% 数学でも実験は大事

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\section*{▼数学でも実験は大事▼}

実験は化学や物理の専売特許ではない。数学でも実験は必要なのだ。実験といっても器具や機材は必要としないけど。

入試というと、限られた時間の中で最大の得点を目指すものだから、問題は効率的に解いていかないとダメだ。そのために、暗記に頼る勉強法を勧める人もいるようだが、それはそれで構わない。多くのことを暗記して、機械的に処理できればよいのだから。

じゃあ、暗記に頼ってすべてがうまくいくのだろうか。合格点さえ越えれば後は知ったこっちゃないって考えなら、まあいいでしょう。でもね、人間に暗記できるものは、おそらく機械に組み込むことができるものだよ。機械に組み込めばあなたの出番はない。

人の裏をかいてやるつもりで作問しているのか、簡単な実験をさせることで道筋が分かるような作問をしているのか分からないが、なぜか入試問題には実験をすべき設問が多い気がする。設問といっても``誘導''なんかしてないやつね。実験というと大げさだけれど、要するに、問題を解く前にいくつかの数値などで具体的に試すことで、問題が意図することが明確になるような問題のことである。過去問は書かないけど、入試問題を丁寧にやっている人なら、結構遭遇していると思う。

でも、時間に余裕がないと感じていれば、悠長と思われることなんてしないものである。問題を読むなり、使える公式はないかとか、似た問題が過去になかったかとか考えるものだ。で、無駄に時間を使うことになって、よく分からない問題が手付かずで残るのだ。

パッと見で分からない問題は、とにかく手を動かすことである。図を描く、具体的な値を試す、別のことに置き換えてみる、等々。中でも具体的な値を試す``実験''は有効かつ大事な作業だろう。

普段から実験をする姿勢の人は案外少ないようだ。実は、小学校や中学校の数学の授業では実験は多く行われているのだ。じゃあ、なんで実験する姿勢が身につかないかというと、実験する意味のない実験になっているからだと思う。つまり、実験をするまでもなく結果が見えているようなことが多いのである。とくに塾なんかで先回りしている者は、なに面倒くさいことしてんだ、ぐらいにしか思ってないはずだ。

たとえば、比例の関係式で$y = 2x$や$y = -2x$を扱っているとしよう。ちょっと見れば、係数の$2$や$-2$が比例の関係に意味をなしていることはわかるものだ。でも、わざわざ
\begin{center}
\begin{tabular}{c|ccccccccc}
$x$ & $\dots$ & $-3$ & $-2$ & $-1$ & 0 & 1 & 2 & 3 & $\dots$ \\
$y$ & $\dots$ &&&&&&&& $\dots$
\end{tabular}
\end{center}
みたいな表を使って、調べるフリをしている。で、どんな関係が見えるかな?とか聞くんだ。アホか。そんなん、最初から分かっとるわい。

分かりきった結論に向かってする実験や議論ほど虚(むな)しいものはない。道徳の授業みたいなものだ。そんな実験を繰り返していれば、そりゃあ、数学に実験が必要なんて思うはずもないし、大事だとも思えないに決まってる。結局、機械的なんだ。そういうのは機械に任せよう。人は機械的じゃない実験をやること。数学の実験は、それをすることで初めて法則や道筋が見えるような場面で使わないと意味がない。それで機械にはできないであろう能力が身につくのだ。でも、実験のスピードは機械には到底かなわないんだけど。

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