% 暗証番号

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\begin{document}

\noindent\textbf{暗証番号}

現代では、サービスを利用するために暗証番号が必要になることが多い。暗証番号は性質上、自分は覚えやすいが他人は推測しにくいものが望ましい(だから``暗唱番号''でもある)。したがって、誕生日や電話番号などは他人に推測されやすいので不向きだ。と言って、不規則な数字記号の羅列では自分が覚えられない。どこかにメモすれば忘れたときに役立つが、それでは``暗唱番号''ではない。

昔なら$4$桁の数字列で十分暗証番号になったが、今や桁数を増やしたり、アルファベット/記号を含むことが必須だったりする。モノによっては、用途別に$4$桁の番号を$4$種類---なんと$16$桁分だ!---要求している。ふざけんな!

どうしたらよいのだろう? でも悩むことなどない。日本人に有利なモノがある。『俳句』だ。俳句は原則$17$文字で綴られるから、電話キーと合わせることで暗証番号にできる。電話キーと合わせるというのは、電話キーには$1$〜$0$までの各キーにひらがなやアルファベットが割り振られているだろう。こんな風に。

\begin{center}
\fbox{$1\ あ\atop\ .@\ $} \fbox{$2\ か\atop\scriptsize\textrm{ABC}$} \fbox{$3\ さ\atop\scriptsize\textrm{DEF}$} \fbox{$4\ た\atop\scriptsize\textrm{GHI}$} \fbox{$5\ な\atop\scriptsize\textrm{JKL}$} \fbox{$6\ は\atop\tiny\textrm{MNO}$} \fbox{$7\ ま\atop\tiny\textrm{PQRS}$} \fbox{$8\ や\atop\scriptsize\textrm{TUV}$} \fbox{$9\ ら\atop\tiny\textrm{WXYZ}$} \fbox{$0\ わ\atop{}$}
\end{center}

作りモノの例で恐縮だが、JP-BANKという銀行がフィリーダイヤルを$0120$-$572265$にすれば、電話のキーから``0120-J-P-B-A-N-K''と探してプッシュすることでつながる仕組みだ。数字の列より覚えやすいし、語呂合わせのような紛らわしさが生じない。日本語ならABC$\dots$の代わりに、あ行か行さ行$\dots$と探してプッシュすればよい。たとえば
\begin{center}
$ふ\atop 6$ $る\atop 9$ $い\atop 1$ $け\atop 2$ $や\atop 8$ $か\atop 2$ $わ\atop 0$ $ず\atop 3$ $と\atop 4$ $び\atop 6$ $こ\atop 2$ $む\atop 7$ $み\atop 7$ $ず\atop 3$ $の\atop 5$ $お\atop 1$
\end{center}
のような具合に。これで$16$桁の暗証番号の出来上がりだ。

これなら覚えられるだろ? でも、単に有名な句では推測されてしまうと思えば、たとえばいくつかの俳句を混ぜて『かきくえば かわずとびこむ もがみがわ』にするとか、好きな歌の一部フレーズを抜いたり、アニメ/漫画のお気に入りのセリフを借用したりすれば誰にもわからないだろう。

もっとも、スマートフォンの画面に表示される電話キーが数字だけのものなら、この手は使えないんだけど。それでも工夫すればなんとかなるのではないだろうか。

すると先に挙げた、用途別に$4$桁の番号を$4$種類要求している機関が相手でも問題ない。$4$桁ずつ区切って使えばよいのだ。しかし、こちらが$16$桁を覚えるのは問題なくても、相手機関も工夫してもらいたい。

というのは、○○用の暗証番号($4$桁)、△△用の暗証番号($4$桁)、◇◇用の暗証番号($4$桁)、□□用の暗証番号($4$桁)を設定して、いざ『△△用の暗証番号を入力してください』などと言われた場合、△△用の暗証番号が$16$桁の中のどの部分か忘れてしまう可能性があるからだ。機関の職員ならば$4$種類の用途を区別できても、顧客はいちいちそんな区別を覚えているわけがないじゃないか。

そこで、``○○用の暗証番号''と呼ぶのではなく、``1.○○用の暗証番号''、``2.△△用の暗証番号''、$\dots$のように番号と共に呼び、『2.△△用の暗証番号を入力してください』と言ってくれれば、『お、ここは覚えた$16$桁のうち、$2$番目のブロックの$4$桁だな』とわかる。そうなればスムースに暗証番号を入力できるというものだ。

暗証番号は単に複雑ならよいというものではない。そんな意識だから、暗証番号は覚えなくても手持ちの機器に覚え(記録)させればよい、などという考えになるのだ。たしかに使い勝手はよいけれど『なんだかなあ』と思えるのだ。

\end{document}