% 2/3×3/4 なら 6/12 になるワケ
\documentclass[a4j]{jsarticle}
\pagestyle{myheadings}
\markright{\sf tmt's math page}
\def\baselinestretch{1.33}
\begin{document}
\def\UNIT#1{
\begin{picture}(#1, 10)
\put(0, -2){\framebox(#1, 10){}}
\end{picture}
}
\def\MULTOBJ{
\begin{picture}(10, 10)
\put(0, -2){\dashbox(10, 10){}}
\put(0, -2){\framebox(6.67, 7.5){}}
\end{picture}
}
\def\MULTUNIT{
\begin{picture}(10, 10)
\put(2.5, -2){\framebox(3.33, 2.5){}}
\end{picture}
}
\section*{◆$\displaystyle \frac{2}{3}\times\frac{3}{4}$なら$\displaystyle \frac{6}{12}$になるワケ◆}
$\displaystyle \frac{1}{2}+\frac{1}{3}$の計算は$\displaystyle \frac{2}{5}$とできないのに、$\displaystyle \frac{2}{3}\times\frac{3}{4}$なら分子どうし・分母どうし掛けて
\[
\frac{2}{3}\times\frac{3}{4} = \frac{2\times3}{3\times4} = \frac{6}{12}
\]
とできます。足し算でやってはいけなことが、掛け算で許されるのはなぜでしょう。何だか納得いきません。けれども、その理由はまったく正当なのです。それも、足し算での理由をそのまま継承していると言ってよいものです。
そこで説明のために、再び\UNIT{10}に登場願いましょう。
はじめに掛け算の仕組みから確認します。$2\times3$は何の計算かというと、それは$2+2+2$のように$2$を$3$回加える計算です。したがって\UNIT{20}を$3$回加えて\UNIT{60}ができあがります。蛇足ながら、前節の約束で$+$はまったく同じものを加えることしかしません。ここで$2$は$\UNIT{10}+\UNIT{10}$であり、それを$3$回加えた$(\UNIT{10}+\UNIT{10})+(\UNIT{10}+\UNIT{10})+(\UNIT{10}+\UNIT{10})$を、私たちは数字の$6$で表しています。これが$2\times3 = 6$の記述です。
実はこういった加え方、つまり横に延ばす加え方は掛け算の一面を示しているに過ぎません。その一面は数直線が語ってくれます。\UNIT{10}の高さを無視して$1$を\
\begin{picture}(10, 10)
\put(0, -2){\line(1,0){10}}
\end{picture}
と見れば、$1+1+1+\cdots$によって数直線ができあがります。
\vspace{.33\baselineskip}
\begin{center}
\unitlength=.5cm
\begin{picture}(20, 2)(0, -1.5)
\put(0, 0){\line(1,0){20}}
\multiput(0, -.15)(1, 0){10}{\line(0,1){.3}}
\put(1, -.2){\makebox(0, 0)[t]{\small$1$}}
\put(2, -.2){\makebox(0, 0)[t]{\small$2$}}
\put(3, -.2){\makebox(0, 0)[t]{\small$3$}}
\put(4, -.2){\makebox(0, 0)[t]{\small$4$}}
\put(5, -.2){\makebox(0, 0)[t]{\small$5$}}
\put(6, -.2){\makebox(0, 0)[t]{\small$6$}}
\put(7, -.2){\makebox(0, 0)[t]{\small$7$}}
\put(8, -.2){\makebox(0, 0)[t]{\small$8$}}
\put(9, -.2){\makebox(0, 0)[t]{\small$\cdots$}}
\end{picture}
\end{center}
数直線上で足し算や掛け算(これも足し算の延長)が自在にできるのは、数直線が$1$を際限なく加えてできたものだからです。また数直線のお陰で、私たちは負の数を受け入れることができ、さらに数を拡張することが可能になるのですが、これは別の機会の話としましょう。
$2\times3$に戻ります。さっきは$2$を$3$回加える際、横に延ばしましたが、$2$が\UNIT{20}であることを意識すると、レンガのように上に加えることもできます。上に$3$回加えると\
\begin{picture}(20, 30)
\put(0, -2){\framebox(20, 30){}}
\end{picture}
となるものの、\UNIT{10}が$6$つであることに異論はないでしょう。
さて、このように上に加えることを認めると、掛け算の別の面が見えてきます。$2\times3 = 2+2+2$であると考えているうちは、あくまでも$+$で加えているのですから、まったく同じものを対象にした計算でしかあり得ません。ところが\UNIT{10}を積み上げることで、図形としての広さ、すなわち面積を考えることができるようになります。面積と言っても結局は$(長さ)\times(長さ)$だから、同じものを対象にした計算の域を出ないのではないか、と考えてはいけません。ここでも話の順番が問題になりますが、掛け算によって面積を求めるのではなく、面積になるものに掛け算を応用できるということです。たとえば$(道のり) = (速さ)\times(時間)$はよく知っていますね。小学生の頃に「速さと時間を掛けると道のりになる」と覚えたはずです。さらに学年が進むと、道のりがグラフ上で面積になっていることも学ぶでしょう。でも実際は逆で、道のりの概念が面積そのものなのです。道のりが面積であるからこそ、速さと時間の掛け算で道のりが求まるのです。
つまり、私たちが掛け算で計算しているものには、根底に面積の概念が横たわっています。たとえ面積を意識できなくても、です。だから面積を計算できるものであれば、掛け算の対象となるものが互いに異質であっても、計算が可能になるわけです。掛け算は一面では足し算の延長ですが、別の面を見ることで計算の質が変わります。別の面で見れば、掛け算には足し算の影は一切ありません。速さと時間のように、単位がまったく違っても掛け算ができるのはそのためです。
掛け算の別の面を確認するために$2\times3$によってできたものに数直線を重ねてみます。
\vspace{.33\baselineskip}
\begin{center}
\unitlength=.5cm
\begin{picture}(4, 4)
\put(0, 0){\line(1,0){4}} %横軸
\multiput(1, -.15)(1, 0){4}{\line(0,1){.3}}
\put(1, -.2){\makebox(0, 0)[t]{\small$1$}}
\put(2, -.2){\makebox(0, 0)[t]{\small$2$}}
\put(0, 0){\line(0,1){4}} %縦軸
\multiput(-0.15, 1)(0, 1){4}{\line(1,0){.3}}
\put(-.2, 1){\makebox(0, 0)[r]{\small$1$}}
\put(-.2, 2){\makebox(0, 0)[r]{\small$2$}}
\put(-.2, 3){\makebox(0, 0)[r]{\small$3$}}
\put(0, 0){\framebox(2, 3){}}
\end{picture}
\end{center}
図から分かるとおり$2\times3$とは、横が$2$、縦が$3$の長方形の面積に他なりません。このことから$2\times3$とは\UNIT{20}$\times$\UNIT{30}ではなく、
\begin{picture}(20, 0)
\put(0, 0){\line(1,0){20}}
\end{picture}
と\
\begin{picture}(0, 30)
\put(0, 0){\line(0,1){30}}
\end{picture}
で作られる長方形の面積ととらえるのです。
そういうことなら、掛け算ではどんな分数どうしでも計算が可能になります。なぜなら、どんな分数の値も数直線上に測れますし、それを横と縦に置けば必ず長方形ができるのですから。よって$\displaystyle \frac{2}{3}\times\frac{3}{4}$は\MULTOBJ であると言えるのです。
では、その面積は分数を使ってどのように表せばよいのでしょうか。
掛け算が足し算から離れて面積を求める計算であると言っても、できあがった\MULTOBJ が\UNIT{10}を何等分したかが分からなければいけません。
そこで、ここでも視野を広げて考えることにします。
足し算の場合は横に加えることをしたので、$\UNIT{6.67}+\UNIT{7.5}$であればそれぞれを\UNIT{0.83}に等分した上で、$(\UNIT{0.83}+\UNIT{0.83}+\UNIT{0.83}+\UNIT{0.83}+\UNIT{0.83}+\UNIT{0.83}+\UNIT{0.83}+\UNIT{0.83})+(\UNIT{0.83}+\UNIT{0.83}+\UNIT{0.83}+\UNIT{0.83}+\UNIT{0.83}+\UNIT{0.83}+\UNIT{0.83}+\UNIT{0.83}+\UNIT{0.83}) = \UNIT{14.17}$とすることができました。ところが、掛け算では等分する暇を与えず、いきなり\MULTOBJ を作るものですから、後から\MULTOBJ をどう等分しても\UNIT{0.83}より短いものしかできません。すると\UNIT{10}を何等分したか分かりません。
そのために等分の仕方を工夫する必要が生じます。工夫は次のようにします。
まず$\displaystyle \frac{2}{3}$の分母が$3$であることから、$\displaystyle \frac{2}{3}$ は\UNIT{10}の$3$等分を基本にして\
\begin{picture}(10, 10)
\put(0, -2){\dashbox(10, 10){}}
\multiput(0, -2)(3.33, 0){2}{\framebox(3.33, 10){}}
\end{picture}
と分けます。一方、$\displaystyle \frac{3}{4}$の分母が$4$であることから、$\displaystyle \frac{3}{4}$は\UNIT{10}の$4$等分が基本です。しかし、こちらは掛け算の際には、長方形の縦の辺になることから、縦の辺を$4$等分します。よって\
\begin{picture}(10, 10)
\put(0, -2){\dashbox(10, 10){}}
\multiput(0, -2)(0, 2.5){3}{\framebox(10, 2.5){}}
\end{picture}
です。
しかしこの等分の仕方では、これらをどのように加えても\MULTOBJ にすることはできません。そもそも同じものに分割されてないのですから。そこでもう一歩踏み込むことにします。
\begin{picture}(10, 10)
\put(0, -2){\dashbox(10, 10){}}
\multiput(0, -2)(3.33, 0){2}{\framebox(3.33, 10){}}
\end{picture}
については、掛け算の相手方の等分する数にあたる$4$で、また\
\begin{picture}(10, 10)
\put(0, -2){\dashbox(10, 10){}}
\multiput(0, -2)(0, 2.5){3}{\framebox(10, 2.5){}}
\end{picture}
についても、相手方の等分する数にあたる$3$で、さらに等分しましょう。すると、それぞれ\
\begin{picture}(10, 10)
\put(0, -2){\dashbox(10, 10){}}
\multiput(0, -2)(3.33, 0){2}{\framebox(3.33, 10){}}
\multiput(0, 0.5)(0, 2.5){3}{\line(1,0){6.67}}
\end{picture}
と\
\begin{picture}(10, 10)
\put(0, -2){\dashbox(10, 10){}}
\multiput(0, -2)(0, 2.5){3}{\framebox(10, 2.5){}}
\multiput(3.33, -2)(3.33, 0){2}{\line(0,1){7.5}}
\end{picture}
となって、細かく砕かれた同じものを基本にできます。
こうしておけば、\MULTOBJ は\MULTUNIT が集まってできたものと考えることができ、それらは皆同じものですから加えることが可能です。先に横に$\MULTUNIT+\MULTUNIT$と延ばして$2$(
\begin{picture}(10, 10)
\put(2.5, -2){\framebox(6.67, 2.5){}}
\end{picture}
)を作った後で$2+2+2$と上に加えるか、先に縦に$\MULTUNIT+\MULTUNIT+\MULTUNIT$と加えて$3$(
\begin{picture}(10, 10)
\put(2.5, -2){\framebox(3.33, 7.5){}}
\end{picture}
)を作った後で$3+3$と横に延ばすかは自由です。いずれにせよ$6$つの\MULTUNIT の集まりです。この計算を私たちは$2\times3 = 6$もしくは$3\times2 = 6$と記述しています。
さて、\MULTOBJ は\MULTUNIT が$6$つ集まっていることは分かりましたが、では、\MULTUNIT は\UNIT{10}を何等分したものでしょうか。それは、縦に$3$等分したものをさらに横に$4$等分しています。いま$2\times3 = 6$としたときと同じ考えをすれば、\UNIT{10}は\MULTUNIT が$12$個集まっていることが分かるでしょう。つまり\MULTUNIT は\UNIT{10}を$12$等分しています。この等分にあたる数を求めるのに、私たちは$3\times4 = 12$もしくは$4\times3 = 12$と記述しています。
長々とした話になってしまいましたが、$\displaystyle \frac{2}{3}\times\frac{3}{4}$の計算は、\UNIT{10}を$12$等分した\MULTUNIT を$6$つ集めたものになります。その際、$12$にあたる数は$3\times4$で、また$6$にあたる数は$2\times3$で求めたので、結局
\begin{eqnarray*}
\frac{2}{3}\times\frac{3}{4} &=& \frac{2\times3}{3\times4} \\
&=& \frac{6}{12}
\end{eqnarray*}
であるのです。
さらに付け加えるなら、$2\times3 = 2+2+2$であるように、$\displaystyle \frac{2}{3}\times\frac{3}{4}$も足し算であると言ってもかまいません。さっきは$\displaystyle \frac{2}{3}\times\frac{3}{4}$でいきなり\MULTOBJ としましたが
\begin{eqnarray*}
\frac{2}{3}\times\frac{3}{4} &=& \MULTOBJ \\
&=& \begin{picture}(10, 10)\put(0, -2){\dashbox(10, 10){}}\put(0, -2){\framebox(6.67, 7.5){}}\put(3.33, -2){\line(0,1){7.5}}\multiput(0, 0.5)(0, 2.5){2}{\line(1,0){6.67}}\end{picture} \\
&=& \MULTUNIT+\MULTUNIT+\MULTUNIT+\MULTUNIT+\MULTUNIT+\MULTUNIT
\end{eqnarray*}
と見れば、まったく同じものの集まりなので足すことができます。\UNIT{10}を$1$と記述したように、\MULTUNIT は\UNIT{10}の$12$等分ですから$\displaystyle \frac{1}{12}$と記述します。前節の話題で用いた$1_{[12]}$の表記を使うと
\begin{eqnarray*}
\frac{2}{3}\times\frac{3}{4} &=& 1_{[12]}+1_{[12]}+1_{[12]}+1_{[12]}+1_{[12]}+1_{[12]} \\
&=& 6_{[12]}
\end{eqnarray*}
になるのです。
\end{document}