだろう。正しい関係を表す数式---それは値が一つに決まる数式---であることを忘れてはいけない。もっともそれは中学校あたりで習う関数の話。本当の関数は※を満たせばよいので、数式で表せなくてもかまわない。だから、やっぱり``関数''と書くより``函数''と書きたいものだね。

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