% 条件付き確率
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\def\baselinestretch{1.33}
\begin{document}
\noindent\textbf{条件付き確率}
$4$チームによる総当たりリーグを考えよう。試合会場が$2$か所あれば同時に$2$試合こなせるので、$3$日で結果が分かる。それで上位$2$チームが決勝へ進出、下位$2$チームが予選敗退となれば、各チーム$3$試合ずつといっても気が抜けない。現実の問題とすると複雑な要素がたくさん絡むので、ここでは$4$チームの力はまったくの互角で、勝敗は勝利の女神の気まぐれに依るところが大きいとしよう。そして、引き分けは考えない。
さて、そうなると試合の進行や試合の結果は以下のようになるだろう。
\begin{quote}
\def\arraystretch{.75}
\begin{tabular}{|c||c|c|c|}\hline
チーム & 1日 & 2日 & 3日\\ \hline\hline
A & (1) & (3) & (5)\\ \hline
B & (1) & (4) & (6)\\ \hline
C & (2) & (3) & (6)\\ \hline
D & (2) & (4) & (5)\\ \hline
\end{tabular}
\hspace{2cm}
\begin{tabular}{|c||c|c|c|}\hline
チーム & 1日 & 2日 & 3日\\ \hline\hline
A & ○ & ○ & ○\\ \hline
B & × & ○ & ○\\ \hline
C & ○ & × & ×\\ \hline
D & × & × & ×\\ \hline
\end{tabular}
\end{quote}
この場合なら、AチームとBチームが決勝へ進むことができる。Bチームは$1$日目に負けたものの、よく盛り返した。一方、Cチームは$1$日目の勝ちを活かすことができなかった。
もちろん試合の結果は他にも色々なパターンがある。(1)から(6)までの試合においてどちらかのチームが勝つので、$1$試合につき$2$通りの勝敗の行方がある。それが$6$試合分だから、$2^6 = 64$通りの結果が生じる。実際に$64$通りを書き出すことは、そんなに難しくないはずだ。
で、その一覧を見ていると、当たり前の話だが$3$勝したチームは間違いなく決勝へ進出だ。$1$勝もできなければ敗退するのも当然のこと。しかし中には、$1$チームが$3$勝して他の$3$チームがすべて$1$勝$2$敗というものが目につくだろう。その逆の、$1$チームが$3$敗して他の$3$チームがすべて$2$勝$1$敗というものもあるはずだ。このようなときは競技規則にも依るだろうが、得点の合計やら何やらの条件を加味して、$2$チームだけが決勝に進むことがほとんどである。すると、決勝に進みたければ、まあ$2$勝はしたいものだと思える。
他に目につくことはないだろうか。$1$日目に勝ったチームは決勝に進む可能性が高いと感じるだろう。また、$1$日目に負けたチームは敗退の可能性が高いと感じるだろう。実際これは正しくて、$1$勝$2$敗または$2$勝$1$敗が$3$チームのとき、決勝進出の確率をどう考えるかにも影響されるが、$1$日目に勝ったチームが決勝に進む確率はおおむね$7$割を超える。逆に、$1$日目に負けたチームが決勝に進む確率は$3$割に満たない。すると、決勝に進みたければ、なんとしても$1$日目に勝ちたいと思える。
今度は$2$日目が終了した時点を考えてみよう。$2$日目で$2$勝のチームは、ほぼ決勝に進めるのが分かるはずだ。``ほぼ''と言ったのは、$3$日目に負けると$2$勝$1$敗の$3$チームが並ぶ可能性があるので、$100$\%決勝に進めるわけじゃないからだ。同様に、$2$日目で$0$勝のチームは、ほぼ絶望だ。では、$2$日目で$1$勝$1$敗のチームの行方はどうだろう? なんと、これが五分五分なのである。それも、勝-負で$1$勝$1$敗であっても、負-勝で$1$勝$1$敗であってもだ。
あれ? $1$日目に負けると決勝進出できるのは$3$割未満の確率じゃなかったっけ?
そう、これこそ条件付き確率だ。「$2$日目に$1$勝$1$敗という条件の下で」あれば、勝つか負けるかの確率は$\displaystyle\frac{1}{2}$と仮定していたので、当然、勝ち負けは五分五分、したがって$2$勝$1$敗になるか$1$勝$2$敗になるかは五分五分なので、決勝進出の可能性も五分五分なのである。
じゃあ、なんで$1$日目に負けると決勝進出がそれほどまでに難しくなるんだろう。それは「$1$日目に$1$敗という条件の下で」あれば、勝つか負けるかの確率は$\displaystyle\frac{1}{2}$と仮定していたので、$2$日目、$3$日目の結果が「勝-勝」「勝-負」「負-勝」「負-負」になるのは、どれも$\displaystyle\frac{1}{4}$だからである。このうち決勝に進出できそうなのは「勝-勝」として$2$勝$1$敗になったときぐらいであり、あとは$1$勝$2$敗か$3$敗にしかならない。そりゃあ、決勝進出が難しいのも当然である。
このように、$4$チームによる総当たりリーグにおいては、$1$日目に負けるという条件は、ことのほか厳しい条件ということが確率計算から導かれるのだ。この例はまさに「はじめが肝心」という戒めにぴったりである。しかし現実的には、$1$日目に負けるということは、実力が劣っている可能性を否定できない。五分五分の力関係でさえ、$1$日目に負けてしまえば決勝進出は難しいのだから、実力が劣っていればなおさらである。
\end{document}