% フェルマーの素数

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\begin{document}

\noindent\textbf{フェルマーの素数}

フェルマーの素数は、実際にはフェルマーの数と呼ぶ方がふさわしいかもしれない。というのは、はじめにフェルマーが考えたのは$2^{2^n}+1$という形の数で、$n = 1$,~$2$, $3$, $4$,~$\dots$を代入すると、$5$,~$17$, $257$, $65537$,~$\dots$のように、すぐにとてつもない大きさの数になる。ここまではすべて素数であるため、フルマーはこの先も素数だけが現れるのではないかと考えた。だが、次の数は素数ではない。フェルマーの考えた$2^{2^n}+1$がすべて素数になるなら、$2^{2^n}+1$をフェルマーの素数と呼べるが、そうでないのだから、これは単にフェルマーの数である。

それでも、ここの見出しがフェルマーの素数であるのは、この先$2^{2^n}+1$が素数になることがあるかが興味の対象になっているからだ。いまのところ、$65537$の先にどれほどの素数があるかよく分からない。

そりゃあ、そうだろう。$65537$の次に候補に挙がるのは、$n = 5$を代入した$4294967297$である。これは実際$641\times6700417$であることが知られているが、計算機のない時代に$641$で割れることに気づくのは難しいはずだ。$4294967297$を$3$から順に素数で割っていくとしたら、$641$までに$60$個の素数を試さなくてはならない。まあ、候補のフェルマーの数は高々$10$桁だから、割り算はそれほど大変でもない。一日$5$個程度は調べられるだろう。ならば$2$週間ほどで解決だ。

でも、実際にそんことを誰が試すだろうか。いまでこそ、$4294967297$は合成数であることが知られているけれど、当時は素数かもしれないという憶測の下にあった。もし、本当に$4294967297$が素数なら、そのことを確認するために$\sqrt{4294967297} \approx 65536$までの数で割り算をしなくてはならない。そうなると何千回の割り算をするはめになるのやら。

おそらく、$4294967297 = 641\times(何がし)$に気づいたオイラーは、そんなことはしていないと思う。フェルマーの数の性質に則って調査したであろうことは想像できる。

もちろん、いつでもフェルマー数の性質に則って調査すれば、合成数かどうか判断できるわけではないだろう。それに、現代はコンピュータの性能もかなり上がっているので、コンピュータによる調査も進んでいるようだ。しかし、$2^{2^n}+1$はコンピュータ泣かせの数である。因数分解が思いのほか難儀する場合が多いからだ。

一方で、フェルマーの小定理に登場する$2^{p-1}-1$の形の数は、行き届いた研究がされている。先に話題にした$2^{2^n}+1$とちょっと違うことに注意。形の上では$+1$と$-1$のわずかの差であるが、ここにはとてつもなく大きな隔たりがあるのだ。見た目が似ているかからと言って、中身まで似ているわけではないという教訓に使えるかもしれない。

\end{document}