% カバリエリの定理

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\begin{document}

\noindent\textbf{カバリエリの定理}

まず、この定理がどんなものか説明しよう。

\begin{quote}
\bfseries 同じ高さをもつ二つの立体があるとする。もし、底面に平行な平面でこれらの立体を切ったとき、(底面の面積も含めて)切り口の面積がすべて等しければ、二つの立体の体積は等しい。
\end{quote}

これだけのことである。図を描いて説明してしまえば簡単なことだが、少し文章で補足してみよう。二つの立体は、まっすぐ上に伸びている必要はない。斜めに伸びていても歪みながら伸びていてもよい。また、角柱のようなものでも角錐のようなものでも、いや、とにかく立体なら何でもよい。そして形が違う二つの立体を並べて、真横にスパッと包丁を入れる。このとき、どこで切っても同じ面積の切り口になるならば、二つの立体は同じ体積であると言っている。

当たり前じゃん。おそらくこんな反応が返ってくるだろう。しかし、これは定理と呼ばれていることからわかるだろうが、きちんと証明されていることがらである。証明と言っても、どのように手をつけてよいかは素人には分からない。少なくとも初等数学の範疇ではない。証明は高等数学の守備範囲になる。

断っておくが、高等数学というのは、高等学校で学ぶ数学のことではない。高等学校で学ぶ数学は初等数学である。明確な線引きがされているわけではないけれど、大学の初年度あたりで使う数学までが初等数学、その先の数学が高等数学だ。

日常では当たり前に見えても、数学の世界では当たり前が崩されることはよくある。三角形の内角の和が$180$\textdegree という常識は、幾何学の根底が違えば常識でなくなる。つまり、カバリエリの定理は、体積の概念の根底を問うもので、その根底が揺るぎないものであることを保証している。

それゆえ、カバリエリの``原理''と呼ぶ人もいる。原理は原則を意味するので、みんなで原則を認めておけば証明の必要はない。初等数学程度なら、それでかまわないだろう。だが、何にでも白黒をはっきり付けなくては気が済まない人たちがいる。数学者はもちろんこれにあたる。私たちにとってはカバリエリの原理であっても、数学者にはカバリエリの定理なのだ。

\end{document}