% 同等分割合同

\documentclass[dvipdfmx]{jsarticle}
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\markright{tmt's math page}
\def\baselinestretch{1.33}

\usepackage{tikz}

\begin{document}

\noindent\textbf{同等分割合同}

数学の世界は現実で目にする世界とかけ離れている。よい例が
\[
1 = 3\times\frac{1}{3} = 3\times0.333\cdots = 0.999\cdots
\]
で、左側で目にする$1$と右側で目にする$0.999\cdots$は違うのに、数学の世界では完璧に等しいということだ。重ねていうけど\textgt{本当に}等しいんだからね。

まあ、数学の世界と現実が完璧に一致しなくてもよいだろう。現実と数学ってそういうものだから。でも、数学の世界の中だけで考えても変なことが起こる場合がある。

たとえば$1\times1$の正方形があるとする。この正方形を一辺の中点から垂直に延びる線で等分すると、$0.5\times1$の\textgt{合同}な$2$個の長方形が作られる。でもこの長方形を``分けて''考えると少しマズいことが起こる。

\begin{center}
\begin{tikzpicture}[scale=2.5]
\draw[thick] (0, 0) -- (1, 0) -- (1, 1) -- (0, 1) -- cycle;
\draw (0.5, 0) -- (0.5, 1);
%
\begin{scope}[shift={(2.5, 0)}]
\draw[thick] (0.5, 0) -- (0, 0) -- (0, 1) -- (0.5, 1);
\draw[dashed] (0.5, 0) -- (0.5, 1);
\end{scope}
%%
\begin{scope}[shift={(2.6, 0)}]
\draw[thick] (0.5, 0) -- (1, 0) -- (1, 1) -- (0.5, 1) -- cycle;
\end{scope}
\end{tikzpicture}
\end{center}

図形は点の集合であることから、分割のための線分---これも点の集合---で分けるということは、線分は分けた長方形のいずれか一方に分かれるということである。すなわち、もう一方の長方形の切り口には線分はない。二つの図形が合同というのは、平行移動・回転・反転で重ね合わせたとき、ピッタリ重なることだ。であれば、これは線分一本分、重なってないことになる。

だが、線分は長さはあって幅はないのだから、どちらかの長方形がはみ出ているということもない。ならばピッタリ重なっているのだろうか。うーむ、このビミョーな状況を合同と言ってよいのかよくないのか? ということで、分割した場合の合同を\textbf{同等分割合同}と呼ぶのである。

現実世界で正方形をハサミで切ったら、切り口は両方の長方形に間違いなく存在している。原子レベルで考えても、実際そうだ。数学の世界でそうならないのは、点が原子レベルとは比べものにならないからだ。なにしろ点は、位置はあって大きさはないのだから。そりゃあ、頭の中でしか存在できないよね。

\end{document}