% 不可思議な等式--2--
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\begin{document}
\section*{◆不可思議な等式--2--◆}
\subsection*{$1+2+3+4+5+\cdots = -\dfrac{1}{12}$?}
お楽しみの続きといきましょう。$1+2+3+4+5+\cdots = -\dfrac{1}{12}$というのは、あまりに不条理な関係式です。正の数しか足してないのに、なぜ和が負の数になるのか?\hspace{1zw}整数しか足してないのに、なぜ和が分数になるのか?\hspace{1zw}前章と同じく、厳密なことには目をつぶって等式を鑑賞しましょう。
はじめに
\[
S = x-x^2+x^3-x^4+x^5-\cdots
\]
を考えます。
右辺は前章で見たように$\dfrac{x}{1+x}$なので、すなわち
\[
x-x^2+x^3-x^4+x^5-\cdots = \frac{x}{1+x}
\]
です。
さて、ここで両辺を$x$で微分してみましょう。右辺の分数関数の微分はともかく、左辺の無限級数に対して微分が正しく機能するかとなると、それなりの議論を要するところです。もしかすると、常識的な微分が通用しないかも知れないからです。しかし、微分に関しては常識的な計算ができるものとしましょう。つまり、各項に対して$(x^n)' = nx^{n-1}$、$\left(\dfrac{f}{g}\right)' = \dfrac{f'g-fg'}{g^2}$が成り立つとします。すると
\[
1-2x+3x^2-4x^3+5x^4-\cdots = \frac{1}{(1+x)^2}
\]
が得られます。ここに$x = 1$を代入して
\[
1-2+3-4+5-\cdots = \frac{1}{4}
\]
という関係が見えてきました。
次に$1+2+3+4+5+\cdots$を
\begin{eqnarray*}
1+2+3+4+5+\cdots &=& (1-2+3-4+5-\cdots)+2(2+4+6+8+\cdots) \\
&=& (1-2+3-4+5-\cdots)+2\cdot2(1+2+3+4+\cdots)
\end{eqnarray*}
と変形します。
$1+2+3+4+5+\cdots = T$とおきます。$1-2+3-4+5-\cdots = \dfrac{1}{4}$なので、結局$T = \dfrac{1}{4}+4T$です。これを解いて$T = -\dfrac{1}{12}$、すなわち
\[
1+2+3+4+5+\cdots = -\frac{1}{12}
\]
であることが分かりました。
\subsection*{$1^2+2^2+3^3+4^2+5^2+\cdots = 0$?}
今度の関係式は、正の数の平方を加えているのに、なぜ和が$0$なのでしょう。
はじめに
\[
S = x-2x^2+3x^2-4x^4+5x^5-\cdots
\]
を考えます。なぜ?ということを深く考えないでください。こうするとうまくいくんです。
次に$xS$を考え、辺々足すと
\begin{center}
\begin{tabular}{rcrrrrrr}
$S$ & $=$ & $x$ & $-2x^2$ & $+3x^3$ & $-4x^4$ & $+5x^5$ & $-\cdots$ \\
$xS$ & $=$ & & $x^2$ & $-2x^3$ & $+3x^4$ & $-4x^5$ & $+\cdots$ \\ \hline
$S+xS$ & $=$ & $x$ & $-x^2$ & $+x^3$ & $-x^4$ & $+x^5$ & $-\cdots$
\end{tabular}
\end{center}
となります。右辺は前章で見たように$\dfrac{x}{1+x}$なので、$(1+x)S = \dfrac{x}{1+x}$より$S = \dfrac{x}{(1+x)^2}$、すなわち
\[
x-2x^2+3x^3-4x^4+5x^5-\cdots = \frac{x}{(1+x)^2}
\]
です。
さて、ここで両辺を$x$で微分してみましょう。すると
\[
1^2-2^2x+3^2x^2-4^2x^3+5^2x^4-\cdots = \frac{1-x}{(1+x)^3}
\]
が得られます。式の見栄えのために、$x$の微分を$1x^1$の微分と見たことに注意してください。ここに$x = 1$を代入して
\[
1^2-2^2+3^2-4^2+5^2-\cdots = 0
\]
という関係が見えてきました。
次に$1^2+2^2+3^2+4^2+5^2+\cdots$を
\begin{eqnarray*}
1^2+2^2+3^2+4^2+5^2+\cdots &=& (1^2-2^2+3^2-4^2+5^2-\cdots)+2(2^2+4^2+6^2+8^2+\cdots) \\
&=& (1^2-2^2+3^2-4^2+5^2-\cdots)+2\cdot2^2(1^2+2^2+3^2+4^2+\cdots)
\end{eqnarray*}
と変形します。
$1^2+2^2+3^2+4^2+5^2+\cdots = T$とおきます。$1^2-2^2+3^2-4^2+5^2-\cdots = 0$なので、結局$T = 8T$です。これを解いて$T = 0$、すなわち
\[
1^2+2^2+3^2+4^2+5^2+\cdots = 0
\]
であることが分かりました。
\subsection*{$1^3+2^3+3^3+4^3+5^3+\cdots = \dfrac{1}{120}$?}
この辺りまでくると、正の数の立方の和がどんな値だろうと気にならなくなってきたのではないでしょうか。
はじめに
\[
S = 1^2x-2^2x^2+3^2x^3-4^2x^4+5^2x^5-\cdots
\]
を考えます。
次に$xS$を考え、辺々足すと
\begin{center}
\begin{tabular}{rcrrrrrr}
$S$ & $=$ & $1^2x$ & $-2^2x^2$ & $+3^2x^3$ & $-4^2x^4$ & $+5^2x^5$ & $-\cdots$ \\
$xS$ & $=$ & & $1^2x^2$ & $-2^2x^3$ & $+3^2x^4$ & $-4^2x^5$ & $+\cdots$ \\ \hline
$S+xS$ & $=$ & $x$ & $-(2+1)x^2$ & $+(3+2)x^3$ & $-(4+3)x^4$ & $+(5+4)x^5$ & $-\cdots$
\end{tabular}
\end{center}
となります。右辺の第$2$項以下は説明が必要でしょう。
たとえば第$2$項の和は$-(2^2-1^2)x^2$と書くことができます。これは因数分解ができて$-(2-1)(2+1)x^2$です。$(2-1) = 1$なので、第$2$項が$-(2+1)x^2$と書けたのです。第$3$項以下も同様に因数分解をすると、片方の因数は必ず$1$ですから、$(N+(N-1))x^N$の形になることが分かります。
ここで$(N+(N-1))x^N$を$Nx^N$と$(N-1)x^N$に分け、前の項をその場に残し、後の項を後ろに回すと
\begin{eqnarray*}
(1+x)S &=& (x-2x^2+3x^3-4x^4+5x^5\cdots)+(-x^2+2x^3-3x^4+4x^5-\cdots) \\
&=& (x-2x^2+3x^3-4x^4+5x^5\cdots)-x(x-2x^2+3x^3-4x^4+\cdots)
\end{eqnarray*}
となります。
$2$つのかっこ内の式は前節で$\dfrac{x}{(1+x)^2}$になることが分かっているので、$(1+x)S = \dfrac{x}{(1+x)^2}-\dfrac{x^2}{(1+x)^2}$より$S = \dfrac{x-x^2}{(1+x)^3}$、すなわち
\[
1^2x-2^2x^2+3^2x^3-4^2x^4+5^2x^5-\cdots = \frac{x-x^2}{(1+x)^3}
\]
になることが分かります。
さて、ここで両辺を$x$で微分してみましょう。すると
\[
1^3-2^3x+3^3x^2-4^3x^3+5^3x^4-\cdots = \frac{1-4x+x^2}{(1+x)^4}
\]
が得られます。ここに$x = 1$を代入して
\[
1^3-2^3+3^3-4^3+5^3-\cdots = -\frac{1}{8}
\]
という関係が見えてきました。
次に$1^3+2^3+3^3+4^3+5^3+\cdots$を
\begin{eqnarray*}
1^3+2^3+3^3+4^3+5^3+\cdots &=& (1^3-2^3+3^3-4^3+5^3-\cdots)+2(2^3+4^3+6^3+8^3+\cdots) \\
&=& (1^3-2^3+3^3-4^3+5^3-\cdots)+2\cdot2^3(1^3+2^3+3^3+4^3+\cdots)
\end{eqnarray*}
と変形します。
$1^3+2^3+3^3+4^3+5^3+\cdots = T$とおきます。$1^3-2^3+3^3-4^3+5^3-\cdots = -\dfrac{1}{8}$なので、結局$T = -\dfrac{1}{8}+16T$です。これを解いて$T = \dfrac{1}{120}$、すなわち
\[
1^3+2^3+3^3+4^3+5^3+\cdots = \frac{1}{120}
\]
であることが分かりました。
さて、なんとか計算方法が確立できたように思えます。でも、残念なことまったく同じ方法では容易に計算ができないのです。試しに、同じ方法で$1^4+2^4+3^4+4^4+5^4+\cdots$に取り組んでみると、計算量がばかにならないことに気づくはずです。少し立ち止まって考える必要がありそうです。
\end{document}