% ガウス素数

\documentclass{jsarticle}
\pagestyle{myheadings}
\markright{tmt's math page}
\def\baselinestretch{1.33}

\begin{document}

\noindent\textbf{ガウス素数}

素数とは、$1$と自分自身以外の約数を持たない整数を指す。別の言い方では、他の整数を用いた積に分解できない整数である。大抵は正の整数を考えるので、$2$,~$3$, $5$, $7$, $11$,~$\dots$がそうだ。整数を用いた積にこだわるのには訳がある。整数は数の世界における元素のようなものだからだ。水が水素と酸素の結合であるように、$6$は$2$と$3$が結合(掛け算結合)してできている。そして、$2$や$3$は分解ができない。実にすっきりしている。

ところで、水が水素と酸素の結合であるのはよいとして、結合のしかたをもう少し注意深く観察しておこう。よく見れば---といっても肉眼で分かる程度のものではないけれど---水素と酸素の結合は、実は水素原子と水素原子と酸素原子の結合であることが発覚する。本当は、高精度の顕微鏡で確認することだろうが、化学式という道具を通して水を見れば、H$_2$Oという書式から水素原子二つの結合が見える。したがって水は、$水 = (水素)(酸素)$ではなく$水 = (水素原子\cdot 水素原子)(酸素原子)$なのである。

さて、持って回った言い方をしたが、もう一度$6$を注意深く観察してみよう。その際に、複素平面という道具を使い、複素数のレベルまで数を掘り下げておく。すると$6$は$6 = 2\cdot3 = (1+i)(1-i)\cdot3$と分解できることになる。つまり、$2$は実数レベルでは素数だが、複素数レベルでは素数とは言えないことになる。

複素数の世界での素数の扱いをきちんとしておこう。まず、複素平面における\textbf{格子点}を考える。複素平面上の格子点とは、実数軸・虚数軸の整数目盛が交差する点である。要するに、複素平面に方眼のます目を描いたものを想像してもらいたい。そこで、格子点にある数をガウス整数と呼ぶ。数学的に言うなら、整数$a$, $b$を用いて$a+bi$で表される数のことである。$1+2i$や$2-i$などがガウス整数にあたる。もちろん$2$や$3$も$b = 0$の場合にあたるのでガウス整数だ。

さて、(普通の整数も含めて)ガウス整数でも、他のガウス整数を用いた積に分解できる場合がある。たとえば、$2 = (1+i)(1-i)$や$1+3i = (1+i)(2+i)$がそれである。一方で、どうにもガウス整数の積にできないものもある。たとえば、$3$や$1+2i$がそれである。このように、どうにもガウス整数の積にできないものをガウス素数と呼ぶ。

実数整数の場合、素数は不規則に現れるが、小さい順に書き並べることはできる。しかし、ガウス整数は複素数だから、小さい順という概念はない。そのため、順に書き並べるうまい方法がないのが悩ましい。そこで、ガウス素数は数を書き並べる方法でなく、複素平面の格子点を用いて表示することが多い。すると、ガウス素数は複素平面に散らばることになるが、当然散らばり方に規則はない。だが、ガウス素数が作る模様は興味深い。

そこで、ガウス素数が作る模様(ガウスのテーブルクロス)を\verb|Excel VBA|で描いてみた。定数\verb|RADIUS|の値を変えてマクロを実行してもらいたい。

\end{document}