% (-7) ÷ 3,余りはいくつ?

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\begin{document}

\section*{◆$(-7)\div3$、余りはいくつ?◆}

$7\div3$の計算を整数の範囲ですれば「$7\div3 = 2$、余り$1$」とします\footnote{等号``$=$''はあくまでも左辺と右辺が等しいときに使うもので、このような使い方は好ましくありません。しかし私たちの習慣として、この章ではこのままにしておきます。実際プログラム言語では\verb|7/3 = 2|となることがあるので、こだわりすぎても仕方ありません。} 。それなら$(-7)\div3$ではどうでしょう? 割られる数が$7$から$-7$になったので「$(-7)\div3 = -2$、余り$-1$」とするのが妥当でしょうか。この例を実生活の中から探すと次のようなものが当てはまります。$7$万円の品物を買うとき$3$回の分割払いにしたとします。この時点では品物を先に受け取るので、実質的に借金をしたことになるでしょう。借金を意味するために$-7$を使います。一回につき払う$1$万円未満の端数は、この場でまとめて頭金として払うことにします。頭金が余りに相当しています。すると、一回あたり$2$万円の分割返済にして、いまは$1$万円を置いていけばよいことになります。これが
\[
(-7)\div3 = -2、\quad 余り\ -1
\]
で表される式の内容です。

実用にはこれでよいのでしょうが、ここで終ってしまっては話題にした意味がありません。私は別の見解をもっています。私の見解は
\begin{equation}
(-7)\div3 = -3、\quad 余り\ 2 \label{-7Div3Eq-3_2}
\end{equation}
です。このような結果になったことについて話しましょう。

まず
\begin{equation}
A\div B = C、\quad 余り\ R \label{ADivBEqC_R}
\end{equation}
は普通$A,~C,~R \ge 0$, $B > 0$の条件下で行われる計算です。しかも余り$R$は割る数$B$より小さくなくてはなりません。つまり「$7\div3 = 2$、余り$1$」であって、「$7\div3 = 1$、余り$4$」のようなことはないのです。すると(\ref{ADivBEqC_R})は
\begin{equation}
A = BC+R、\quad (0 \le R < B) \label{AEqBC+R}
\end{equation}
と同値です。(\ref{AEqBC+R})を見る限り$A$や$C$が負の数であってもかまわないような印象を受けます。それなら(\ref{AEqBC+R})を$A,~C < 0$の範囲にまで拡張してもよさそうです。

$A,~C < 0$の範囲にまで拡張したといっても$(0 \le R < B)$は変わりありませんから、$(-7)\div3$の計算は(\ref{-7Div3Eq-3_2})とするのがよいでしょう。

このことをもう少し詳しく考察してみます。

$7\div3$と$(-7)\div3$の違いを一般的な見方を含めて考えるために
\[
A\div3 = C、\quad 余り\ R
\]
を$A$の値を変化させて探ることにします。$A$の値が一つ決まれば自動的に$C$と$R$は決まります。しかし$A$の変化に対して$C$と$R$の変化をすべて一緒に扱うのはつらいので、ひと組ずつの変化を観察してみます。

「$A$と$C$の関係」と「$A$と$R$の関係」をそれぞれ見ましょう。

\begin{center}
\begin{tabular}{l||ccccccccccc}
$A\ (割られる数)$ & $0$ & $1$ & $2$ & $3$ & $4$ & $5$ & $6$ & $7$ & $8$ & $9$ & $\dots$ \\ \hline\hline
$C\ (商)$ & $0$ & $0$ & $0$ & $1$ & $1$ & $1$ & $2$ & $2$ & $2$ & $3$ & $\dots$ \\ \hline
$R\ (余り)$ & $0$ & $1$ & $2$ & $0$ & $1$ & $2$ & $0$ & $1$ & $2$ & $0$ & $\dots$
\end{tabular}
\end{center}

表には$A$、$C$、$R$の変化が同時に書いてあります。そのうち「$A$と$C$の関係」と「$A$と$R$の関係」をグラフに表したのが次の図です。

\newcommand\Axis[2]{
\draw[->] (-12, 0) -- (12, 0) node[right] {$#1$};
\foreach \x in {-11, -10, ..., 11} \draw (\x, 0.1) -- (\x, -0.1);
\foreach \x in {-10, -5, 5, 10} \draw (\x, 0) node[below] {\footnotesize$\x$};
\draw[->] (0, -12) -- (0, 12) node[above] {$#2$};
\foreach \y in {-11, -10, ..., 11} \draw (0.1, \y) -- (-0.1, \y);
\foreach \y in {-10, -5, 5, 10} \draw (0, \y) node[left] {\footnotesize$\y$};
}
%
\begin{center}
\begin{tikzpicture}[scale=0.22]
\begin{scope}[shift={(-16, 0)}]
\Axis{A}{C}
\foreach \x / \y in {0/0, 1/0, 2/0, 3/1, 4/1, 5/1, 6/2, 7/2, 8/2, 9/3, 10/3, 11/3} \fill (\x, \y) circle (6pt);
\end{scope}
%
\begin{scope}[shift={(16, 0)}]
\Axis{A}{R}
\foreach \x / \y in {0/0, 1/1, 2/2, 3/0, 4/1, 5/2, 6/0, 7/1, 8/2, 9/0, 10/1, 11/2} \fill (\x, \y) circle (6pt);
\end{scope}
\end{tikzpicture}
\end{center}

グラフは正の数における割り算の関係を私たちに見せてくれます。$A$と$C$の関係はどことなく比例関係に近いように見えます。また、$A$と$R$の関係は常に$R$が$0$と$2$の間にあるように見えます。

そう考えると$A < 0$の部分までグラフがあるとすれば、それぞれ次ページに示す図のようになっていると考えるのが自然かもしれません。$A < 0$の部分を描き入れた図のそれぞれから、$A$が$-7$のときの$C$と$R$を調べるとそれぞれ$C = -3$, $R = 2$であることが見てとれます(それぞれのグラフ中の{\footnotesize ◎})。このことからも
\[
(-7)\div3 = -3、\quad 余り\ 2
\]
としたいものです。

\begin{center}
\begin{tikzpicture}[scale=0.22]
\begin{scope}[shift={(-16, 0)}]
\Axis{A}{C}
\foreach \x / \y in {0/0, 1/0, 2/0, 3/1, 4/1, 5/1, 6/2, 7/2, 8/2, 9/3, 10/3, 11/3} \fill (\x, \y) circle (6pt);
\foreach \x / \y in {-1/-1, -2/-1, -3/-1, -4/-2, -5/-2, -6/-2, -7/-3, -8/-3, -9/-3, -10/-4, -11/-4} \fill (\x, \y) circle (6pt);
\draw (-7, -3) circle (9pt); \draw[dashed] (-7, 0) |- (0, -3);
\end{scope}
%
\begin{scope}[shift={(16, 0)}]
\Axis{A}{R}
\foreach \x / \y in {0/0, 1/1, 2/2, 3/0, 4/1, 5/2, 6/0, 7/1, 8/2, 9/0, 10/1, 11/2} \fill (\x, \y) circle (6pt);
\foreach \x / \y in {-1/2, -2/1, -3/0, -4/2, -5/1, -6/0, -7/2, -8/1, -9/0, -10/2, -11/1} \fill (\x, \y) circle (6pt);
\draw (-7, 2) circle (9pt); \draw[dashed] (-7, 0) |- (0, 2);
\end{scope}
\end{tikzpicture}
\end{center}

では、話のついでに$7\div(-3)$だったら商と余りをどう考えましょう。もうこの域になると、計算式を日常の中に見つけることは不可能です。せいぜい「どのように考えたらつじつまが合うか」という話になるものと思われます。

$A\div B$において割る数$B$の変化と、そのときの商と余りを追跡するために
\[
7\div B = C、\quad 余り\ R
\]
を例にとって考えます。これもさっき同様に「$B$と$C$の関係」と「$B$と$R$の関係」をそれぞれ見ましょう。

\begin{center}
\begin{tabular}{l||ccccccccccc}
$B\ (割る数)$ & $1$ & $2$ & $3$ & $4$ & $5$ & $6$ & $7$ & $8$ & $9$ & $10$ & $\dots$ \\ \hline\hline
$C\ (商)$ & $7$ & $3$ & $2$ & $1$ & $1$ & $1$ & $1$ & $0$ & $0$ & $0$ & $\dots$ \\ \hline
$R\ (余り)$ & $0$ & $1$ & $1$ & $3$ & $2$ & $1$ & $0$ & $7$ & $7$ & $7$ & $\dots$
\end{tabular}
\end{center}

表を見る限り際立った規則があるようには見えませんが、$B > 7$の先は常に$C = 0$, $R = 7$になります。割られる数$7$より割る数$B$が大きくなるので商が$0$となるのは当然です。とりあえずここまでの関係をグラフ化しておきましょう。

\begin{center}
\begin{tikzpicture}[scale=0.22]
\begin{scope}[shift={(-16, 0)}]
\Axis{B}{C}
\foreach \x / \y in {1/7, 2/3, 3/2, 4/1, 5/1, 6/1, 7/1, 8/0, 9/0, 10/0, 11/0} \fill (\x, \y) circle (6pt);
\end{scope}
%
\begin{scope}[shift={(16, 0)}]
\Axis{B}{R}
\foreach \x / \y in {1/0, 2/1, 3/1, 4/3, 5/2, 6/1, 7/0, 8/7, 9/7, 10/7, 11/7} \fill (\x, \y) circle (6pt);
\end{scope}
\end{tikzpicture}
\end{center}

このグラフの振る舞いから$B < 0$の部分を想像したいのですが、このままでは決め手に欠けるような気がします。しかし$B$と$C$の関係のグラフからは、反比例のグラフに似た規則が見られます。そうなると$B < 0$の部分は$B > 0$の部分を上下反転させたものになると考えられます。

その決め手となるのは$7\div(-1)$や$7\div(-7)$のような余り$0$の割り算です。この計算はあれこれ悩むことなく$C$の値が$-7$や$-1$と定まります。それ以外の商$C$もこのように定めれば、$B < 0$における部分は$B > 0$における部分の延長とみられるでしょう。すると余り$R$は自動的に決まりますから、その結果は次の図のようになるはずです。うまいことに余り$R$は$R \ge 0$になりました。

\begin{center}
\begin{tikzpicture}[scale=0.22]
\begin{scope}[shift={(-16, 0)}]
\Axis{B}{C}
\foreach \x / \y in {1/7, 2/3, 3/2, 4/1, 5/1, 6/1, 7/1, 8/0, 9/0, 10/0, 11/0} \fill (\x, \y) circle (6pt);
\foreach \x / \y in {-1/-7, -2/-3, -3/-2, -4/-1, -5/-1, -6/-1, -7/-1, -8/0, -9/0, -10/0, -11/0} \fill (\x, \y) circle (6pt);
\draw (-3, -2) circle (9pt); \draw[dashed] (-3, 0) |- (0, -2);
\end{scope}
%
\begin{scope}[shift={(16, 0)}]
\Axis{B}{R}
\foreach \x / \y in {1/0, 2/1, 3/1, 4/3, 5/2, 6/1, 7/0, 8/7, 9/7, 10/7, 11/7} \fill (\x, \y) circle (6pt);
\foreach \x / \y in {-1/0, -2/1, -3/1, -4/3, -5/2, -6/1, -7/0, -8/7, -9/7, -10/7, -11/7} \fill (\x, \y) circle (6pt);
\draw (-3, 1) circle (9pt); \draw[dashed] (-3, 0) |- (0, 1);
\end{scope}
\end{tikzpicture}
\end{center}

グラフから$7\div(-3)$に相当する$B = -3$を読み取ると
\[
7\div(-3) = -2、\quad 余り\ 1
\]
であることがわかります。

以上のようにすればつじつまが合いそうですが、たった一つ不具合が生じました。それは余り$R$は$(0 \le R < B)$としてきましたが、$B < 0$の割り算ではこの不等号の関係がおかしくなります。そこで$R$の条件については$(0 \le R < |B|)$としておけば混乱をきたすことはないはずです。

そしてこの余り$R$の条件を守ることで$(-7)\div(-3)$の計算もできるようになります。$(0 \le R < |-3|)$の条件に注意すれば
\[
(-7)\div(-3) = 3、\quad 余り\ 2
\]
です。

しかし日常感覚では「$(-7)\div3 = -2$、余り$-1$」に軍配をあげることを否定しませんし、プログラム言語やソフトウェアでも解釈(仕様)はまちまちのようです。

\end{document}