% 上から目線の問題文

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\section*{▼上から目線の問題文▼}

むかし、むかし、算数・数学の問題文といえば『○○の\textgt{計算をせよ}。』とか『△△の面積を\textgt{求めよ}。』など、あからさまな命令口調の表現をしていたものだが、いつのい頃からか『○○の\textgt{計算をしなさい}。』とか『△△の面積を\textgt{求めなさい}。』など、命令というよりは指示口調の表現になって久しい。

さらには『○○の\textgt{計算をしましょう}。』とか『△△の面積を\textgt{求めましょう}。』など、妙に媚(こ)びた表現まで登場している。ちょっとお。オカシイだろ。算数・数学の教科書の問題文ってこと、分かってないでしょ。

算数・数学ってのは学問であって、本来、日常とは立ち位置が少し異なるものである。だから日常から離れて、特有の計算やら考え方が発展してきたのだ。で、その中で、日常に使えるものを中心に学んでいるに過ぎない。要するに、勉強はまず学問として習うものである。

学問だから当然、特有の言葉づかい---つまり専門用語---が登場するのは当たり前である。算数・数学において「\textgt{計算せよ}」や「\textgt{求めよ}」は専門用語である。なのに、それをわざわざ日常用語に言い換えてどうするの? ``正方形''を``真四角''と言うようなものでしょ。

おそらく、言葉づかいがキツイとかの``表面的な''理由で専門用語を日常用語に言い換えたのかもしれないが、『〜しなさい。』と言う方がよっぽど高圧的である。そういう場合、日常では『〜してください。』と言うのが一般的だろう。でも『○○の計算をしてください。』とせず、それどころか『○○の計算をしましょう。』なんて言っている。世も末だね。

そんなことだから『(算数・)数学は役に立たないから(学校で)教えなくてよい』などという輩(やから)が後を絶たないのだ。役に立たないと思えば、\textgt{あなたが}勉強しなければよいのであって、一般論にまで広げる話ではない。『(算数・)数学は専門の学問だから\textgt{学校で}教える』ものである。そして、学問には専門用語は付きものである。それが『\textgt{せよ}』だ。

小学校の低学年であれば、学問といってもピンとこないかもしれないので、『〜しましょう。』でも構わないが、高学年ともなれば学問という意識を持たせるためにも、『今後、算数では専門用語が多く登場します\footnote{実際、図形の学習においては専門の名称を使う。}。そのため、問題を解く指示でも``\textgt{せよ}''口調を用います。けっして上から目線ではないので、驚かないようにしましょう』と断ればすむ話である。

丁寧・親切にしたつもりが、かえって話をややこしくしてしまうことはあるものだ。なにも教科書が率先して、そうすることはないだろうに。

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