% ハミルトン - ケーリーの定理
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\begin{document}
\noindent\textbf{ハミルトン-ケーリーの定理}
「ハミルトン-ケーリーの定理」は「ケーリー-ハミルトンの定理」とも呼ばれるが、要するに二人の名前が冠された定理である。これは$2$次の正方行列を扱うときに重宝する定理で、$2$次の正方行列を$\displaystyle A = \left(\matrix{a&b \cr c&d}\right)$、単位行列を$E$、零行列を$O$とするとき
\begin{quote}
$A^2-(a+d)A+(ad-bc)E = O$ \quad(※)
\end{quote}
が成り立つというものだ。
おいおい。こんなものなら自分にだって発見できるぞ。これで、後世に名が残るなんてうらやましい限りだ。
一瞬そんな風に思えるほど、たしかに簡単な定理である。でも、本当はそうじゃない。ハミルトン-ケーリーの定理は
\begin{quote}
$A$を$n$次正方行列、$\Phi(\lambda) = \det(\lambda E-A)$をその固有多項式とするとき$\Phi(A) = 0$。
\end{quote}
というものである。ちょっと見ただけでは何のことかさっぱりの定理だが、線型代数学では重要な定理である。
ここで$n = 2$とすれば、定理より
\begin{quote}
$\Phi(\lambda) = \left|\lambda\left(\matrix{1&0 \cr 0&1}\right) -\left(\matrix{a&b \cr c&d}\right)\right| = \left|\matrix{\lambda-a & -b \cr -c & \lambda-d}\right| = \lambda^2-(a+d)\lambda+(ad-bc)$
\end{quote}
となるから、結局$\Phi(A) = 0$であると言っている。$\Phi(A)$は$\lambda$に$A$を代入することなので、めでたく(※)の関係ができあがるのだ。納得したかな?
いくら何でも、ちょいと四則計算をしただけで定理を名乗れるほど、世の中は甘くない。そうそうウマイ話しは転がっていないというこだ。
\end{document}