% 人生って思い通りにならない
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\section*{▼人生って思い通りにならない▼}
タイトルから哲学的な話を想像したら申し訳ない。話題はあくまでも数学の周辺のことだからだ。数学の周辺で人生に関わること? それはこんなことだ。
中学生であるあなたが誰かを好きになり、結婚したいと思ったとしよう。人生が思い通りになるというのは、もちろん結婚生活が送れることであるが、現実にはそうならない。なぜなら、あなたには結婚するに値する資質、つまり結婚年齢を満たすという条件が欠けているからだ。でも、それは誰のせいでもない。単に、成長していないだけのことだが、それが原因で思い通りの人生が送れていないことも事実である。人生が思い通りにならないときにとるべき道はいくつかある。いまの例なら、
\begin{enumerate}
\item 単にあきらめる
\item 努力して資質を身につける
\item 代替で納得する
\item 規則を変える
\end{enumerate}
などが考えられる。
1)単にあきらめることはすぐにできる。気持ちを整理する必要はあるが、それができれば他にすることはないので、難しいことではない。
2)努力して資質を身につけるというのは、この場合、結婚年齢に達することを意味するが、これはただ待つことしかできない。努力の必要はないように見えるが、待つことが努力と言えるだろう。時間はかかるものの、待つこと以外にすることはないので、難しいことではない。
3)代替で納得するというのは、二人で生活を始めることだ。それを結婚とは言わないが、結婚に近いことにはなっている。ただし、現実問題として非常に困難であることも事実だ。
4)規則を変えるのは、さらに困難である。政府に働きかけて結婚年齢に関する法律を変えなくてはならない。個人の力だけでは無理なので、全国的な運動が要求される。しかし法律が成立する頃には、あなたが成人になっている可能性が高いので、困難以前に無意味な道かもしれない。
さて、あなたが第三者ならどれを勧めるだろうか。
前置きが長くなったが、ようやく数学の話題だ。たとえば$(-)\times(-) = (+)$であることを初めて習い、そのとき説明された理屈に疑問を抱いたとする。人生が思い通りになるというのは、疑問が氷解することであるが、おそらくそうならない。つまり、人生が思い通りになっていないわけだ。それは本物の資質が身についていないからだが、$(-)\times(-) = (+)$を本当に理解するには、複素数や群論などの知識を身につける必要がある。この場合もとるべき道はいくつかある。
\begin{enumerate}
\item 単にあきらめて理由を詮索しない
\item 努力して資質を身につける
\item いま習った理屈で納得する
\item 新しい理論を作る
\end{enumerate}
などが考えられる。
1)単にあきらめることはすぐにできる。数学なんてそんなもんだと考え、理由を詮索しなければ気持ちは楽になるし、その後の学習に何ら影響はない。
2)努力して資質を身につけるというのは、結構大変だ。しかし、ピンポイントで$(-)\times(-) = (+)$であることだけ理解するなら、そんなに時間がかかることではない。ただし、$(-)\times(-) = (+)$であることを初めて習った身には、困難であることは間違いない。
3)いま習った理屈で納得するというのは、単にあきらめることに近い。その理屈に疑問を抱いているわけだから、承服しかねることだろう。しかし、資質を身につけたり新しい理論を作らないのならば、やむなく納得したふりをするしかない。
4)新しい理論を作るのは、さらに困難である。現時点でとくに不都合を含んでいない理屈を捨てて、新しい理屈をつけたとして、いったい誰が支持してくれるんだろう。この場合は、困難以前に無意味な道になる可能性が高い。
さて、あならならどうするだろうか。
結局、どの道を選んでも思い通りの人生にはならない。1)や3)は思い通りの道、すなわち$(-)\times(-) = (+)$である理由を理解することを放棄している。2)が実現できれば思い通りの人生になるだろうが、実際はそんなに甘くはない。普通の中学生なら、$(-)\times(-) = (+)$を習っている最中に複素数や群論を理解できる可能性は極端に低いからだ。そうなると4)はさらに難しい。
要するに、思い通りの人生を歩むことは夢のような話なのだ。とくに私のような庶民にとってはね。だから、あとは``思い通り''ではなく``思いがけない''$x$人生が転がり込んでくることを期待しよう。おっと、$x$は誤植じゃなくて``幸運な''を代入するんだよ。誰かが勝手に別の文字列を代入する前に。
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