% 順位づけ/賞がある--
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\begin{document}
\noindent\textbf{順位づけ/賞がある--}
このトピックは数学における『順序』のことではない。日常的な順位づけ、それも順位によって異なる賞が与えられる場合の話だ。
しかし順位なんてものは、大抵は数値化した値を順に並べ、同じ値は同順位とするのが普通である。どうしても同じ値でも差をつけたければ、付随する別のものを比較すればよい。リーグ戦の順位などは、勝敗が同じなら当事者どうしの対戦で優劣を決めたりするものだ。
同じ数値もしくは成績なのに順位に差をつけたい理由は、その必要があるからだ。たとえば上位リーグ・下位リーグがあるリーグ戦は、昇格・降格を明確に分けるために同じ成績でも差をつける必要がある。でも、そうでなくても、ほとんどの競技は明確に順位をつけたがっているように見える。
とくにトーナメントでは、決勝で一位、二位は確定するが、三位以下は確定しない。そのため三位決定戦はよく行われるし、五位以下に順位をつけることさえある。しかしトーナメントは性質上、強豪と対戦がないまま上位に進める場合がある。そのためシードなどで強豪が早い段階で競合しないように工夫するのだが、完璧な組み合わせは望めないものだ。
実力をはっきりさせるなら総当たりがよいが、参加者が多いと試合数が膨大になってしまう。すると現実問題として、トーナメントを選択するしかないことになる。毎年繰り返し行われる競技ならトーナメントでもよいだろう。でも、オリンピックのような$4$年に一度しか開催しないものは、トーナメントによる運・不運は受け入れなくちゃならない。とはいえ$4$強まで進出したとき、『おい、あっちの山は強豪がいなかったじゃないか。こっちはここで負けたら三位決定戦に回るんだぞ。なんで向こうの山はヘタレのくせに銀メダル以上になるんだ?』とはなりたくないよね。
そこでトーナメントであっても、より実力が反映されそうな方法を考えてみた。シードを取り入れていれば$4$強あたりまでは順当に絞られるのではないだろうか。で、そこからは$4$者による総当たりにするのはどうだろう。そうすれば、ヘタレが運よく紛れたとしても必ず強豪の壁に当たる。その結果、いちばん納得がいく場合として
\begin{center}
\begin{tabular}{c|ccccc}
& A & B & C & D & \\ \hline
A & - & ○ & ○ & ○ & $3$-$0$ \\
B & ● & - & ○ & ○ & $2$-$1$ \\
C & ● & ● & - & ○ & $1$-$2$ \\
D & ● & ● & ● & - & $0$-$3$
\end{tabular}
\end{center}
\noindent のようになれば不満はないよね。明らかにA-B-C-Dの順に序列ができる。
しかし、往々にして
\begin{center}
\begin{tabular}{c|ccccc}
& A & B & C & D & \\ \hline
A & - & ○ & ○ & ○ & $3$-$0$ \\
B & ● & - & ○ & ● & $1$-$2$ \\
C & ● & ● & - & ○ & $1$-$2$ \\
D & ● & ○ & ● & - & $1$-$2$
\end{tabular}
\hspace{1em}
\begin{tabular}{c|ccccc}
& A & B & C & D & \\ \hline
A & - & ● & ● & ● & $0$-$3$ \\
B & ○ & - & ● & ○ & $2$-$1$ \\
C & ○ & ○ & - & ● & $2$-$1$ \\
D & ○ & ● & ○ & - & $2$-$1$
\end{tabular}
\hspace{1em}
\begin{tabular}{c|ccccc}
& A & B & C & D & \\ \hline
A & - & ● & ○ & ○ & $2$-$1$ \\
B & ○ & - & ● & ○ & $2$-$1$ \\
C & ● & ○ & - & ● & $1$-$2$ \\
D & ● & ● & ○ & - & $1$-$2$
\end{tabular}
\end{center}
\noindent みたいなことになるものだ。もしこれが、オリンピックや世界選手権のようにメダルが授与されるとしたら、やっぱり総当たりにするんじゃなかったってことになるかもしれない。でも私は、これはこれで``納得のいく''メダルを授与できると思うのだ。
たとえばメダルに重みを、金$\to3$、$銀\to2$、$銅\to1$とつけるとしたら、一般には$3$者に合計$6$の重みのメダルが授与されることになる。だったら、
\begin{center}
\begin{tabular}{c|ccccl}
& A & B & C & D & \\ \hline
A & - & ○ & ○ & ○ & $3$-$0$(金) \\
B & ● & - & ○ & ● & $1$-$2$(銅) \\
C & ● & ● & - & ○ & $1$-$2$(銅) \\
D & ● & ○ & ● & - & $1$-$2$(銅)
\end{tabular}
\hspace{1em}
\begin{tabular}{c|ccccl}
& A & B & C & D & \\ \hline
A & - & ● & ● & ● & $0$-$3$ (なし)\\
B & ○ & - & ● & ○ & $2$-$1$ (銀)\\
C & ○ & ○ & - & ● & $2$-$1$ (銀)\\
D & ○ & ● & ○ & - & $2$-$1$ (銀)
\end{tabular}
\hspace{1em}
\begin{tabular}{c|ccccll}
& A & B & C & D & \\ \hline
A & - & ● & ○ & ○ & $2$-$1$(銀) & (銀) \\
B & ○ & - & ● & ○ & $2$-$1$(金) & (銀) \\
C & ● & ○ & - & ● & $1$-$2$(なし) & (銅) \\
D & ● & ● & ○ & - & $1$-$2$(銅) & (銅)
\end{tabular}
\end{center}
\noindent みたいに与えるのはどうだろう。どれも重みの合計は$6$だ。$1$-$2$や$2$-$1$は、じゃんけんのように``三竦(すく)み''の状態だから、差をつけるのは難しい。$3$番目の表は、当事者どうしの対戦の勝者を上位とすれば(金)(銀)(銅)(なし)となるが、同じ$2$-$1$や$1$-$2$なのだから(銀)(銀)(銅)(銅)でもよいかもしれない。いずれにせよ重みの合計は$6$になる。
だけど、これで納得できる競技者はいるだろうか? 競技者からすれば、金メダルが授与されない\textbf{こともある}って感覚はどうなんだろう。私は『いいね!この方式』という競技者がいてほしいのだけれど。
\end{document}