% 一億万円っていくら?

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\section*{▼一億万円っていくら?▼}

誰しも小学生の頃に「一億万円」ということばを使ったことがあるだろう。え? 使ったことがないって? じゃあ、聞いたことは? 聞いたこともないと言われると話が終わってしまうので、世間にはそういう言葉が蔓延(←``万円''に掛けたんだけど)しているものと思ってもらいたい。

さて、億万という単位はないので一億万円というのは間違いではあるが、億と万を合わせて新しい単位を作っていけないことはないのである。ただし、その場合は``万億''とするのが正しい。だから、「一万億円」と叫ぶ小学生がいたら、その子は将来有望である。

有望と言ったのには訳がある。まず日本には、十, 百, 千の順に、桁が一つ上がるごとに違う呼び名の単位を用いることにしている。この調子で進めると、$10$桁の数には$9$種類の名称が必要になってしまう。そこで、次の名称``万''からは十万, 百万, 千万という使い方にし、千万の次で新たに``億''を導入している。そうすると、桁が四つ上がるごとに新たな名称を作ればよいので効率が良い。億から先は、十億, 百億, 千億となったところで、次の単位``兆''を用いる。で、その後は十兆, 百兆, 千兆となって次の単位が``京''だ。

ここで、ひらめいた人はいるかな? 千万の次に``億''を用いたのは、万の単位が$4$桁であふれたからである。しかし、億の単位も千であふれさせることはない。万という単位があるので、千億の次に万億を使ってもかまわないだろう。つまり、億の単位は$5$桁であふれることになる。そうなって初めて``兆''を使えばよいのだ。どうだ、一万億円は理にかなってるぞ。一万億円と言う小学生は大変論理的じゃないか。そういうことなら、``京''は億兆の次に初めて導入することになる。これなら、名称をより効率的に使えるよね。

と言って、私は新しい方式を流行らせようと考えているのではない。名称をケチる点でその規則は優れているが、それだと新しい名称が$4$桁ごとではなく、$4$桁ごと、$5$桁ごと、$6$桁ごと、$\dots$というように、新しい名称の導入が遅れていく。名称はケチれるが、なんだかすっきりしない。やはり、千・某(なにがし)の次に新たな名称を導入する方がよい。それに現代では、大きな数を表すときは$a\times10^n$と書けば済むのだから、読み方にこだわる必要はないのだ。ただ、桁の考え方はいろいろあると言いたかったのだ。

実際、英語では ten(-teen, -ty), hundred が基本にあって、次からは$3$桁ごとに``thousand'', ``million'', ``billion'', ``trillion'', $\dots$と、新しい名称が続くようだ。その場合は、hundred thousand の次に``million''という名称が、hundred million の次に``billion''という名称が導入される。すると、hundred billion の次に``trillion''が導入されると思いきや、そうなるのは米国の場合で、英国では hundred billion の次は thousand billion であり、hundred million billion の次に``trillion''が導入されるらしい。だって、たいていの英和辞典の巻末には、そのように書いてあるんだから。

地域性、国民性と言ってしまえばそれまでだが、英語における接頭辞``bi-''は``$2$倍の''、``tri-''は``$3$倍の''という意味を持つので、``billion''は``bi-million''、``trillion''は``tri-million''のような気がする。でも、$0$を並べて書くと妙な規則ではある。

\begin{center}
\begin{tabular}{rrr}
& (米) & (英) \\
1,000,000 & one million & one million \\
1,000,000,000 & one billion & one billion \\
1,000,000,000,000 & one trillion & one thousand billion \\
1,000,000,000,000,000 & one quadrillion & one million billion \\
1,000,000,000,000,000,000 & one quintillion & one trillion
\end{tabular}
\end{center}

米国方式は、$0$が$3$個増えるごとに名称が改まる点で理にかなっているが、接頭辞の bi-, tri-, $\dots$と$000$の組数には一つ分のズレがあるように見える。英国方式は、$000{,}000$を million としているので、one trillion は million 三つ分で理にかなっているが、それなら$2$行めが one thousand million で$3$行めが one billion であってほしかった。どちらも、言語的数学的に統一が取れてないが、私は外野観戦者にすぎないので、大目に見ることにしよう。と言うより、本国でもこんな大きな数を読み上げる機会は滅多にあるもんじゃない。きっと、本国でも大目に見られているんだろう。

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