% 3枚の扉

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\begin{document}

\section*{■$3$枚の扉■}

この話は、どこかのTV番組で使われていたものらしいと思う(←って、正しい日本語か?)。

話はこうだ。クイズで優勝した人が、豪華賞品をもらえるチャンスを得られる。優勝者は3枚の扉のうち、どれか一つを選び、扉の向こうの商品がもらえるというものである。3枚の扉のうち豪華賞品---それは海外旅行のチケットだったり、自動車だったり---は一つだけで、あとの二つはもらっても迷惑なだけの品---それは本物のラクダだったり巨大な庭石だったり---が隠れている。

さて、優勝者が一つの扉を選ぶと、司会者は選ばれなかった扉の一つ---それは必ず迷惑な品が隠れている扉---を開け、「さあ、今回のすてきな品物は---ラクダでーす」と言って迷惑な品物が何であったかを紹介する手はずだ。

このとき、優勝者であるあなたは次の選択ができる。

\begin{itemize}
\item はじめに選んだ扉を開けてもらい、その品物を受け取る
\item 開いてないもう一方の扉に乗り換えて、その品物を受け取る
\end{itemize}

さあ、優勝者であるあなたは、どちらの行動を直感的にとる?

ちょっと考えると、確率は五分五分である。なぜなら、好ましくない品物のうちの一つは開けられていて、閉じている扉の向こうには、好ましい品物と好ましくない品物がそれぞれあるからだ。どう考えたって確率$1/2$じゃん。いまさら扉を乗り換えて、もし外してしまったら$\dots$。そんな、恐ろしい目には遭いたくないし。よし、はじめに選んだ扉を開けよう。

ジャーン! 聴衆の笑い。あなたは、好ましくない品物を手にする確率を高くしていたことに気づいてないね。「ラクダが欲しかったんだよ」なんて言い訳はだめだよ。正しい行動は扉を乗り換えること。そうすれば、好ましい品物を手にする確率を倍にできる。

どうしてそうなるか説明しよう。あなたがはじめに選んだ扉に、好ましい品物がある確率は$1/3$で、好ましくない品物がある確率は$2/3$だ。で、司会者が一つの扉を開けることによって、開いてない扉には、好ましい品物と好ましくない品物はが一つずつ入っていることは正しい。でも、それによってあなたの選んだ扉に、好ましい品物がある確率が$1/2$になるわけではないのだよ。あなたは、司会者が扉を開ける前に選んでしまっている。この事実は曲げられない。たとえ、司会者があなたが選んだ扉を開けてしまったとしても、$1/3$の確率で好ましい品物が当たり、$2/3$の確率で好ましくない品物が当たるだけだ。

ところで、司会者が扉を開けたとき、あなたがはじめに選んだ扉に好ましい品物があれば、残った扉には間違いなく好ましくない品物がある(状態Aとするよ)。これは$100$\%確実なことである。逆に、はじめに選んだ扉に好ましくない品物があれば、残った扉には間違いなく好ましい品物がある(こっちは状態B)。これまた$100$\%確実だ。

ここで頭の中を整理しつつ考えよう。状態Aに陥っている確率は$1/3$、状態Bに陥っている確率は$2/3$だね。はじめに選んだ扉を開けて好ましい品物に当たる場合は状態Aであり、状態Bではない。つまり、いい品が手に入る確率は$1/3$だ。扉を換えて好ましい品物に当たる場合は状態Bであり、状態Aではない。つまり、いい品が手に入る確率は$2/3$だ。ほおら、はじめに選んだ扉を開けるより、扉を換える方が$2$倍もいい品が手に入りやすいよね。

これで納得がいかなければ、すべての可能性を表に書き出してみよう。扉を換えた方が得であることがわかるはずだ。

\end{document}