% 角の三等分
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\begin{document}
\noindent\textbf{角の三等分}
作図によって角の三等分はできないことはよく知られている。しかし、その本質がどういうことかはそれほど知られていないと思う。そもそも「作図」ってどういうことだろう?
数学でいう「作図」とは次のことを指す。
\begin{itemize}
\item 定木によって直線を引く、または直線を延長する
\item コンパスによって円を描く
\end{itemize}
以上の二つだ。定規ではなく「定``木''」と書いたことに注意してほしい。作図に使えるのは、長さを測ることができない---すなわち目盛がない---定木である。コンパスで円を描くことを、直線を等分割することに利用できるが、やはり長さを測ることはできないのである。
さて、この二つの操作でできることは何だろう。それは
\begin{itemize}
\item 直線と直線の交点を作図する(求める)
\item 直線と円の交点を作図する(求める)
\item 円と円の交点を作図する(求める)
\end{itemize}
ことに他ならない。つまり、作図をするということは、交点を求めることである。そして交点を求めるということは、方程式を解くことと同じなのだ。
ところで、交点を求める方程式だが、ここにあげた$3$種類の交点を求めるための式は$1$次方程式か$2$次方程式になる。$1$次方程式は単に四則演算のみで解けるし、$2$次方程式は解の公式に見るように四則演算と平方根を使って解ける。つまり、作図をすることは$1$次または$2$次方程式を解くことと同値である。逆に言えば、四則演算と開平で解けない方程式を持つ図は作図不能ということになる。
では、角の三等分はどのような方程式になるのだろうか。三等分したい任意の角を、半径$1$の扇形の中心角であると見ておこう。そのとき、中心角の大きさを$\theta$、それを$1/3$に分ける線が弧と交わる点の座標を$(x,~y)$とすると
\begin{quote}
$\begin{array}{rcl}
3y-4y^3 & = & \sin\theta \\
4x^3-3x & = & \cos\theta
\end{array}$
\end{quote}
となる。少なくとも$3$乗の項があるこの方程式は、四則演算と開平では解けない。すなわち作図不能なのである。
しかし、作図が不能だと分かっても、何とか作図をしたくなる人はいるもので、特定の角に対して三等分する方法だとか、特殊な定木を用いて三等分する方法だとかを考え出す人もいる。「転んでもただでは起きない」という言葉は、こういう人たちに贈られるのがふさわしい。
\end{document}