% 2=1 ?
\documentclass{jsarticle}
\pagestyle{myheadings}
\markright{tmt's math page}
\def\baselinestretch{1.33}
\begin{document}
\noindent\textbf{2=1?}
うっかりした計算をすると時に無意味な結果が導かれることがある。$a = b$からはじめて$2 = 1$という結果を導いてみよう。
等式は両辺に同じものを足しても等式としての性質を保つので、$a = b$の両辺に$a$を足すと
\begin{quote}
$\begin{array}{rcl}
a+a & = & b+a\\
2a & = & a+b
\end{array}$
\end{quote}
である。もちろん両辺から同じものを引いてもかまわないので、さらに両辺から$2b$を引けば
\begin{quote}
$\begin{array}{rcl}
2a-2b & = & a+b-2b\\
2a-2b & = & a-b
\end{array}$
\end{quote}
となる。この左辺に分配法則を適用することで
\begin{quote}
$2(a-b) = a-b$ \quad(△)
\end{quote}
となる。等式は両辺を同じもので割ってもかまわないので、両辺を$(a-b)$で割ると
\begin{quote}
$2 = 1$ \quad(▲)
\end{quote}
が得られてしまった。
明らかにこの結果はおかしい。等式の性質を間違って使った場面はないのに、なぜこうなったのか。その原因は(△)から(▲)への変形にある。たしかに等式の両辺を同じ数で割ることはできるが、$0$で割ることはいかなる場合にもできないはずだ。この計算は$a = b$の仮定ではじめたから、$a-b$は0である。$0$で割るという無意味な計算をしたために、無意味な結果を導いてしまったのだ。
誰だって$1 = 1$の``左辺にだけ''$1$を加えて$2 = 1$とすることは無意味だと気付くだろう。しかし文字式で計算をしていると、気付かずにうっかり無意味なことをやることもある。文字式においては、$0$で割ることに神経質になるのは当然のことなのだ。
\end{document}