% i^i
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\markright{tmt's math page}
\def\baselinestretch{1.33}
\begin{document}
\noindent\textbf{$i^i$}
虚数単位$i$は謎めいている。なにしろ$i^2 = -1$は、義務教育の思考範囲からはみ出ているから。だから義務教育ではない高校で扱うのだろうが、今や高校は\textgt{準義務}教育みたいなものである。ま、そのことはどうでもいいか。
そもそも数学は完璧に人間の思考の産物だから、漫画やアニメ同様、その世界で何が起ころうとも辻褄(つじつま)さえ合えば問題ないのだ。だから数学には、常識の範囲で片がつくものもあれば非常識と思えるものもある。やはり漫画やアニメと同じだ。で、$i$はおそらく非常識側にいる。
義務教育の常識は$1+2 = 3$みたいなものだろうか。でも、義務教育をはみ出たら
\[
e^{i\theta} = \cos\theta + i\sin\theta\quad(※)
\]
は(数学の世界では)常識になるのだ。``$i$乗''って何? $\cos\theta$や$\sin\theta$って \begin{picture}(40, 10) \qbezier(0, 0)(10, 10)(20, 0)\qbezier(20, 0)(30, -10)(40, 0) \end{picture} みたいなやつでしょ。で、$e^{(なにがし)}$って \begin{picture}(20, 20) \qbezier(0, 0)(15, 0)(20, 20) \end{picture} みたいなやつでしょ。なんで、$i$を掛けて足せば等しくなるの?って思うのは自然な反応だろう。謎である。
でも、その関係を認めると素晴らしい世界に浸(ひた)れるのだ。$\theta = \pi/2$を代入してみよう。
\[
e^{\frac{\pi}{2}i} = \cos\frac{\pi}{2} + i\sin\frac{\pi}{2} = i\quad(☆)
\]
となる。そこで両辺の$i$乗だ。$i$乗にどういう意味があるかということはひとまず置いておこう。何しろ数学の世界での常識なのだ。すると左辺は
\[
(e^{\frac{\pi}{2}i})^i = e^{\frac{\pi}{2}i\times i} = e^{-\frac{\pi}{2}} \approx \frac{1}{e^{3.141592/2}} = 0.207879576
\]
であるから、これが右辺の$i^i$に等しくなる。つまり$i^i = 0.207879576$ということである。ちなにみ$e = 2.71828\cdots$というのも、数学の世界では$\pi = 3.141592\cdots$と同じぐらい常識だ。
なんだかなあ、と思うだろうか。虚数という現実離れ?した数を虚数乗するという``離れ技''をやってのけると、単なる実数値だというのは受け入れ難いかもしれない。でも、数学の世界の常識なんだよ。漫画やアニメの常識が自分の身の回りで起こらないように、数学の世界の常識は身の回りで目にすることはない。頭の中で見るものなのだ。
ついでに付け加えると、先の関係式(※)に$\theta = \pi$を代入すると$e^{\pi i} = -1$となる。(☆)において$e^{\frac{\pi}{2}i} = i$だったのだから、両辺を$2$乗した$(e^{\frac{\pi}{2}i})^2 = i^2$は$e^{\pi i} = -1$となるから、辻褄は合っている。だから、やっぱり問題ないのである。
\end{document}