% フィボナッチ数列
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\def\baselinestretch{1.33}
\begin{document}
\noindent\textbf{フィボナッチ数列}
フィボナッチ数列というのは$1$,~$1$から始まる数列で、次の項は直前$2$項の和によって作られる。漸化式などという難しい言葉を使えば$a_n = a_{n-1}+a_{n-2}$で定義される数列である。しかし、こう書くより
\begin{quote}
$1$, $1$, $2$, $3$, $5$, $8$, $13$, $21$, $34$, $55$, $\dots$
\end{quote}
と書く方がはるかに分かりやすい。
大体において数列というものはどことなく人工的である。フィボナッチ数列にしても「直前$2$項の和」という機械的な操作で作られている。$1$,~$1$から始まることも機械的な印象を増幅しているようだ。ならば、どうせ人工的ついでに、$1$,~$1$からではなく、たとえば$4$,~$6$あたりで始めるとどうなるだろう。それは
\begin{quote}
$4$, $6$, $10$, $16$, $26$, $42$, $68$, $110$, $178$, $\dots$
\end{quote}
となって、少々趣(おもむき)の違う数列が出来上がる。負の数が入ってもよければ
\begin{quote}
$4$, $-3$, $1$, $-2$, $-1$, $-3$, $-4$, $-7$, $-11$, $-18$, $\dots$
\end{quote}
のように始めれば、これはこれで立派に数列になっている。
ただ、このように見ていっても特別面白いことはない。なぜなら、勝手な数列が自由きままにできあがっているだけなのだから。でも、注意深く観察すると結構面白いことが発見できるものだ。それは、数列が先へ先へと延びるにつれて、何となく$5$割増し程度の数が生成されていくように感じるだろう。
その感覚は正しい。正確には、新たにできる数と直前の数の比が$1.5$倍程度ということである。実際、$55/34 \approx 1.6$、$178/110 \approx 1.6$、$(-18)/(-11) \approx 1.6$である。結論を言おう。新たにできる数と直前の数の比はおよそ$1.618$で、これはどんな初期値から始めても変わらない。しかも、この値は黄金比と呼ばれ、実に不思議な性質を持っているのだ。
黄金比は、よく古代の建築物や彫刻に使われているとされている。主観的なものがあるかもしれないが、多分に美しい比であるとも言われている。こう書くと、いかにも黄金比は人工的な印象を植え付けてしまうのだが、なぜか自然界に黄金比を観察することができるという。木の芽の出かたであるとか、ひまわりのたねのつきかたであるとか、生物の増えかたであるとか、色々と観察できるのだそうだ。こうなると、フィボナッチ数列がこじつけ的数列とは思えなくなる。それに、直前の$2$数の和で作られる数列は、始まりが何であっても黄金比に収束していく。これは、始まりが少々ずれても、安定した値に収束することを意味する。何だか人の意志を超えた力が働いているようでもある。
\end{document}