% ちょっとの差が大きな差に!

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\section*{■ちょっとの差が大きな差に!■}

よく「ちょっとしか違わないはずなんだがなあ。どこで差がついたんだろう」などと言いながら、自分と他人との力の差をいぶかることがあるだろう。私だって、そう感じることは多々ある。しかし、よくよく考えれば、わずかの差が後に大きな差となって跳ね返ってくることが分かるのだ。ここでは、モデルケースをもとに示すことにしよう。

まず、人の成長をモデル化しよう。成長とは、体格的なものでも、体力や運動機能でも、勉強の出来具合いでも、何でもよい。昨日より今日のほうが進歩したと思えるものなら何でもけっこうだ。それでは、人の成長をどう考えたらよいのだろう。まったくの独断だが、次のように考えることにする。
\begin{center}
\bfseries 成長中の人は、現状の$5$\%の上乗せを目論んでも、そのうちの$1$\%が身につくだけである$\dots$(※)
\end{center}

具体的には、体重$20$kgの子供が成長を望んで、一日に$1$kg---これは体重の$5$\%だ---の食事や飲み物を採っても、結局は$10$g---これは$1$kgの$1$\%だ---しか体重が増えないことを意味する。単純計算をすれば、一年後には$10(\textrm{g})\times365 = 3.65(\textrm{kg})$ の体重増になっている、ということだ。何となく現実的だろう。

別の例では、いま$2{,}000$語の英単語を記憶している中学生が勉強のため、一日に$100$語の単語を暗記しようと努力しても、結局は$1$語しか記憶できないことを意味する。単純に考えて、一年後には$365$語だけ語彙が増える、ということだ。う〜む、微妙だがそれ程的外れではなさそうだ。受験生なら、(※)を「$3$\%の上乗せで$3$\%が身につく」とでも読み替えたらいいかもしれない。実際、小学校低学年の子と中学生では、蓄積量や成長の度合いに違いがあるだろうから、数値に多少の変化はあって当然だろう。

しかし(※)は、あくまでも計算しやすいモデルを用意したと思ってもらいたい。さて、さっきの計算は単純計算である。正確に考えるなら、(※)の成長率が続けば、一年後は$(1+5/10000)^{365}$の成長が見込めるであろう。この値は約$1.200$であるから、$20$kgの体重の子は$20(\textrm{kg})\times1.2 = 24(\textrm{kg})$ になっているはずだ。

さあ、問題はここからだ。(※)において、努力の出し惜しみをして$4$\%の上乗せしかしなかったとしよう。(体重の例では努力のしようがないので、英単語の例だと思ってほしい。)すると、一年後は$(1+4/10000)^{365}$の成長が見込めるであろう。この値は約$1.157$である。努力の出し惜しみの結果、$1.157/1.200 = 96(\textrm{\%})$の成長に止まってしまっている。大したことないと思わないでほしい。このペースで$10$年を過ごすと、何と$69$\%の成長に止まってしまうのだ。

な〜に、どこかの時期に多めの上乗せを目論めばもとは取れるさ、などと考えないように。人は現状の$50$\%の上乗せ---$20$kgの体重の子供を例にとれば、一日に$10$kgも食事しなくてはならない---なんて目論めないからだ。その意味でも(※)のモデルは適度な数値だろう。

結局、努力の手抜きをしていると、毎日適切な努力を積み重ねた人に相当水をあけられてしまうわけである。要するに、持続的な手抜きが後悔のもとになるということだ。

\end{document}