% 掟破りの $y = (-2)^x$ のグラフ
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\begin{document}
\section*{◆掟破りの$y = (-2)^x$のグラフ◆}
\subsection*{$y = (-2)^x$の関係}
私たちは、関係$y = 2^x$を$x$の値を決めると$y$の値が求まるものとして見ています。そして、無数の$(x,~y)$の組を$xy$平面に打てば、$y = 2^x$のグラフ---この場合は指数関数---を見ることができるのです。
一般に、指数関数の底は正の数ということになっていますが、底を負の値にした$y = (-2)^x$でも、\.適\-\.当\-\.な$x$の値を決めると$y$の値が定まります。「適当な」と断っているのは、たとえば$\displaystyle x = \frac{1}{2}$では$y = (-2)^\frac{1}{2} = \sqrt{-2}$のことですから実数値が求められません。しかし$\displaystyle x = \frac{1}{3}$であれば$y = (-2)^\frac{1}{3} = \sqrt[3]{-2}$のことですから$y = -1.2599\cdots$のように\.一\-\.応\-\.の値が定まります\footnote{$\sqrt[3]{-2}$の値をこのように定義することはできますが、一般に$\sqrt[n]{a}$は$a > 0$に限って定義されるものです。}。つまり$\displaystyle (\frac{1}{3},~-1.2599\cdots)$の位置に点を打つことができるのです。そういうことなら、多くの点を打ってみて、その振る舞いから$y = (-2)^x$のグラフの形を想像することができるでしょう。
\subsection*{点を打つ(1)}
最初は$y = (-2)^x$の$x$に整数値を代入します。$x < 0$における計算は、$\displaystyle a^{-n} = \frac{1}{a^n}$の定義に従っています。
\begin{center}
\begin{tabular}{c|c|c|c|c|c|c|c|c|c|c|c}
$x$ & $\cdots$ & $-4$ & $-3$ & $-2$ & $-1$ & 0 & 1 & 2 & 3 & 4 & $\cdots$\\ \hline
$y$ & $\cdots$ & $\frac{1}{16}$ & $-\frac{1}{8}$ & $\frac{1}{4}$ & $-\frac{1}{2}$ & 1 & $-2$ & 4 & $-8$ & 16 & $\cdots$\\
\end{tabular}
\end{center}
\def\graphdots{ %点
\put(-4, .0625){\circle*{.2}}
\put(-3, -.125){\circle*{.2}}
\put(-2, .25){\circle*{.2}}
\put(-1, -.5){\circle*{.2}}
\put(0, 1){\circle*{.2}}
\put(1, -2){\circle*{.2}}
\put(2, 4){\circle*{.2}}
}
\vspace{.33\baselineskip}
\begin{drawpict}[.3cm](32, 24)(-6, -8) %tmtmath.sty
\coordinate[R](-6, 6)(-8, 16) %座標軸
\graphdots
\put(3, -8){\circle*{.2}}
\put(4, 16){\circle*{.2}}
\baseskip{20}
\coordinate[R](-6, 6)(-8, 16)
\graphdots
\put(3, -8){\circle*{.2}}
\put(4, 16){\circle*{.2}}
\put(-4, .0625){\line(1000,-188){1}} %線で結ぶ
\put(-3, -.125){\line(1000,375){1}}
\put(-2, .25){\line(1000,-750){1}}
\put(-1, -.5){\line(100,150){1}}
\put(0, 1){\line(100,-300){1}}
\put(1, -2){\line(100,600){1}}
\put(2, 4){\line(10,-120){1}}
\put(3, -8){\line(10,240){1}}
\end{drawpict}
左図のグラフから、正負の値が交互に現われていることがわかります。最終的にグラフが線の形になるなら、右図のようなジグザグに波打つグラフになると思われます。しかし、これだけでは何とも言いようがありませんので、もう少し多くの点を打つ必要がありそうです。
\subsection*{点を打つ(2)}
多くの点を打つ場合、次に考えたいのが整数の中央の値です。いわゆるxx$.5$なる数です。ところがこの値は$n$を整数として$\displaystyle \frac{n}{2}$の形になりますが、$(-2)^\frac{n}{2}$は$(\sqrt{-2})^n$の意味で使っているので、$x$がxx$.5$の数では値が複素数になって実数値になりません。しかし$x$が整数値の$3$分点、つまり$\displaystyle x = \frac{1}{3}$や$\displaystyle x = \frac{2}{3}$の分点ならば$(-2)^x$は$m$を整数として$(-2)^\frac{m}{3}$の形になります。これなら$(\sqrt[3]{-2})^m$の意味で使えるので何とか値を求められそうです。
次の表は$0 < x < 3$の範囲の$3$分点を用いて$(-2)^x$の値を求めたものです。
\begin{center}
\begin{tabular}{c|c|c|c|c|c|c|c|c|c|c}
$x$ & $\cdots$ & $\frac{1}{3}$ & $\frac{2}{3}$ & $1$ & $\frac{4}{3}$ & $\frac{5}{3}$ & 2 & $\frac{7}{3}$ & $\frac{8}{3}$ & $\cdots$\\ \hline
& $\cdots$ & $\sqrt[3]{-2}$ & $(\sqrt[3]{-2})^2$ & $(-2)^1$ & $(\sqrt[3]{-2})^4$ & $(\sqrt[3]{-2})^5$ & $(-2)^2$ & $(\sqrt[3]{-2})^7$ & $(\sqrt[3]{-2})^8$ & $\cdots$\\
$y$ & & $\downarrow$ & $\downarrow$ & $\downarrow$ & $\downarrow$ & $\downarrow$ & $\downarrow$ & $\downarrow$ & $\downarrow$ & \\
& $\cdots$ & $-1.26$ & $1.59$ & $-2$ & $2.52$ & $-3.17$ & $4$ & $-5.04$ & $6.35$ & $\cdots$\\
\end{tabular}
\end{center}
そして、これらの点を先ほどの図に付け加えたのが次の図です---グラフには$-4 < x < 3.5$の範囲で$3$分点を打ってあります。
\vspace{.33\baselineskip}
\begin{drawpict}[.4cm](12, 15)(-6, -5) %tmtmath.sty
\coordinate[R](-6, 6)(-5, 10) %座標軸
\graphdots
\put(-3.667, -.08){\circle*{.2}} %点
\put(-3.333, .1){\circle*{.2}}
\put(-2.667, .157){\circle*{.2}}
\put(-2.333, -.198){\circle*{.2}}
\put(-1.667, -.315){\circle*{.2}}
\put(-1.333, .397){\circle*{.2}}
\put(-.667, .63){\circle*{.2}}
\put(-.333, -.794){\circle*{.2}}
\put(.333, -1.26){\circle*{.2}}
\put(.667, 1.587){\circle*{.2}}
\put(1.333, 2.52){\circle*{.2}}
\put(1.667, -3.175){\circle*{.2}}
\put(2.333, -5.04){\circle*{.2}}
\put(2.667, 6.35){\circle*{.2}}
\put(3.333, 10.08){\circle*{.2}}
\end{drawpict}
こうなるとグラフも形らしきものができあがります。この先$5$分点も計算すればもっと正確な形を見ることができるでしょうが、おそらくいまの点と点の間を埋めるようになると思われます。これは、どういうことでしょうか。
もしかして$y = (-2)^x$のグラフというのは、$y = 2^x$のグラフと同じ形が$x$軸の上下に作られるのでしょうか。いいえ、そうではないはずです。なぜなら$3$分点を計算してわかることですけど、$y$の値は正負交互に出現しています。私たちの感覚では、グラフというものは$x$軸の左から右に向かって、なめらかに結ぶものだったはずです。もしその感覚が正しいのなら、点と点は前出の図よりも激しい波打ちかたで、ジグザグにつながっていくはずです。
しかしよく考えると不審な点があります。いまは$x$の$3$分点に対する点を打っただけですが、この先$5$分点, $7$分点, \ldots と繰り返しても、打たれる点は$y = 2^x$上か$y = -2^x$上にしか分布しないような気がします。グラフが波打つのなら、点が波形を形作るように並んでいかなくてはならないはずですから、$y = 2^x$と$y = -2^x$に挟まれた部分にも点が現れなくてはいけないはずです。ところがその場所には点が出現しそうにありません。
すると$y = (-2)^x$のグラフというのは、ぱっと見には$x$軸の上下に$2$つの曲線があるようで、その実$\displaystyle x = \frac{m}{n}$に対して上か下のどちらか一方にだけその値があるような形なのでしょうか。こんな感覚は今までになかったものです。どうやら既存の考えでは$y = (-2)^x$のグラフは$xy$平面に描けそうにありません。何か別の方法を考えなくてはならないようです。
\subsection*{$xy$平面から複素空間へ}
私たちは$xy$平面に$y = (-2)^x$のグラフを描こうとして失敗してしまったようです。その最大の原因は、値を求められないものが多すぎたことではないでしょうか。$3$分点や$5$分点のような奇分点でのみ$y$の値が求められ、中間点や$4$分点のような偶分点では$y$の値が求められないのです。
もちろん$\displaystyle y = \frac{1}{x}$のように$x = 0$で定義されない関数は容易にグラフにすることができます。ですから定義できない点が関数にあってはいけないことはないのです。しかし$y = (-2)^x$では定義できないところが多すぎます。何とかならないものでしょうか。
そこで登場するのが、虚数単位$i$です。いわゆる複素数への拡張です。そうすれば私たちは$\displaystyle x = \frac{1}{2}$のときの$(-2)^\frac{1}{2}$の値を$\sqrt{-2} = 2i$と求められるばかりでなく、すべての偶分点の値を求めることが可能となります。しかし問題も生じます。いくら$y$の値が求められても$xy$平面には点を打てません。どうしても点を打ちたいというのであれば、複素数を表示できる複素平面が必要になるわけです。今私たちが考えている関数は、実数値$x$をとる$y = (-2)^x$です。このとき$y$の値が複素数になることもあるので、こちらには複素平面が必要になります。要するに今の私たちに必要なものは、実数軸$x$と複素平面$yI$で十分です。
\def\xyAxis{
{\thicklines
\put(-6, 2){\vector(12,-4){12}} %x軸
\put(6, -2.1){\makebox(0, 0)[rt]{$x$}}
\put(0, -6){\vector(0,1){12}} %y軸
\put(-.1, 6){\makebox(0, 0)[rt]{$y$}}
\put(0, -.1){\makebox(0, 0)[rt]{$O$}}
} }
\def\xyPlane{
{\thinlines
\put(-6, -4){\line(12,-4){12}} %xy面
\put(6, -8){\line(0,1){12}}
\put(6, 4){\line(-12,4){12}}
\put(-6, 8){\line(0,-1){12}}
} }
\vspace{.33\baselineskip}
\begin{drawpict}[.35cm](10, 14)(-5, -7) %tmtmath.sty
\xyAxis
\xyPlane
\thicklines\put(-9, -3){\line(12,4){9}} %I軸
\thinlines\put(0, 0){\line(12,4){6}}
\thicklines\put(6, 2){\vector(12,4){3}}
\put(9, 2.8){\makebox(0, 0)[rt]{$I$}}
\end{drawpict}
十分と言っても、図からわかるように、もはや平面の域に収まらず空間的な広がりになっています。$y = (-2)^x$のグラフを考えようとするときに、$xy$平面では役不足だったのです。図で、$I$軸の方向が奥を向いているのは、後で右手前から見た$yI$面を利用したいためです。
\subsection*{$y = (-2)^x$のグラフ}
ここまで、$y = (-2)^x$のグラフの形を探ってきましたが、実数軸$x$と複素平面$yI$が必要になりました。しかし今までの考えを踏襲すると、$x$が奇分点か偶分点かで扱いが変わって面倒です。しかもこの考えでは$x$の値は有理数に限られてしまいます。できることならすべての実数値を扱いたいものです。つまり$y = (-2)^x$の式のままでは、$x$にすべての実数を当てはめるには無理があるのです。
そこで$-2$を極形式で表わした$-2 = 2\cdot(-1) = 2(\cos\pi +i\sin\pi)$を用いることにします。ここで「ド・モアブルの定理\footnote{ド・モアブル(1667--1754):フランスの数学者。}」
\[
(\cos\theta +i\sin\theta)^n = \cos n\theta +i\sin n\theta
\]
のお世話になりましょう。本来この式は$n$が自然数のときに使われるものなのですが、すでに底が正であるはずの指数関数に、負の底を用いる掟破りをしています。掟破りついでに、ここでも$n$が自然数であることにはこだわらないことにしましょう。
すると私たちがグラフ化したい関数は
\[
y = \{2(\cos\pi +i\sin\pi)\}^x
\]
になります。ここに拡大解釈したド・モアブルの定理を使って
\[
y = 2^x(\cos\pi x +i\sin\pi x)
\]
の式を得ます。$2^x$がなければ$(\cos\pi x +i\sin\pi x)$から得られる値は、複素平面で半径$1$の円周上を埋め尽くします。そのときの周期は$2\pi$です。
しかし$2^x$があるために一周期ごとに半径が$2^x$倍になっていきます。正確には$x$が徐々に大きくなれば、打たれる点は原点から$2^x$だけ離れます。つまり図のような螺旋ができあがるでしょう。
\vspace{.33\baselineskip}
\begin{drawpict}[.4cm](16, 16)(-8, -8) %tmtmath.sty
\coordinate(-8, 8)(-8, 8)
\multiput(-7, -.1)(1, 0){15}{\line(0,1){.2}} %I目盛
\put(8, -,1){\makebox(0, 0)[rt]{$I$}}
\put(-5, -.1){\makebox(0, 0)[t]{$-5i$}}
\put(5, -.1){\makebox(0, 0)[t]{$5i$}}
\multiput(-.1, -7)(0, 1){15}{\line(1,0){.2}} %y目盛
\put(-.1, 8){\makebox(0, 0)[rt]{$y$}}
\put(-.1, -5){\makebox(0, 0)[r]{$-5$}}
\put(-.1, 5){\makebox(0, 0)[r]{$5$}}
\qbezier(0, .0625)(.079, .069)(.0883, 0) %螺旋
\qbezier(.0883, 0)(.097, -.11)(0, -.125)
\qbezier(0, -.125)(-.16, -.14)(-.1767, 0)
\qbezier(-.1767, 0)(-.19, .225)(0, .25)
\qbezier(0, .25)(.32, .275)(.3536, 0)
\qbezier(.3536, 0)(.39, -.45)(0, -.5)
\qbezier(0, -.5)(-.64, -.55)(-.7071, 0)
\qbezier(-.7071, 0)(-.78, .9)(0, 1)
\qbezier(0, 1)(1.3, 1.1)(1.414, 0)
\qbezier(1.414, 0)(1.6, -1.8)(0, -2)
\qbezier(0, -2)(-2.5, -2.2)(-2.828, 0)
\qbezier(-2.828, 0)(-3.1, 3.6)(0, 4)
\qbezier(0, 4)(5.1, 4.4)(5.657, 0)
\qbezier(5.657, 0)(6.2, -7.2)(0, -8)
\end{drawpict}
ところで、この螺旋は複素平面$yI$上に描かれているように見えます。しかし実際は$x$の変化にともなって$y$の値が決まっていますから、$yI$平面に螺旋を描いてしまっては$x$の変化を無視していることになります。$x$の変化を反映させるには、$yI$平面に$x$軸を垂直に付け加えた、先ほどの複素空間で見なくてはなりません\footnote{定義域と値域が共に複素数である本来の複素空間は、$2$つの実数軸と$2$つの虚数軸の計$4$つの軸が互いに垂直に交わっています。これは$4$次元空間を作るので私たちは目にすることができません。ここで言う複素空間は定義域が実数値のみ、値域が複素数である$3$次元空間を指しています。}。
結果は$x\to-\infty$から$x\to\infty$へ向かって、螺旋が徐々に大きな弧を描きながら$x$軸の周りを回っていくようなグラフになるはずです(左図)。ここから$x$軸と$y$軸で作られる平面を抜き出したものが、私たちがふだん目にする$xy$平面のグラフなのです(右図)。
\def\holedots{
\put(-4, 1.396){\circle{.2}} %x整数点
\put(-3, .875){\circle{.2}}
\put(-2, .917){\circle{.2}}
\put(-1, -.167){\circle{.2}}
\put(0, 1){\circle{.2}}
\put(1, -1.677){\circle{.2}}
\put(2, 4.667){\circle{.2}}
\put(3, -7){\circle{.2}}
}
\vspace{.33\baselineskip}
\begin{drawpict}[.35cm](28, 14)(-5, -7) %tmtmath.sty
\xyAxis
\put(-6, -2){\vector(12,4){12}} %I軸
\put(6, 2.8){\makebox(0, 0)[rt]{$I$}}
\holedots
\qbezier(-4, 1.396)(-3.5, .875)(-3, .875) %線で結ぶ
\qbezier(-3, .875)(-2.5, .917)(-2, .917)
\qbezier(-2, .917)(-.9, .75)(-.9, 0)
\qbezier(-.9, 0)(-.9, -.08)(-1, -.167)
\qbezier(-1, -.167)(-1.2, .417)(-1.1, .417)
\qbezier(-1.1, .417)(-.9, 1)(0, 1)
\qbezier(0, 1)(1.35, .75)(1.5, -.339)
\qbezier(1.5, -.399)(1.5, -1.677)(1, -1.677)
\qbezier(1, -1.677)(-.5, -1.677)(-.5, 1.495)
\qbezier(-.5, 1.495)(-.5, 4.667)(2, 4.667)
\qbezier(2, 4.667)(4.75, 4.667)(4.75, -1.17)
\qbezier(4.75, -1.17)(4.75, -7)(3, -7)
\baseskip{18}
\xyAxis
\xyPlane
\holedots
\end{drawpict}
するとどうでしょう。螺旋が$xy$平面を横切るときにそこに穴を空けますが、その穴こそ最初に見ていた点なのです。結局$y = (-2)^x$のグラフを$xy$平面に描けば、$x$の整数値だけに点があるグラフにしかならず、それ以上でもそれ以下でもなかったのです。
\end{document}