% まともの時間とお空の時間
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\section*{■まともの時間とお空の時間■}
相対性理論のことなんか何にも分かっちゃいないマヌケのヨタ話でも聞いてもらおう。
現在ではセシウムの振動数をもとに$1$秒が定義されてるようだが、要するに超精密な時間計測が可能になっている、とのことだ(←言葉づかいがいかにも無知であることを示しているね)。つまりセシウム原子がきっちり``何十なん億 何たらかんたら万 何だかんだ回''振動して``$1$秒''になるというのだ。そんなに正確に測って何かいいことがあるの?
それが、あるのだ。相対性理論によると、重力が強いところほど時間がゆっくり流れるらしい。ブラックホールの近くなんて、きっとスローモーションの世界なんだろう。でも、ブラックホール付近まで行けるわけないので、そのことを確かめる術(すべ)はない。ところで、地上と富士山頂では地上の方が重力がわずかに強い。そのため、地上と富士山頂では時間の進みがわずかに違うのだろうが、もちろん普通の時計では差を認識できない。でも、セシウム時計を上回る超高精度の原子時計なら差が分かるというのだ。確かめる術があった。
で、実際は人工衛星なんかに原子時計を積んで測定して、相対性理論の実証をするわけだ。すると確かに、人工衛星が刻む時間(お空の時間)は地上で刻む時間(まともの時間)より``何ちゃらナノ秒''ほど早いらしい。てことは、一生人工衛星で過ごすと地上で一生を終えるより短命ってことですか? だったら逆に、ブラックホール付近で生活``できれば''寿命が延びるってことだよね。
いいえ、違います。ブラックホール付近で生活できても寿命は延びない。時間が伸びるだけである。先に指摘した通り、ブラックホール付近はスローモーションの世界なのだ。
そもそも時間ってなんだ? 現在の定義では、それはセシウム原子の振動回数である。つまり、セシウム原子の振動回数が同じときに限り、同じ時間が経過することになる。
\newcommand\watches[2]{
\draw (-3, 0) circle (0.5); \draw[->, thick] (-3, 0) -- (-3, 0.5);
\fill (-2.5, -0.5) circle (0.1);
\foreach \x in {-2.5, -2, -1.5, -1, -0.5} \draw (\x, -0.5) -- (\x+0.25, 0) -- (\x+0.5, -0.5);
\foreach \x in {0, 0.5, 1, 1.5, 2} \draw[shift={(#2, 0)}] (\x, -0.5) -- (\x+0.25, 0) -- (\x+0.5, -0.5);
\fill (#1, -0.5) circle (0.1);
\draw (3, 0) circle (0.5); \draw[->, thick] (3, 0) -- (3.5, 0);
}
%
\begin{center}
\begin{tikzpicture}[scale=0.85]
\begin{scope}[shift={(-4.5, 0)}]
\draw (0, 1) node {\fbox{地上}};
\watches{2.5}{0}
\end{scope}
%
\begin{scope}[shift={(4.5, 0)}]
\draw (0, 1) node {\fbox{ブラックホール付近}};
\watches{2.5}{0}
\end{scope}
\end{tikzpicture}
\end{center}
だから、地上とブラックホール付近において、セシウム原子が同じ回数振動したときに同じ時間が経過した、と捉えるのが時間の定義からして正しいのだろう。でも、体感的にそう捉えていないのは確かだ。ブラックホール付近では動きがスローモーションなのだから、地上と同じ回数の運動を行うには時間がかかるはずだ。地上での$10$回の屈伸運動がブラックホール付近での$10$回の屈伸運動と同じ時間かかるはずがない。同じ時間ならブラックホール付近の回数の方が少ない。たとえば、地上で$10$秒間に$10$回の屈伸ができても、ブラックホール付近では$10$秒間に$5$回しかできないように。これが体感での捉え方だろう。
体感というのはすなわち、時間は地上で測定することが基準になっていることによる。地上の感覚が宇宙全体に適用されているのだ。
\begin{center}
\begin{tikzpicture}[scale=0.85]
\begin{scope}[shift={(-4.5, 0)}]
\draw (0, 1) node {\fbox{地上}};
\watches{2.5}{0}
\end{scope}
%
\begin{scope}[shift={(4.5, 0)}]
\draw (0, 1) node {\fbox{ブラックホール付近}};
\watches{0}{-2.5}
\end{scope}
\end{tikzpicture}
\end{center}
その結果、同じ時間であるにもかかわらずブラックホール付近での時間の進みが遅いように思える。本当は動作が遅いだけなのにさ。動作が遅いというのは、たとえば地上で$10$億回呼吸しているとき、ブラックホール付近では$5$億回しかできないということだ。$30$億回呼吸したとき寿命が尽きるとしたら、地上でもブラックホール付近でも$30$億回呼吸をして一生を終えることになる。だから寿命が伸びてるわけじゃない。
もし、地球が突然ブラックホール付近にすっ飛んだとしても、私たちの生活感覚はまったく変わらないだろう(もちろん強大な重力で押しつぶされることは無視している)。呼吸$30$億回分の人生は同じだ。じゃあ、何が違うかって? それは、ブラックホール付近にすっ飛んだ地球人を火星人が見たとき、「あいつらやけにゆっくり呼吸してんな」と思うことじゃないだろうか。逆に、地球人は動作が遅くなったことに気づかず、ある日火星に設置した時計を見て、「おい、いつの間にこんな時間になったの?」って驚くはずだ。酔っ払って動作が鈍くなったおっさんが、「もうこんな時間か、終電すぎてらあ」ってなるようにね。動作が鈍ると時間は早く進むように感じるものだ。だから歳をとると時間が早い。
子どもの頃に、書店にある「相対性\quad 理論」の背表紙を見て「相対\quad 性理論」のすごい内容を想像したアホの言うことである。真に受けないように。
\end{document}