% ガウス平面

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\begin{document}

\noindent\textbf{ガウス平面}

ガウス平面は\textbf{複素平面(complex plane)}のことである。ふつう、数を図示するとなると数直線を用いるのが最適である。数直線は何のことはない、目盛のついた直線だ。精度を別にすれば数直線上にはすべての実数を表示できる。

大抵の用事は実数で済ますことができるので、実数以外の数があることにはなかなか気づかない。方程式$x^2 = -4$は解を持たない。しかし、それは実数の範囲の話であって、数の範囲を広げればその限りではない。虚数単位$i$を用いれば先の解は$x = \pm2i$である。$i$は$2$乗して$-1$となる単位と定めてあるので、確かに$x = \pm2i$の両辺を$2$乗すると$x^2 = -4$となる。

では、$2i$という数はどこにあるのだろう。これが数直線上にないことは明白である。よって、虚数単位をとりあえず認めたとしても、それが実際に存在すると考えるのは別のことなのだ。つまり、方程式は一応解けた。しかし、方程式は仮想的に解いたのであって、解が何を表しているかは、また別の問題なのである。

虚数単位が導入された時代は、負の数ですら十分に受け入れられていたわけではなかったらしい。ましてや、仮想的な数である。この得体の知れない数にどれほどの価値があるか分かろうはずもなかったに違いない。

しかし、さすがにガウスである。数は、直線上のあちこちに散っているだけでなく、平面上のあらゆるところに散っていると考えたのだ。そのためには、実数直線と虚数直線の$2$本の数直線が必要となる。$x$軸と$y$軸が直角に交差するように、実数直線と虚数直線を直角に交差させると複素平面の出来上がりだ。ここでは、座標的に表現された$(0,~2)$が$2i$を表す。では、$(3,~4)$なら何か。それは$3+4i$なる複素数である。一般に、複素数$a+bi$は複素平面上の$(a,~b)$の位置にある。複素数は、どうしても実数$a$と虚数$bi$を複合させて表すしかない。そのために複素数は、実数直線と虚数直線を複合させた平面でしか表し得ないのである。ガウス平面の本質は複合平面である。

一方で、ガウス平面は複素数を表す平面であることから、複素数平面と言うこともある。現代的な意味としては、これはこれでふさわしい呼び名であろう。ガウスはドイツ人だから、complex plane という英語を使ったと思えないけれど、直訳すれば複合平面だ。訳語が複素数平面なら、原語は complex numer plane であったはずである。もっとも、こんなことを言い出したら複素数は複合数と言わなくてはならないことになる。あまりつつくのはやめておこう。

ところで、ガウス平面はただ単に複素数を図示するだけにとどまらない。複素数の演算(足す・引く・掛ける・割る)を視覚的に表す最強の道具である。複素数には偏角と呼ばれる要素がある。ガウス平面を作ったから偏角が見えたのか、偏角に気づいたからガウス平面を作れたのか、それは当のガウスに聞くよりないが、ガウス平面のおかげで複素数の体系が完結している体系であることがよく分かるのだ。

\end{document}