% 合同式

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\begin{document}

\noindent\textbf{合同式}

整数の性質を考えたり問題解決をするために、よく利用されるものに合同式がある。合同式は等式と扱いが似ているので重宝されるのだが、不慣れだとうまく扱うことができない。合同式は
\begin{quote}
$a \equiv b \pmod{m}$
\end{quote}
という形で書かれる。式は「$a$と$b$は$m$を法として合同である」などと読まれ、それは「$a$を$m$で割った余りは$b$である」と同じ意味である。

$a$を$m$で割った余りが$b$である場合、
\begin{quote}
$a\div m = n$、余り$b$ \quad または \quad $a = m\times n + b$\ \quad(※)
\end{quote}
のように書いてきた身にとって、合同式の書き方は少々とっつきにくい。

しかし、合同式は計算をするには好都合なのである。合同式どうしで加減乗除などができることが理由だ。そして、等式より``ゆるい''ことが少々とっつきにくい原因でもある。たとえば、
\begin{quote}
$17 \equiv 2 \pmod{5}$ \quad$\Leftrightarrow$\quad $17 \equiv -3 \pmod{5}$
\end{quote}
のようなことは正しい。$17\div 5$の余りが$2$であることは確かでも、$17\div 5$の余りが$-3$というのは変な気がする。なぜなら、余りは割る数より小さい非負整数だからだ。とは言え、式の上では(※)において$n = 4$としたときの$17 = 5\times 4 + (-3)$は正しいのである。つまり、余りが割る数を超えたり負の数になるのを認めることが、等式よりゆるいと言えるのである。

このことは、合同式が等式より日常に近いことを意味するのかもしれない。$17$個のお菓子のうちのいくつかを$5$人に同数ずつ配るとき、一人$3$個ずつ配れば$2$個余る。これはとても等式的な分け方だろう。でも、$2$個ずつ配って$7$個余らせたり、$4$個ずつ配ろうとして$3$個足りないことに気づくことは日常的によくある話だ。

小学校の算数が比較的生活に密着している反面、中学・高校の数学が日常で使われないと感じるのは、日常のごく一部を単純化して扱うからだ。日常はそんなに単純な世界じゃない。等式を日常に当てはめることに無理が生じたら、合同式を使ってみよう。等式より複雑かもしれないが、等式より日常寄りである。

\end{document}