% 1=-1 ?

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\markright{tmt's math page}
\def\baselinestretch{1.33}

\begin{document}

\noindent\textbf{1=-1?}

虚数単位$i$の存在を知ると$i$がかかえる矛盾のようなものに出会うかもしれない。$i$は$2$乗すると$-1$になる単位だから
\begin{quote}
$\sqrt{-16} = 4i$
\end{quote}
といった計算が成り立つ。であれば
\begin{quote}
$\begin{array}{rcl}
1 & = & \sqrt{1} \\
& = & \sqrt{(-1)\cdot (-1)}\ \quad(△)\\
& = & \sqrt{-1}\sqrt{-1}\ \quad(▲)\\
& = & i\cdot i \\
& = & -1
\end{array}$
\end{quote}
としてかまわないはずだ。しかし明らかにこれはおかしい。これでは虚数単位を導入しても矛盾を生じてしまうので、そもそも虚数という数を考えること自体おかしいとなりかねない。原因はどこにあるのだろうか。

このおかしな結果を導くことになったところは、(△)から(▲)へ移るところだ。私たちが何気なく使っている性質
\begin{quote}
$\sqrt{ab} = \sqrt{a}\sqrt{b}$ \quad(※)
\end{quote}
は虚数単位がからんでくると成り立たない。

そもそも性質(※)は、「($0$以外の)どんな数でも$2$乗すれば必ず正の数になる」ことが前提になっている。そして記号「$\sqrt{a}$」は、「$2$乗して$a$になる(もとの)数」の意味合いで使われている。つまり$\sqrt{a}$の中にある数$a$は正の数(または$0$)しか想定していないのである。だから当然(※)は $a$,~$b > 0$ であるときに限って成り立つ性質なのである。$\sqrt{1}$は$\sqrt{(-1)\cdot(-1)}$まではよいが、$-1$は正の数ではないので(※)の性質は使えない。

虚数単位$i$の導入に関しては、$a > 0$について
\begin{quote}
$\sqrt{-a} = \sqrt{a}i$
\end{quote}
と書くことだけである。

\end{document}