% 円と球と超球のアヤシイ関係
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\usepackage{tikz}
\begin{document}
\section*{◆円と球と超球のアヤシイ関係◆}
\subsection*{円と球に見える関係}
小学校で円について学んだとき、円周の長さと面積を求める式を習いました。中学校あたりでは、ちょっとカッコつけて文字式で表したものです。円の半径を$r$、円周率を$\pi$で表せば、面積$S$と円周$\ell$は
\[
S = \pi r^2,\qquad \ell = 2\pi r
\]
のように書けます。文字式で表すかどうかは別にして、これらの式はよく知られています。
球に関しても同様な公式があります。こちらは使う機会があまりないせいか、習ったはずなのに忘れている人がほとんどかもしれません。球の体積を$V$、表面積を$S$とすると
\[
V = \frac{4}{3}\pi r^3,\qquad S = 4\pi r^2
\]
と書けます。
理由も考えずに公式を使ってきた人が、どうしてこんな式になったかを知るのは、積分を学んでからのことになります。積分は微分とほぼ同時に学ぶはずですから、気の利いた人は『むむ。
\[
(円の面積S)' = (円周\ell),\qquad (球の体積V)' = (球の表面積S)
\]
になってるんじゃない?』と思うでしょう。
もしかして、$4$次元空間での球---``超球''と呼ぶことにしましょう---についても同じような関係があるのでしょうか? でも、$4$次元の世界は私たちには想像外のものです。そこで数式をいじりながら、$4$次元世界を疑似体験してみましょう。さて、真相はいかに?
\subsection*{$3$次元空間から$4$次元超空間へ}
はじめに言葉を整理しておきます。
\[
\begin{array}{ll}
1次元 & 1方向だけの空間(数直線の世界)\\
2次元 & 縦・横に広がる空間(平面の世界)\\
3次元 & 縦・横・高さに広がる空間(空間の世界)\\
4次元 & 縦・横・高さに第4の方向を加えた空間(超空間の世界)
\end{array}
\]
こんなところでしょうが、私たちには第$4$の方向など分かるはずもありません。そこで、円や球の体積・(表)面積を計算する過程の延長で$4$次元超球をとらえることにします。なんといっても想像の世界ですから、勝手に想像しちゃいましょう。想像ついでに新しい言葉も決めておきます。
\begin{center}
\begin{tabular}{l|l|rl}
名称 & 中身が詰まったものの量 & & 周りを覆うものの量 \\ \hline
$1$次元\textbf{線}円 & \textbf{線}積(直径のこと:$2R$) & & 表\textbf{点}積(左右の$2$点のこと)\\
平\textbf{面}円 & \textbf{面}積($\pi R^2$) & $\searrow$ & 表\textbf{線}積(円周のこと:$2\pi R$)\\
立\textbf{体}球 & \textbf{体}積$\left(\dfrac{4}{3}\pi R^3\right)$& $\searrow$ & 表\textbf{面}積($4\pi R^2$)\\
$4$次元\textbf{超}球 & \textbf{超体}積(球の体積に相当) & $\searrow$ & 表\textbf{体}積(球の表面積に相当)
\end{tabular}
\end{center}
わざわざなじみのない言葉を使ったのは、ある次元の物体の周りを覆っているのは、それより$1$次元低い中身が詰まった物体であることを強調したかったからです。またどの言葉にも「積」がついているので、積分を用いて計算がされていることをほのめかしていますね。では順を追って、$円 \to 球 \to (線円) \to$超球へと計算を進める旅に出ましょう。
\subsection*{円の面積と表線積}
これから先の計算は、積分により「容積(中身が詰まったもの)」を求めてから「表積(周りを覆うもの)」を求める手順でいきます。また、表積を求める方法も統一するものとします。
$1$次元世界の住人には円は想像もできない物体でしょう。何しろ$1$次元世界では左右の方向しかなく、``上''方向など思いもよらないわけですから。しかし円は、ごくごく微小の高さを持つ``線柱''---長方形のこと---を無数に積み上げたものです。
\begin{center}
\begin{tikzpicture}[scale=2]
\draw[->] (0, -1.2) node[above left] {$-R$} -- node[left] {$O$} (0, 1.2) node[below left] {$R$} node[above] {$y$};
\draw (0, 0) circle (1);
\draw (0, 0) -- node[below] {$R$} ({cos(30)}, {sin(30)});
\draw ({cos(30)}, {sin(30)}) node[right] {$dy$} rectangle ({cos(150)}, {sin(150)+0.05});
\draw (0, {sin(30)}) node[below left] {$y$};
\draw[dashed] ({cos(30)}, {sin(30)+0.05}) to[bend right] node {\footnotesize $2\times\sqrt{R^2-y^2}$} ({cos(150)}, {sin(150)+0.05});
\end{tikzpicture}
\end{center}
中心$O$から$y$の位置にある長方形は、底辺が$2\times\sqrt{R^2-y^2}$です。ごくごく微小の高さを$dy$とすると長方形の面積は$2\sqrt{R^2-y^2}\cdot dy$となります。これを$y$軸に沿って、$-R$から$R$まで無数に積み上げると円になるので、円の面積$S$は
\[
S = \int_{-R}^R 2\sqrt{R^2-y^2}\cdot dy
\]
です。本来なら$y = R\sin\theta$などと置換を施して計算を進めますが、まあ、ここの話題は計算技術以外のところにあるので
\[
S = \int_{-R}^R 2\sqrt{R^2-y^2}\cdot dy = \pi R^2
\]
である、と結論だけをのせるにとどめます。
\vspace{10pt}
\begin{center}
\begin{tikzpicture}[scale=2]
\draw (0, 0) circle (1) node[left] {$O$};
\draw (0, 0) -- node[above] {$R$} ({cos(30)}, {sin(30)});
\foreach \th in {-20, -10, ..., 20} \draw (0, 0) -- ({cos(\th)}, {sin(\th)});
\draw ({cos(-15)}, {sin(-15)}) node[right] {\tiny $\dots$};
\draw ({cos( -5)}, {sin( -5)}) node[right] {\tiny $\ell_n$};
\draw ({cos( 5)}, {sin( 5)}) node[right] {\tiny $\ell_1$};
\draw ({cos( 15)}, {sin( 15)}) node[right] {\tiny $\ell_2$};
\draw ({cos( 25)}, {sin( 25)}) node[right] {\tiny $\dots$};
\draw[dashed, ->] ({0.5*cos(45)}, {0.5*sin(45)}) arc[x radius=0.5, y radius=0.5, start angle=45, end angle=315];
\draw (0, 0.5) node[above] {\footnotesize 面積$S$は$\frac{1}{2}\ell_nR$の総和};
\draw (0, -1) node {\footnotesize $\ell = \ell_1+\ell_2+\dots+\ell_n$ ($n \to \infty$)とみなせる};
\end{tikzpicture}
\end{center}
次に表線積(円周)$\ell$を求めます。そのために、中心$O$から円周に向かって放射状に線を引き、円を無数の小三角形に分割します。実際は小三角形でなく小扇形ですが、小三角形で近似しても、無数に寄せ集めれば円の面積になるので問題ありません。当然、小三角形の高さも$R$で近似してかまいません。ここで、小三角形の底辺を$\ell_1$, $\ell_2$, $\dots$, $\ell_n$ ($n \to \infty$)で表せば、円の面積$S$は小三角形の総和ですから
\begin{eqnarray*}
S & = & \frac{1}{2}\ell_1R+\frac{1}{2}\ell_2R+\dots+\frac{1}{2}\ell_n R\quad (n \to \infty) \\
& = & \frac{1}{2}(\ell_1+\ell_2+\dots+\ell_n)R\quad (n \to \infty) \\
& = & \frac{1}{2}\ell R
\end{eqnarray*}
となって、ここから$\ell = \dfrac{2S}{R}$が分かります。よって
\[
\ell = \frac{2(\pi R^2)}{R} = 2\pi R
\]
が求めたい表線積(円周)の長さ$\ell$です。
\subsection*{球の体積と表面積}
球についても同じ手法をとります。
$2$次元世界の住人には球は想像もできない物体でしょう。何しろ$2$次元世界では前後左右の方向しかなく、``厚さ''方向など思いもよらないわけですから。しかし球は、ごくごく微小の厚みを持つ円柱を無数に積み上げたものです。
\newcommand\NthSphere[1]{
\draw (0, 0) circle (1);
\draw[->] (0, 0.95) -- (0, 1.2) node[below left] {$R$} node[above] {$#1$};
\draw (0, 0.95) circle[x radius=0.2, y radius=0.05];
\draw[dashed] (0, -1) -- node[left] {$O$} (0, 0.95);
\draw[dashed] (0, -0.95) circle[x radius=0.2, y radius=0.05];
\draw (0, -1.2) node[above left] {$-R$} -- (0, -0.95);
%
\draw[dashed] (0, 0) -- node[below] {$R$} ({cos(30)}, {sin(30)});
\draw[dashed] (0, {sin(30)}) node[left] {$#1$} -- node {\scriptsize $\sqrt{R^2-#1^2}$} ({cos(30)}, {sin(30)}) node[right] {$d#1$};
\draw ({cos(150)}, {sin(150)}) arc[x radius=cos(30), y radius=0.2, start angle=180, end angle=360];
\draw[shift={(0, 0.05)}] ({cos(150)}, {sin(150)}) arc[x radius=cos(30), y radius=0.2, start angle=180, end angle=360];
\draw ({cos(150)}, {sin(150)}) -- ({cos(150)}, {sin(150)+0.05}); \draw ({cos(30)}, {sin(30)}) -- ({cos(30)}, {sin(30)+0.05});
\draw[dashed] ({cos(30)}, {sin(30)+0.05}) arc[x radius=cos(30), y radius=0.2, start angle=0, end angle=180];
}
%
\begin{center}
\begin{tikzpicture}[scale=2]
\NthSphere{z}
\end{tikzpicture}
\end{center}
中心$O$から$z$の位置にある円柱は、底面積が$\pi(\sqrt{R^2-z^2})^2$です。ごくごく微小の高さを$dz$とすると円柱の体積は$\pi(\sqrt{R^2-z^2})^2\cdot dz$となります。これを$z$軸に沿って、$-R$から$R$まで無数に積み上げると球になるので、球の体積$V$は
\[
V = \int_{-R}^R \pi(\sqrt{R^2-z^2})^2\cdot dz
\]
です。これはあっさりと積分ができて
\[
V = \int_{-R}^R \pi(\sqrt{R^2-z^2})^2\cdot dz = \frac{4}{3}\pi R^3
\]
となることが分かります。
\vspace{10pt}
\begin{center}
\begin{tikzpicture}[scale=2]
\draw (0, 0) circle (1) node[right] {$O$};
\draw (0, 0.95) circle[x radius=0.2, y radius=0.05];
\draw[dashed] (0, -0.95) circle[x radius=0.2, y radius=0.05];
\draw ({cos(150)}, {sin(150)}) arc[x radius=cos(30), y radius=0.2, start angle=180, end angle=360];
\draw[dashed] ({cos(30)}, {sin(30)}) arc[x radius=cos(30), y radius=0.2, start angle=0, end angle=180];
%
\draw (-0.6, 0.35) -- (-0.6, 0.15) node[left] {\footnotesize $S_n$} -- (-0.45, 0.2) --cycle;
\draw[very thin] (0, 0) -- (-0.6, 0.35);
\draw[very thin] (0, 0) -- node[below] {\footnotesize $R$} (-0.6, 0.15);
\draw[very thin] (0, 0) -- (-0.45, 0.2);
\draw (0, 0.5) node {\footnotesize 体積$V$は$\frac{1}{3}S_nR$の総和};
\draw (0, -0.5) node {\footnotesize $S = S_1+S_2+\dots+S_n$ ($n \to \infty$)とみなせる};
\end{tikzpicture}
\end{center}
次に表面積$S$を求めます。そのために、中心$O$から表面に向かって放射状に線を引き、球を無数の小三角推に分割します。実際は小三角推でないのは円での議論と同じですが、小三角推で近似しても、無数に寄せ集めれば球の体積になるので問題ありません。当然、小三角推の高さも$R$で近似できます。ここで、小三角推の底面積を$S_1$, $S_2$, $\dots$, $S_n$で表せば、球の体積$V$は小三角錐の総和ですから
\begin{eqnarray*}
V & = & \frac{1}{3}S_1R+\frac{1}{3}S_2R+\dots+\dfrac{1}{3}S_n R\quad (n \to \infty) \\
& = & \frac{1}{3}(S_1+S_2+\dots+S_n)R\quad (n \to \infty) \\
& = & \frac{1}{3}SR
\end{eqnarray*}
となって、ここから$S = \dfrac{3V}{R}$が分かります。よって
\[
S = \frac{3\left(\dfrac{4}{3}\pi R^3\right)}{R} = 4\pi R^2
\]
が求める球の表面積$S$です。
\subsection*{線円の線積と表点積}
$4$次元超球へ行く前に少し寄り道をしましょう。$1$次元円の線積(直径)と表点積(左右の$2$点)についてです。
そもそも、円や球、もっと言えば$n$次元球とはどんなものを指すのでしょうか。中心を原点にとれば、円周や球面は「原点から等しい距離(たとえば$R$)だけ離れた点の集合」と言えます。そして、中身が詰まれば円や球体ができあがります。ですから$4$次元球面は、縦・横・高さともう一つの方向に、くまなく等しく散っている点を集めたものになります。う〜ん。想像できません。
\vspace{10pt}
\begin{center}
\begin{tikzpicture}
\draw[->] (-2, 0) -- node[below] {$O$} (2, 0) node[right] {$x$};
\draw[ultra thick] (-1, 0) node[below] {$-R$} -- (1, 0) node[below] {$+R$};
\draw[dashed] (0.4, 0) |- (0.7, 0.5) node[right] {太線部の線積は$\displaystyle \int_{-R}^{R}dx = 2R$};
\end{tikzpicture}
\end{center}
しかし、$1$次元でも定義通り解釈すると、$1$次元円なるものができます。$1$次元は数直線上の話ですから、原点から等しい距離($R$)の点集合は、$+R$と$-R$の$2$点しかありません。それに挟まれたものが$1$次元円なので、(面積ならぬ)線積は$2R$ということになります。もちろん、(表面積ならぬ)表点積は$0$ですから、残念ながら$(2R)' = 2$とはなりませんでした。
\subsection*{$4$次元超錐体}
いよいよ$4$次元超球の出番です。が、その前にやっておかなくてはならないことがあります。円の表線積(円周)を求める際には分割した三角形を、球の表面積を求める際には分割した三角推を利用しました。同じ手法をとるなら、$4$次元超錐体とでも呼ぶ物体を利用することになるはずです。
平面の三角形を「底面が$1$次元の錐体」、空間の三角錐を「底面が$2$次元の錐体」ととらえるなら、$4$次元超空間のそれは「底面が$3$次元の錐体」と考えてよいでしょう。図での$4$次元超錐体は、$3$次元錐体と似た形をしてますが、とんでもない。この図は、\textbf{厚みのない立体}に$du$の\textbf{超高}をつけた超柱体を、$u$軸に沿って重ねた図です。どのみち想像の世界なので、そういうことにしておきましょう。
\newcommand\NthCorn[3]{
\draw[->] (0, -1) -- (0, 3) node[above] {$#1$};
\draw (-0.05, 1) -- (0.05, 1) node[right] {$#1$};
\draw (-0.05, 2) -- (0.05, 2) node[right] {$h$};
\draw (-1.4, 2) -- (0, 0) node[below left] {$O$} -- (1.4, 2);
\draw (-1.4, 2) .. controls (-0.4, 1.6) .. (1.4, 2); \draw (-1.4, 2) .. controls (0.4, 2.6) .. (1.4, 2);
\draw[dashed] (-1, 2) |- (-1.3, 2.5) node[left] {$#2$};
%
\draw (-0.7, 1) .. controls (-0.2, 0.8) .. (0.7, 1) node[right] {$d#1$};
\draw[shift={(0, 0.05)}] (-0.7, 1) .. controls (-0.2, 0.8) .. (0.7, 1);
\draw[dashed] (-0.7, 1+0.05) .. controls (0.2, 1.3+0.05) .. (0.7, 1+0.05);
\draw[dashed] (-0.3, 1) |- (-1.3, 1.5) node[left] {$\left(\dfrac{#1}{h}\right)^#3#2$};
}
%
\begin{center}
\begin{tikzpicture}
\begin{scope}[shift={(-3, 0)}]
\NthCorn{z}{S}{2}
\draw (0, -1) node[right] {$3$次元錐体};
\end{scope}
%
\begin{scope}[shift={(3, 0)}]
\NthCorn{u}{V}{3}
\draw (0, -1) node[right] {$4$次元超錐体};
\foreach \d in {0, 1, ..., 7} \draw[shift={(\d*0.15, \d*0.03)}] (0, 1.5) -- (0.2, 1.7);
\foreach \d in {0, 1, ..., 6} \draw[dotted, shift={(\d*0.15-1.2, \d*0.03+0.4)}] (0, 1.5) -- (0.2, 1.7);
\foreach \d in {0, 1, ..., 7} \draw[shift={(\d*0.075, \d*0.015)}] (0, 0.75) -- (0.1, 0.85);
\foreach \d in {0, 1, ..., 6} \draw[dotted, shift={(\d*0.075-0.6, \d*0.015+0.2)}] (0, 0.75) -- (0.1, 0.85);
\end{scope}
\end{tikzpicture}
\end{center}
ところで空間において錐体の体積$V$は、$V = \dfrac{1}{3}Sh$が表すようになぜか$\dfrac{1}{3}$がついています。不思議ですね。でも、これは積分計算をすれば解決です。原点を頂点とする、底面積$S$、高さ$h$の錐体の体積は、原点から$z$の位置にある厚さ$dz$の薄い柱体の総和で求められます。ところで$z$の位置以下の錐体は、元の錐体と相似で、相似比は$\dfrac{z}{h}$ですね。相似比が$\dfrac{z}{h}$なら底面積比は$\left(\dfrac{z}{h}\right)^2$ですから、厚さ$dz$の薄い柱体は底面積$\left(\dfrac{z}{h}\right)^2S$、高さ$dz$です。よって、薄い柱体の体積は$\left(\dfrac{z}{h}\right)^2S\cdot dz$となります。結局、錐体の体積$V$はその積分となって
\[
V = \int_0^h \left(\frac{z}{h}\right)^2S\cdot dz = \frac{1}{3}Sh
\]
となるのです。
これを$4$次元超錐体へ応用します。$4$次元超錐体は、\textbf{底面の体積}が$V$で、第$4$の$u$軸方向へ\textbf{超高}$h$を持つ物体です。$4$次元空間でも、一点から放射状に相似の関係が成り立つとすれば、原点を頂点とする、(底面積ならぬ)\textbf{底体積}$V$、超高$h$の超錐体の超体積は、原点から$u$の位置にある\textbf{超厚}$du$の薄い超柱体の総和で求められます。ところで$u$の位置以下の超錐体は、元の超錐体と相似で、相似比は$\dfrac{u}{h}$ですね。相似比が$\dfrac{u}{h}$なら底体積比は$\left(\dfrac{u}{h}\right)^3$ですから、超厚$du$の薄い超柱体は底体積$\left(\dfrac{u}{h}\right)^3V$、超高$du$です。よって、薄い超柱体の超体積は$\left(\dfrac{u}{h}\right)^3V\cdot du$となります。結局、超錐体の超体積$U$はその積分となって
\[
U = \int_0^h \left(\frac{u}{h}\right)^3V\cdot du = \frac{1}{4}Vh
\]
となることが分かりました。
これをさらに押し進めれば、$n$次元超錐体の超体積は$\dfrac{1}{n}\times(底体積)\times(超高)$であることが分かるでしょう。ちなみに$2$次元錐体は三角形のことですから、正に$\dfrac{1}{2}\times(底辺)\times(高さ)$になっています。
\subsection*{$4$次元超球の超積と表体積}さて、$3$次元世界に住む私たちには超球は想像もできない物体です。何しろ$4$次元世界にある第$4$の方向を知るすべがないのですから。しかし超球は、ごくごく微小の超高を持つ超柱体を、第$4$の方向へ\textbf{すき間なく重ならないよう}無数に積み上げたものです。
\begin{center}
\begin{tikzpicture}[scale=2]
\NthSphere{u}
\foreach \d in {1, 2, 3, 4} \draw[dotted] (0.5+\d*0.02, -0.5-\d*0.02) circle[x radius=0.5/\d, y radius=0.25/\d, rotate=45];
\end{tikzpicture}
\end{center}
中心$O$から$u$の位置にある超柱体は、(底面ならぬ)\textbf{底体}を球とする物体です。図で底体が球に見えないのは仕方ありません。なにしろ$4$次元では、$3$次元立体の$u$方向の厚みは$0$なのですから。しかし底体積は$\dfrac{4}{3}\pi(\sqrt{R^2-u^2})^3$で、ごくごく微小の超高を$du$とすると超柱体の超体積は$\dfrac{4}{3}\pi(\sqrt{R^2-u^2})^3\cdot du$となります。これを$u$軸に沿って、$-R$から$R$まで無数に積み上げると超球になるので、超球の超体積$U$は
\[
U = \int_{-R}^R \frac{4}{3}\pi(\sqrt{R^2-u^2})^3\cdot du
\]
です。これは一筋縄ではいかない積分です。そこで公式集のお世話になることにしましょう。
\[
\int(a^2-x^2)^\frac{3}{2}\,dx = \frac{x(a^2-x^2)^\frac{3}{2}}{4}+\frac{3a^2x\sqrt{a^2-x^2}}{8}+\frac{3}{8}a^4\sin^{-1}\frac{x}{a}
\]
ということですから、これより
\[
U = \int_{-R}^R \frac{4}{3}\pi(\sqrt{R^2-u^2})^3\cdot du = \frac{1}{2}\pi^2R^4
\]
が得られました。
さて、こうなると後は簡単です。超球を超角錐に分割して、それぞれの超体積が$\dfrac{1}{4}V_1R$,\ $\dfrac{1}{4}V_2R$,~$\dots$,\ $\dfrac{1}{4}V_n R$であるなら、超球の超体積$U$と(表面積ならぬ)\textbf{表体積}$V$の関係は
\begin{eqnarray*}
U & = & \frac{1}{4}V_1R+\frac{1}{4}V_2R+\dots+\frac{1}{4}V_n R\quad (n \to \infty) \\
& = & \frac{1}{4}VR
\end{eqnarray*}
です。これより超球の表体積は
\[
V = \frac{4U}{R} = 2\pi^2R^3
\]
ですね。なんとここでも$U' = V$の関係が成立しています。
といっても別に驚くことはありません。体積の計算において$n$次元球体を$n$次元錐体に分割していますが、そもそも$n$次元錐体は底面を積分したものと考えたのです。底面の集合が球体の表面を作るので、結局、表面の積分が球体になるのは当然ですね。この思考手順ゆえに、この思考結果なのです。
それでも堂々と書いておきましょう。半径$r$の$n$次元球体の容積(中身が詰まったもの)を$F_n(r)$、その表積(周りを覆うもの)を$G_n(r)$とすると
\[
\frac{d}{dr}F_n(r) = G_n(r),\quad(n \ge 2)
\]
が成り立つ。う〜ん。でもやっぱり当たり前か。こうなるように思考してたんだから。
\end{document}