% その$4/3$って何?--補足--
\documentclass[dvipdfmx]{jsarticle}
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\markright{tmt's math page}
\def\baselinestretch{1.33}
\usepackage{tikz}
\begin{document}
\section*{◆その$4/3$って何?--補足--◆}
\subsection*{$1/3$について少しマシな話}
カバリエリの定理について述べたので、円錐・角錐の体積の公式に$\displaystyle \frac{1}{3}$がある理由を、もう少し丁寧に説明してみましょう。もっとも、教科書の発展欄あたりに載っている話ではあるのですが。
円錐でも角錐でも考え方は同じなので、円錐を例に話を進めます。今後の計算の都合があるので、円錐は底面積が$4S$で高さが$2h$であるとします。目標は円錐の体積が$\displaystyle (底面積)\times(高さ)\times\frac{1}{3}$、すなわち$\displaystyle (4S)\times(2h)\times\frac{1}{3}$を示すことです。
\newcommand\Trapezoid{
\draw (-3, 0) arc[x radius=3, y radius=1, start angle=180, end angle=360];
\draw[dashed] (3, 0) arc[x radius=3, y radius=1, start angle=10, end angle=170];
\draw (1.5, 3) arc[x radius=1.5, y radius=0.5, start angle=0, end angle=360];
\draw (-1.5, 3) -- (-3, 0); \draw (1.5, 3) -- (3, 0);
}
%
\begin{center}
\begin{tikzpicture}[scale=0.5]
\begin{scope}[shift={(-5, 0)}]
\draw (-3, 0) arc[x radius=3, y radius=1, start angle=180, end angle=360] node[midway, above] {底面積$4S$};
\draw[dashed] (3, 0) arc[x radius=3, y radius=1, start angle=10, end angle=170];
\draw (-3, 0) -- (0, 6) -- (3, 0);
\draw[<->] (-4, 0) -- (-4, 6) node[midway, left] {$2h$};
\end{scope}
%
\begin{scope}[shift={(5, 0)}]
\Trapezoid
\draw (0, -1) node[above] {底面積$4S$};
\draw[<->] (4, 0) -- (4, 3) node[midway, right] {$h$};
%
\draw (-1.5, 4.5) arc[x radius=1.5, y radius=0.5, start angle=180, end angle=360] node[midway, above] {\footnotesize 底面積$S$};
\draw[dashed] (1.5, 4.5) arc[x radius=1.5, y radius=0.5, start angle=10, end angle=170];
\draw (-1.5, 4.5) -- (0, 7.5) -- (1.5, 4.5);
\draw[<->] (4, 4.5) -- (4, 7.5) node[midway, right] {$h$};
\end{scope}
\end{tikzpicture}
\end{center}
では、計算を始めましょう。まず、元の円錐を高さの半分の位置で分割します。すると、高さ$h$の小円錐と高さ$h$の円錐台に分かれます。このとき小円錐の底面積が$S$であることはよいでしょうか。
立体図形に関しては、大きさ(長さ)の比が$1:r$であれば、表面積比は$1:r^2$、体積比は$1:r^3$です。いまの場合、小円錐と元の円錐の大きさの比は$h:2h$、すなわち$1:2$になっています。したがって表面積比は$1:4$ですから、底面積比は$S:4S$になります。計算の都合で元の円錐の底面積を$4S$としたのはこのためでした。
さて、このようしてできた円錐台の体積を、カバリエリの定理を利用して求めてみましょう。
\newcommand\TropezoidR{
\draw[rotate around={180:(0, 1.5)}] (3, 0) arc[x radius=3, y radius=1, start angle=0, end angle=360];
\draw[rotate around={180:(0, 1.5)}] (1.5, 3) arc[x radius=1.5, y radius=0.5, start angle=0, end angle=180];
\draw[rotate around={180:(0, 1.5)}, dashed] (-1.5, 3) arc[x radius=1.5, y radius=0.5, start angle=180, end angle=360];
\draw[rotate around={180:(0, 1.5)}] (-1.5, 3) -- (-3, 0); \draw[rotate around={180:(0, 1.5)}] (1.5, 3) -- (3, 0);
}
%
\vspace{10pt}
\begin{center}
\begin{tikzpicture}[scale=0.6]
\begin{scope}[shift={(-2.5, 0)}]
\Trapezoid
\draw (-2, 2) arc[x radius=2, y radius=2/3, start angle=180, end angle=360];
\draw[dashed] ( 2, 2) arc[x radius=2, y radius=2/3, start angle=10, end angle=170];
\draw (-3, 0) -- node[above] {\footnotesize$2r$} (0, 0) -- node[right] {\footnotesize$h$} (0, 3) -- node[above] {\footnotesize$r$} (-1.5, 3);
\draw (0, 2) -- (-2, 2); \draw[dashed] (0, 2) to[bend left] node[below] {\footnotesize$r+kr$} (-2, 2);
\end{scope}
%
\begin{scope}[shift={(2.5, 0)}]
\TropezoidR
\end{scope}
\end{tikzpicture}
\end{center}
カバリエリの定理を使うときは、上から下までの断面積が一定していると大変好都合です。そこでもう1個の円錐台を用意し、ひっくり返して並べれば2個一組の断面積は常に合計$5S$になりそうです。ところが、そうではありません。
理由は、上底からの高さ$kh$ ($0 < k < 1$)と円錐台の断面積が比例しないからです。たとえば、円錐台の上底の半径を$r$---ちなみに下底の半径は$2r$ですね---とすれば、上底から$kh$の位置の断面円の半径は$r+kr = (1+k)r$になります。すると断面積である円の面積は$\pi(1+k)^2r^2$となって、$kh$の直線的な変化に対して断面積は放物線的な変化になってしまいます。これでは円錐台をひっくり返して並べても、片方の断面積の増加量ともう片方の断面積の減少量が相殺されず、2個一組の断面積が一定になりません。
\vspace{10pt}
\begin{center}
\begin{tikzpicture}[scale=0.6]
\begin{scope}[shift={(-2.5, 0)}]
\Trapezoid
\draw[dashed] (-1.5, 0) arc[x radius=1.5, y radius=0.5, start angle=180, end angle=360];
\draw[dashed] (1.5, 0) arc[x radius=1.5, y radius=0.5, start angle=10, end angle=170];
\draw[dashed] (-1.5, 0) -- (0, 3) -- (1.5, 0);
\end{scope}
%
\begin{scope}[shift={(2.5, 0)}]
\TropezoidR
\draw (1.5, 3) arc[x radius=1.5, y radius=0.5, start angle=0, end angle=360];
\draw[dashed] (-1.5, 3) -- (0, 0) -- (1.5, 3);
\end{scope}
\end{tikzpicture}
\end{center}
では、どうすればよいかといえば、円錐台から小円錐1個分をくり抜くとうまくいくのです。こうすると円錐台の断面はドーナツ型になります。くり抜く小円錐の断面円の半径は$kr$ですから、ドーナツ型の断面積は$\pi(1+k)^2r^2-\pi(kr)^2 = \pi(2k+1)r^2$です。これなら、上底からの高さ$kh$の直線的な変化に対して断面積も直線的な変化になるので、``くり抜き円錐台''をひっくり返して並べれば、2個一組の断面積は常に一定となるのです。
\subsection*{円錐の体積}
さで、これで2個一組のくり抜き円錐台の断面積の計算ができます。本来なら、2個一組の断面積が上面からの位置によらず一定していることを示すべきですが、「その$4/3$って何?--2--」と同様の計算で確認できることなので省略します。
円錐台は上底の面積が$S$、下底の面積が$4S$でしたから、くりぬき円錐台は上底の面積が$S$、下底の面積が$3S$の立体になっています。これをひっくり返して2個一組にするので、上面も下面も面積の合計は$4S$です。2個一組の断面積が一定していることは確認済みですから、カバリエリの定理より、くり抜き円錐台2個一組の体積は底面積$4S$、高さ$h$の柱体の体積と同じです。したがって、2個一組のくり抜き円錐台の体積は$4Sh$です。つまり、くり抜き円錐台1個の体積は$2Sh$です。
では、いよいよ元の円錐の体積を求めることにします。いま、くり抜き円錐台が出来上がったばかりですが、ここに小円錐1個分を戻して、さらに小円錐1個を上に乗せると元の円錐が復元できます。元の円錐の体積を$V$とすれば、小円錐の体積は$\displaystyle \frac{V}{8}$です。立体図形に関しては、大きさ(長さ)の比が$1:r$であれば体積比は$1:r^3$だったことを思い出しましょう。
くり抜き円錐台の体積は$2Sh$でしたから
\[
V = 2Sh+\frac{V}{8}+\frac{V}{8}
\]
が成り立ちます。$V$について解くと$V = \displaystyle \frac{8}{3}Sh$ですが、これは
\[
V = \frac{8}{3}Sh = (4S)\times(2h)\times\frac{1}{3} = (底面積)\times(高さ)\times\frac{1}{3}
\]
であることを表しています。
\end{document}