% 数学的な考え方って...

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\section*{▼数学的な考え方って$\dots$▼}

学校の勉強はいろいろある中で、数学が特に苦手な人にとって耳が痛いのは「論理的な考えができないからだ」と言われることかもしれない。でも私に言わせれば、数学ができない原因は論理的な考え方ができないことではない。そもそも論理的な考え方ができなければ、数学どころかほとんどの勉強はできないものだ。数学ができない原因は「数学的な考え方ができない」ことに尽きる。

じゃあ、数学的な考え方ってなんだ? それは数学的な見方とちょっと違う。別のところで述べたが、数学的な見方の一つは「比較して見る」ことだ。でも、それは見ているだけで考えているわけじゃない。数学的な考え方を少し挙げると
\begin{enumerate}
\item ことばを数式に変換する
\item いくつかのことがらを定義や定理でつなげる
\item いくつかのことがらから普遍的な事象を見つける
\end{enumerate}
などだろうか。

(1)は多くの人が経験済みだろう。文章を読んで式を立てるようなことだ。でも、単に公式に数値を当てはめるだけの作業では数学的な考え方は身につかない。それでは機械的に文字を数値に置き換える行為でしかないからだ。つまりは暗記である。数学的な考え方を身につけるためには、文章に書かれた内容がどのような``仕組み''になっているか見抜き、その仕組みを式にする必要がある。仕組みを見抜くことは数学的な考え方の一つである。

(2)は問題を読んで定理に当てはめることだと考えたなら、それは数学的な考え方とは言わない。暗記した型にはめているに過ぎない。あることがらから別のことがらを導くにために、背景にある定義や定理を介するのが数学的な考え方である。単に、あることがらは別のことがらに言い換えることができる、という置き換えなら暗記でしかない。数学的に考えて解いたのか暗記で解いたのかが如実にわかるのは証明問題かもしれない。証明問題は初めから正解が与えられていて、正解までの道筋を問うものだからだ。もっとも試験の答案を見ただけでは区別できないだろう。証明を丸暗記していればよいのだから。

しかし、(3)は丸暗記では対応できないだろう。たとえば、確率の問題などは状況に左右されない本質的な性質が見えないと、別解を考えたら違う答になってしまったりするものである。

いずれにしても数学的な考え方というのは、覚えたことを持ち出してきたり、何かと取り換えてみたりすることではないのだ。ならば、いま挙げた例のようなことを訓練すればよいかというと、実はそうじゃないのだ。ごめんね。でも、中学校や高校で習う数学なら例のような訓練を重ねられれば、初めて見るような問題でもなんとか解ける力はつくものである。もっとしょうもないことを言えば、学校の数学なら暗記で乗り越えられるんだな。だから、数学的な考え方が必要な人は、本当に数学を極めようとする人に限る。その場合の数学的な考え方とは、``本当の''数学的な考え方である。

じゃあ、それは何かというと、数学の定義・公理および定理だけからなる考え方である。もちろんそこには(1)、(2)、(3)のようなことは含まれるのだが、そのような具体的な方法ではなく、数学的に決められた抽象的な記号等を用いて考えることをいう。要するに、普通じゃないってことだ。数学的な考え方を、``本当に''数学的に考えてる人って滅多にいないのである。

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