% パーセントの使い分け

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\begin{document}

\section*{▼パーセントの使い分け▼}

新聞などでときどき``パーセント''と``ポイント''を使い分けている場面を見かける。たとえば
\begin{itemize}
\item A社のビール出荷量が$5$パーセント増え、B社のビール出荷量が$2$パーセント減った
\item A社のビール出荷量が$5$ポイント増え、B社のビール出荷量が$2$ポイント減った
\end{itemize}
などである。表現の違いはどこからくるのだろうか。

まず、``パーセント''の方だが、具体的な数値で言うなら
\begin{itemize}
\item A社:$100$ケース出荷 $\to$ $105$ケース出荷
\item B社:$50$ケース出荷 $\to$ $49$ケース出荷
\end{itemize}
の場合に、それぞれ$5$パーセントの増加と$2$パーセントの減少となる。

次に、``ポイント''の方はシェアが関わる話となる。前提として、A社・B社・C社の$3$社で市場を$50$\%・$30$\%・$20$\% に分け合っていたとする。ことのとき具体的な数値で言うなら
\begin{itemize}
\item A社:$50$\% $\to$ $55$\%
\item B社:$30$\% $\to$ $28$\%
\end{itemize}
の場合に、それぞれ$5$ポイントの増加と$2$ポイントの減少となる。

要するに、実質量に対する増減には``パーセント''を用い、割合に対する増減には``ポイント''を用いている。たしかに、ちょっと聞いただけでは絶対量か相対量か分からない場合もあるので、この表現は的を射ているかのような感じがする。しかし、ちょっと聞いただけで分からないような言い方をやめれば、``パーセント''一つでも混同しないのではないか。

「そうすると表現が長くなってしまうので、文字数やことば数に制限があるときに困る。パーセントとポイントを使い分ける方が合理的だ」という反論が返ってきそうである。そうだろうか。

そもそも``パーセント''と``ポイント''を使い分ける理由は、絶対量の増加・減少と相対量の増加・減少の区別をしたいからに違いない。その場合、単位の呼び方を変えるしか方法はないのだろうか。そんなことはないと思う。絶対量であれ相対量であれ、割合を表す単位は``パーセント''なのだ。だから、絶対量と相対量を区別するなら、単位を変えるのではなく表現を変えれば済む話じゃないの? 絶対量に対して増えたり減ったりする割合には、``増・減・大・小''等の文字をを用いて表現すればよい。たとえば、増加・減少・拡大・縮小などだ。一方、相対量である割合が増えたり減ったりすれば、``上・下・昇・降''等の文字を用いて表現すればよい。たとえば、上回る・下回る・上昇・下降などだ。かくして冒頭の例は
\begin{itemize}
\item A社のビール出荷``量''が$5$パーセント``増加''し、B社のビール出荷``量''が$2$パーセント``減少''した
\item A社のビール出荷``割合''が$5$パーセント``上昇''し、B社のビール出荷``割合''が$2$パーセント``下降''した
\end{itemize}
となる。正しい日本語を使う方が、新たな単位を開発するよりスマートなんじゃない?

\end{document}